【エンカウント！　マギカ・ハーレム・カルテット！】


「テオがやられた！」
　御剣 刀は愕然とした。
　突然、空間から降って湧いた露出狂気味なショタ系病毒少女（♂）ベノムちゃんの攻撃を躱しきれなかったテオは、無残な姿に変わり果てていた。
「なんてことだ……！　くそ！　魔王の配下及び魔王め！　俺は怒ったぞ！　絶対に許さない！」

「ねぇ、刀くーん？　なんか、テオが再生してるよー？」
　一緒にこの世界へ飛ばされた相棒、桜庭 円は逆再生の如くバラバラになったテオの肢体がくっついていく様子に慄いていた。
「魔王め！　人間じゃないからって、テオに向かってなんて酷いことをするんだ！」
　しかし、御剣は気が付かない。

「刀？　テオの背中から翼が生えたわ！！」
　ブリジット・アーチャーが飛び上がるのも無理はない。
　再生したテオの背中に刺さっていたのは、ベノムちゃんが攻撃として放った漆黒の羽根。
　回復の際に羽根も体に取り込んでしまったのか、背中に翼の生えた猫になってしまった。
「ああ、ブリジット。その通りだ。俺の背中に翼があったら、すぐにでもテオの敵を討ちに空を飛ぶのに！」
　しかし、御剣は気が付かない。
「嘘！？　そのままドヤ顔でテオが空を飛んでっちゃった！！」
　偶然居合わせた藤堂 月乃は、この世界の不条理ぶりに目眩を覚えた。
「空が飛べない俺には！　ドヤ顔も許されない！　クソックソッ！　俺自身が許せない！」
　だがしかし！　御剣は気が付かない！！
「ん、誰かと思えば、この間屋根の上からパイルドライバーをキメた藤堂じゃないか」
　その割には藤堂の存在に真っ先に気付く御剣である。
　藤堂は先日やらかした騒動の一端を言及され、思わず頬を染めた。
「はぅ……、あの時は必死だったから、つい……！　改めて口にされると恥ずかしいよ、御剣くん……」
「俺の名前、知ってるのか？」
　自己紹介してなかったよな、と御剣は訝しがる。
　それに藤堂はキョトンとした表情で口にした。
「え？　常に女の子を侍らせてて、大食いの剣道部員でむっつりだって噂の御剣くんだよね？」
「色々と誤解だって！」
　御剣は猛抗議！！
「俺は確かに剣道部員で大食いだが、むっつりじゃないし、常に女子と行動を共にしているわけじゃないぞ」
「あら？　でも、今もこうして私たちと一緒じゃない？」
　ブリジットの指摘は的確であった。
　御剣以外、この場に男子が存在しないのだから。
「何かとラッキースケベも多いって聞くよー？　ぴきーん！」
　男子の胡桃（隠語）を割る事に定評のある桜庭も目を光らせる。
「ブリジットも桜庭も何を言ってるんだ。アレらは全て事故だ！　ハーレムだって偶然だ！」
「「へー……」」
　ブリジットと桜庭は目を細めつつ、極めてフラットな声を発した。
「起きた事象そのものは否定しないんだね……」
　藤堂は思わず遠い目をしてしまった。
「ともかくだ！　俺のハーレム云々より、魔王を見つけ出してテオの仇を取るぞ！」
　義憤に燃える御剣に対して、復活したテオのやり遂げた顔を見た３人は「う、うん……」と微妙な反応しかできない。
　御剣はエナジーバッジを握り締めると、魔力をそこに込めて高らかに叫んだ！

「我が一閃は何よりも速く全てを斬り裂く！　変・身！（両手をクロスして大きく回す）」

　御剣の制服がビリビリに破けると、桃色の光が御剣の肢体を覆っていく！
　ピンク基調のフリフリレースの付いたミニスカートの魔法少女が御剣の身体と１つになると、白鞘の刀を虚空から掴みとり、ティアラを頭に乗せた！

