【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ

「っていう事があってね？　あ、この紅茶、美味しいね。誰が淹れたのかな？」
「俺だよ、デイジーカッターさん。ありがとう」
　紅茶を褒められ嬉しそうにはにかむ鴻上。
「で、ハマドは、なんて言ってた？」
「ちょっとびっくりしたよ」
　サキリは持っていた手帳を広げると、読み上げ始めた。
「まず、この図書館以外にも月影塔に関する古文書が存在するらしい。しかも、ここに保管されている蔵書よりも詳細な資料だ。だが、戦役が始まる直前に外へ持ち出そうとした結果、第一階層の南方の地で盗賊ゴブリンによって奪われたらしい」
「つまり、前々からフランチェスカちゃんに不満を抱えていたハマドは、その書物でブリュンヒルデの事を知って取引をしたのかも？　姫騎士と大臣の利害が一致して、今回の一連の戦役が勃発したわけだ、なるほどねー」
　桜庭がこくこくと頷く。
　やれやれだ、とサキリは肩を竦める。
「恐らく、桜庭の推測通りだろう。後程、その資料を奪還するために僕たちはその南方の地へ赴くことになるだろうね。そしてもうひとつ。ハマドの持っていた影剛石だけど、あれの製造方法がその資料に載っていたそうだ。だからハマドは月影塔が封じられていた間にも影剛石を所持できた。しかも、影剛石の特性は『願望を叶える』ことらしい。つまり、場合によっては不可能を可能にすることが出来る……。でも、本来はかげびとでないと扱うことができない。僕らが使っても何も起こすことはできない。でもハマドの祖先は、かげびとだったらしい」
「ふむ、それならば、ハマドがブリュンヒルデとやらと通信も不可能ではない、というわけか」
　旅鴉もサンドイッチ片手に耳を傾けていた。
　サキリは険しい表情のまま告げた。
「今はそれだけしか奴は白状しなかったけど、ちょっと『お説教』をしておいたから、これからは素直になると思うよ」
　果たして、サキリがハマドに一体何を行ったのか？
　それは月影塔の謎よりも闇が深かった。