数多の夜を超えし腐敗の王（アサリ）｜リアクション

数多の夜を超えし腐敗の王（アサリ）

●海で楽しく、のはずが……

「海遊びを満喫するよ！　お姉さん、シャチくんのフロートも借りますねー」
「はい、どうぞ」
　檜扇唱華が膨らませたシャチフロートを借りた椿美咲紀と常闇月は、波打ち際で待つ八神修のところへ走って行った。
「おまたせしました、八神さん」
「ぶちょー、お待たせー！」
　明るいパステルカラーのパレオ着きワンピース姿の美咲紀。
　黒のツーピース姿の月を見て「ふたりとも、良く似合っているよ」と爽やかな笑みで褒める修。
「そういえば、椿と常闇は初対面……じゃないよな？　椿は、新聞部と射撃部で俺と一緒なんだ。仲良くしてやってくれよ、常闇」
「そうでしたか。私は１０組の常闇月です。よろしくお願いします」
　ぺこりとお辞儀する月。
「私も、自己紹介しておいたほうが良さそうね。３組の椿美咲紀よ」

　３人が話し込んでいるところに、水着に着替えた後木真央と朝野未沙が駆け付けた。
「真央ちゃんも仲間に入れてほしいのだ！」
「あたしも！」
「後木、その恰好は……」
　水着なのか？　と修が考え込む。
　真央の格好は、赤いさらしを胸に巻き付け、中央をリボン状結び。下は赤褌であった。
「みんなも水褌に開眼するのだ～♪」
　水着ならぬ水褌のようだ。
「巴ちゃんも一緒に泳ぐのだ！」
　側を歩いている桜崎巴に声をかけ、皆で楽しもうと誘う真央。
「あいつが本気を出してくれるまでなら、付き合ってあげてもいいよ」
　寝ぼけ眼でアイスコーヒーを飲んでいる日暮ねむるを見ながら、巴は真央達と泳ぐことに。
（水着、すごくオトナっぽーい……）
　ダイナマイトバディの巴をチラ見しつつ、美咲紀は自分の体型と見比べてしまう。

「さあ、泳ぐのだー！」
「……その前に、準備運動を念入りにしないと駄目」
　テオがせっかく招き入れてくれたのだから、怪我しないようにしたい恵御納夏朝に引き留められる真央。
　泳ぐ皆で準備運動をした後、真央は一番乗りで海に飛び込む。
「気を付けるんだぞ」
　波と戯れ貝殻を拾いまったりする修は、女の子達を気遣う。

　美咲紀は泳げるが、シャチフロートを抱え波間にプカプカ浮かび、ぽややんとマイペースでゆっくり泳ぐ。
（泳ぐなら、フロートがなくちゃね。シャチさん大好きだもん）
　身体能力があるので人魚のように変幻自在に泳ぐ月だったが、水着の紐が解けてポロリがあるかも……。
　そう思うと恥ずかしくなってきたが、皆で楽しもうと決めたので月は泳ぎ続ける。
　夏朝はクロールや平泳ぎでゆっくりと、楽んで泳いでいる。
（海で背泳ぎはしない……けど、今日はしようかな）
　たまにはいいかな？　と背泳ぎしていると、真央に「バタフライしないのだ？」と言われた。
「……何それ？」
　知らない、というより、習得していないのでとぼける。
　ある程度泳いだ夏朝は、海の中で止まって少し休憩
（……僕は、まだまだ弱いんだよなぁ……。今のままじゃクローネ等に対処しきれないかもしれない。でも、ろっこんだけを強めていいのかどうか……）
　少し疲れたのか、頭に浮かんだのは妙な思考だった。
「……僕自身が強くならなきゃ、心も体も。今は……テオ君の厚意を大事にして、戻るまで遊んで楽しもう」
　戻ったら頑張ろう。負けちゃいけないものに負けないために。大事な人達やフツウを守るために。
「夏朝ちゃん、疲れたのだ？」
「……ううん、ちょっと考え事していただけ。泳ごう、後木さん」
「おもいっきり泳ぐのだー！」

　海に入って泳いでいる未沙は、楽しそうに泳いでいる女の子達を見て、あることに気付いた。
（あ、あの子可愛い……！　褌の子はちっぱいで、不良っぽい子はダイナマイトバディ……！　より取り見取りだわ！）
　可愛い女の子達を見ているうちに、何だか興奮してきた。
（いけない、ここで興奮しちゃたら……！）
　必死で我慢するが、未沙の両手両足が触手に変化した。彼女のろっこんが発動してしまったのだ。