「よーし、ボクたちも魔法少女に変身だよ！」
　桜庭もエナジーバッジに籠めた魔力を高めていく！
　彼女は魔装具の指輪に口付けしながら呪文を唱えた。

「Contract……！」

　指輪から魔法の光が溢れ出すと、桜庭の衣服が徐々に脱げていく！
　その代わりに魔法少女の衣装が体の周りに取り囲み、瞬間的に全裸になると『パッツン！』と弾けるように身体に衣装が装着されていく！
　白のへそだしミニスカ衣装に身を纏うと、各所に魔力起動のブースターが生成されて衣装と融合！
　両手にパイルバンカー付きガントレットを顕在化させた！

　遅れをとるまいとブリジットも魔力を高めだす。
「私もやるわよ！」

ぱちんっ！（指を鳴らす音）

　彼女は指を鳴らすと、自身のろっこん『スポットライト』を発動させる。
　頭上から降り注ぐスポットライトを浴びると、青と赤と白の帯状の光が彼女の周りを取り囲むではないか！
　その光はアメリカの国旗である星条旗をモチーフにしたアーマードレスに変化！
　右手には真ん中の☆マークが眩しい星条旗カラーの円盾が具現化！
　……って、この格好は魔法少女というよりも、むしろキャプテンでアメリカンなヒーローのような感じである。

　藤堂も覚悟を決めて、髪飾りの魔具へ魔力を注ぎ込んだ！
「朝起きたら、私も魔法少女になってた……。うん、こうなったら変身しよう！」

「ピュア★マウンテン！　みなぎれ！　乙女心ー！！」

　藤堂の身体が深海のような深い青光に覆われる！
　そこから伸びる腕には、黄金に輝く手甲が！
　身体は水色の生地が目に映えるフリフリの和ゴス！
　すらっと伸びた足は白く輝くニーハイブーツ！
　そして太ももの健康美を強調するかのような水色のホットパンツ！

　４人はほぼ同時に変身を終えると、それぞれが名乗りを上げた！
藤堂「輝け！　私の乙女心（物理）！　ピュア★マウンテン！」
ブリジット「自由と正義の守護者、マジカルガール、レディー・アメリカ、華麗に参上！」
桜庭「ボクは魔法少女ストライクチェリー！　みんなの為に幸せのために頑張るヒロイン！　元凶を見つけ出して日常を取り戻すよ！」
御剣「ぷりてぃーかたな、ただ今参上だにゃん♪（女豹のポーズ）」

全員「４人あわせて――！！」



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＞ マギカ・ハーレム・カルテット ＜
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「だからハーレムじゃないにゃん！？」
　ぷりてぃーかたなが電柱にヘッドパッドをしだすと、その破壊力で電柱がへし折れた。
「かたなくーん、参上というか、惨めな状態と書いて『惨状』だよねー……」
　ストライクチェリーは思わず苦笑い。
「アレ？　ハーレムって私も入ってるの！？」
　ピュア★マウンテン、今更気が付いた様子。
　これで御剣ハーレムの一員だね！
「おや？　ねぇ、あれ、能美子じゃないかしら？」
　レディー・アメリカが指差す方に、シャワーカーテンを羽織り純白の薔薇フリルでムチを持った露出狂状態のレディーバンビエッタの姿が。
「わぁ！　能美子ちゃん可愛い！」
　ストライクチェリーが手を振ると、バンビエッタは顔を赤らめながら奇声を上げた。
「み、見ないでー！！」
　涙目の彼女はその場を逃走していった。
　一方、ぷりてぃーかたなは血涙を流していた。
「男でも魔法少女とか大惨事だにゃん……！　大体、俺はなんでこんな格好でノリノリにポーズを決めて、語尾に「にゃん」なんて付けているにゃん？　ハハッ」
　光の魔法少女のはずだが、溢れ出す怨嗟のオーラは既に黒く澱んでいる。
「早く犯人見つけて殴っ血ＫＩＬＬにゃん！　邪魔する奴らも殴っ血ＫＩＬＬにゃん！　こんな事件、俺のフツウの為にとっとと終わらせるにゃん！」
「刀、駄目……！　私、もう限界……！　ぶふふっ」
　ブリジットが腹を抱えて笑い転げだした
「ブリジット笑うんじゃねえよ、にゃん！」
　語尾が強制的に付いてしまうのか、暴言もたちまち萌え言葉に早変わり。
　ぷりてぃーかたなの受難は始まったばかりだ……。