【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ

　御剣刀も場内で叙勲式に向けての準備をしていた。
　どうやら衛兵たちの配置の確認を行っているらしい。
　だが、その様子はどことなく気怠そうだ。
「はぁ、面倒くさい……。手伝える事があれば手伝いたいけど、叙勲とか面倒くさすぎて嫌だな……」
　どうやらあまり乗り気ではなさそうだ。
　では何故、御剣がこの叙勲式に参加しようと思ったのか？
　それは、先日の月影塔戦役にてラピス復活に貢献した際に邂逅したブリュンヒルデの存在があるからだ。
「英雄たちを称える正式な場で、ラピスがいて領主がいて……。ブリュンヒルデが興味が沸いたとかちょっかいをかけたくなった、とかで現れそうだな。あいつの速度を考えると、参加して警戒しておこうか」
　ブリュンヒルデは加速装置を積んだ鎧を装着していた。
　あれを着込んで行動されては、常人ならば対応は不可能だ。
　だが、御剣のろっこん『加速』ならブリュンヒルデよりも素早く行動が出来る事は前回の邂逅で実証済みだ。
「それにしても、フランチェスカも色々と考えてるな。領主だし当然と言えばそうなんだけど、まあそう言ってもな、俺と同い年だろう？　すげえよ」
　領主然と振る舞うフランチェスカの様子を遠巻きから眺める御剣は感服しっぱなしである。
　そこへフランチェスカの家臣と名乗るものが御剣の元へやってきた。
「御剣様、そろそろ、式典用の御召し物へ御着替えあそばせ」
「わかった。で、実際問題どうすれば良い？　当然、叙勲なんて受けた事ないし、英雄として祭り上げられても相応しい行動とか取れないぞ？」
「式典での作法などはこれからご説明させていただきます。なに、さほど難しいものではございませんのでご安心を」
「ちなみに、この格好じゃ駄目か？」
　赤い上着を摘まんでみせる御剣。だが家臣はやや困り顔。
「うーむ、パレードの時なら、まぁ……、良いでしょう。ですが、式典は厳粛かつ神聖な儀式。色々と取り決めがあります故、ご勘弁を」
「やっぱり面倒くさい……」
　御剣は重い溜息を吐くのだった。