【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ

【蔵書整理は宝の山？】

　月影塔との交流が再開されたことにより、実質的な窓口となるサジタリオ城では、双子塔の情報をいち早く収集する必要があった。
　そのためにも、城の専属司書２人にフランチェスカは蔵書整理を命令した。
　だが、古文書の類は長年放置されてきたものばかり。
　無尽蔵の蔵書を誇る城の図書館の整理を、２人だけでやるのは流石に酷だった。
　見兼ねた獅子目の口添えのかいあってか、冒険者たちが続々と集結してきた。

　ドアノブががちゃと回ったかと思えば、どーんっと勢いよく開け放たれる扉！
「アイエエエ！？　敵襲！？　敵襲ナンデ！？」
　司書たちは身構える。
　開け放った扉から魔女が現れた。

「ぐっもー」
　旅鴉月詠のフリーダムエントリーだ！
「お宝漁りに私が来たよ」
「お宝？」
　司書たちが首を傾げた。
　それに旅鴉はおびただしい数の本を指差す。
「この本ひとつひとつが知識の詰まったお宝だ」
　なるほど、本の虫が来たぞ。
　司書たちは内心ガッツポーズ。これは勝てる、と大喜び。
「ここかな……。すみません、僕も蔵書整理等手伝うよ」
　恵御納夏朝も図書館に到着。
「あの、小型デジカメを使っていいですか？　あ、小型デジカメは……」
　司書たちに恵御納が小型デジカメの説明をする。
　だが、星幽塔へやってくると、服装や装備は中世ヨーロッパのそれに近いものへ変化してしまう。
　それはデジカメにも影響を及ぼし、デジカメ自体が存在しないことになっていた。
「あれ……？　もしかして、持ち込めないんだ……？」
　やむなく、筆記用具と羊皮紙を司書から受け取ることに。
　２人の後に続いて、鴻上彰尋がバスケットを抱えて来館。
「どうも２人だけで頑張っているって聞いたから、おなかも空くだろうし、厨房を借りてサンドイッチ作ったよ。お茶も水筒に入れてきたからどうぞ。みんなの分も作ってきたので、遠慮せずに食べてほしい」
「これはありがたい！」
「実は朝から業務にかかりきりで何も食べていなかったんだ……」
　早速、司書２人はサンドイッチとお茶を頂戴する事にした。
　２人とも満ち足りた表情で鴻上に御礼を何度も述べていた。
　そこへひょっこり現れる三毛猫の獣人の女性。名をミーツェ・Ｍ・フェリスという。

「ミーツェも蔵書整理手伝うのですにゃ。ほしびとしか読めない本ならミーツェも読めるかもなのですにゃー！」
　手伝う者たちの大半は寝子島出身だ。
　司書２人もほしびとだが、このままでは彼らの負担が大きくなる。
　ミーツェがいればそういった部分の負担が解消されるだろう。
「珍しい本を読めると聞いて！」
　緑髪を揺らして元気よく入館してきたのは桜庭円。
　司書２人が不安そうに手伝いかどうかを確認すると、桜庭は真顔で返答。
「えっ、書庫の整理？　わ、分かってましたよ。マカセテクダサイヨー」
　なんだろう、心ここにあらず？
「そういえば、ラピスちゃんは此処には来てないのかな？　会えると思ったんだけど……」
　なるほど、彼女のお目当ては人形の魔女のようだ。
　恐らく、お祭りの中で蔵書整理の噂は聞き付けるだろうから、遅かれ早かれ様子を見にくるのではなかろうか？
　その旨を司書のひとりが桜庭に告げると、彼女の赤い目にやる気がみなぎる。
「ラピスちゃんにサボっているところを見せられないね。やるぞー！」
「おや、なんだか賑やかだね？」
　桜庭の意気込みの声を聞いたサキリ・デイジーカッターが入館する。
「ちょっと遅れちゃったけど、僕も手伝うよ。それと、聞いてほしい話があるんだ」
　サキリは神妙な面持ちで皆の前であることを告げる。
「ハマド大臣の事だ」