【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ

　こうして、各々は作業を開始する。
　恵御納は書籍の分類を行っている。
「分類後の本は『分類済の本を、分類ごとに別の本棚に』戻すのか、それともそのまま放置なのか……？」
「ああ、このメモ通りに分類をお願いするよ」
「わかった……」
　どの書物も、特に古い書物は丁重に運搬する恵御納。
　高い位置の本棚は踏み台を使って作業を行う。
「恵御納さん、俺も手伝う」
　鴻上も踏み台を抱えてやってきた。
　どうやら同じ部門の書籍らしい。

「ここは薄暗いから、これを使うと良いよ」
　灯火のペンダントから発せられる光が、本棚を明るく照らし出す。
　おかげで手元が見やすくなって作業も捗る。
「あれ……？」
　明るく照らされた本棚の奥に、一冊の図鑑らしき書籍を発見した。
　中身は、見たことないような動植物の絵が掲載されているが、古代文字のようで解読は不能だ。
「暗かったから、誰もここにあるなんて気付かれなかったのかな……？」
「うーん、これは俺達じゃ読めないみたいだ。ミーツェさんにお願いしよう」
　鴻上がミーツェに図鑑らしき書籍を見せると、早速、彼女は解読を開始。
「これはとても古い本ですにゃ。ミーツェでも所々はよく分からない表現がありますにゃ……」
　司書たちにも手伝ってもらい、何とかおおよその趣旨を読み取ることが出来た。
　どうやら、月影塔の生態系に関する動植物の図鑑のようだ。
「それはつまり、私の求めていた書籍だ。月影塔の環境・文化・生態系に興味がある。私はこの世界では食べられそうな動植物とその調理法を研究していてね。特に興味深いのは食べられる植物だね。種を持ち帰って三層の農場で育ててみたい。あわよくば流通をさせてみよう」
　そんな旅鴉は、杖代わりの巨大鍵に宿した盗賊の光を駆使して書籍を分類中。
「ん、何をしているかって？　『価値のある書籍』を探して分類している。お宝として反応する書物があるなら、ジャンル問わず別に分けておく方が良いだろう。それはきっと、月影塔に関するものでなくとも『価値ある宝』になりうる」
　流石は本の虫だ、と司書たちは感心する。
　あらかた仕分けると、旅鴉は山積みの書籍を見遣ると、司書に声を掛けた。
「君、この本の山は片付けてよいのかな？」
「ええ、大丈夫です。ですが、あまりにも大量なので……」
「問題ない。どうせ虫干ししないとならぬなら私が運ぶが？」
　旅鴉はろっこん『絵空事』を用いて本の山を収納せんとする。
　まず小人の絵をジャンルごと複数枚用意。その上に書籍を乗せると、するすると絵の中へ封印されてゆくではないか。
　絵は本を抱える小人に変化していた。
「これは便利ですね」
「こうしていっぺんに運ぶことができる。そして封印状態の私の絵に生物が触れると解除されるので気を付けて。運搬時はトレイか何かに重ねて本棚まで持っていくとよいかと」
　本棚に入れる際も、封印を解除すればあっという間に棚一列が埋まるので便利なことこの上ない。
　旅鴉のおかげで、蔵書整理は想定より早いペースで進んでゆく。
　その過程で、彼らの探している情報が記載されていそうな書籍を見繕う事も出来た。
　いよいよ、それらを読み解く時間に入る。