【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ

　ラピスの周りに叙勲受章者たちが必然と集まった。
　特に御剣と八神との会話がよく弾んだ。
「前回、復活に立ち会った際は落ち着いて話せる状況じゃなかったからな」
「いや、今回もじゃないかの、カタナ？」
「かもな。でも、とりあえず奴の話は置いておこう。それより、俺の興味があるのはアレだ、異世界転生ものでよくある『寝て起きたら知らない世界でした！』というパターンをリアルに体験した事と、その世界に触れてみた感想を聞かせてほしい」
　御剣の質問に八神も頷く。
「5000年前の世界はどんな感じだったのか、とても気になる。ああ、これ、お近付きの印の菓子類だ。一度、君と話がしてみたかったんだ」
　八神は皮の鞄から猫サブレや肉球マカロン、ウイスキーボンボンならぬウィスキーニャンニャンなどの寝子島のお土産を魔女に進呈した。
「ほう、これが貴様たちが住まうネコジマの菓子か！　なかなか興味深いのう！」
　物珍しさからか、しげしげと寝子島土産を眺めるラピス。
「欲しければいつでも持ってこれる。足りなかったら言ってほしい」
「なにっ、誠か？　……はっ！？　さては貴様、うちを甘味で篭絡しようと賄賂を！？　もう！　うちはそんな安い女じゃないもんっ！！」
「「……んん？？」」
　はしゃいだあまりに出てしまったラピスの素の口調に、目の前の２人は目が点に。
　しまった、と慌ててラピスは取り繕うが、もう色々と手遅れである。
「おっと、カタナの質問に答えるとしようかの。正直言って、ここが我の知るサジタリオだと未だに信じられぬ。辺鄙で小さな村落だったここが、今では城塞都市になっておると、驚きを通り越して興味深い。サジタリオの歴史を紐解いてみたいと思えるほどに、な？」
「そんなに違うのか。全く想像できないな……」
　御剣がサジタリオ城を見上げながら感慨深げに呟く。
　そう言えば、と八神はラピスに告げる。
「今、この城の図書館で蔵書整理の作業をしているらしい。落ち着いたら様子を見に行ったらどうだ？　前回の戦役で戦った仲間たちが手伝っているぞ」
「ふむ、我は用事を思い出したゆえ、フランチェスカのお嬢ちゃんにはパレードを辞退すると伝えて……」
「なりませんよ、ラピスさん？」
　背後に忍び寄っていたフランチェスカが、ラピスのダイアモンドの角をがっしり掴んでホールド！
「戻ってきて正解でした。さぁ、星幽塔と月影塔の友好の証を市民にアピールしましょう！」
「あっ、らめぇ！？　角は掴んじゃ…、あんっ、ふえぇ、うち、角は弱いのぉ～！」
　へなへなと力が抜けてしまうラピスを強引に拉致してゆくフランチェスカ。
　その逞しい姿に、御剣と八神の２人は、サジタリオ領の安寧を強く確信した。