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【お花見】桜の下で待ち合わせ
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春霞の海から寄せる風に桜が舞い上がる。
「……なあ」
桜混じりの風に艶やかな黒髪を惑わせ、
獅子島 市子
が眼鏡の奥の黒い瞳を瞬かせる。柔らかそうな頬に落ちる睫毛の影と、白い瞼の下から現れた黒曜石の瞳の色に、
桃川 圭花
は返事を忘れた。
寝子島神社へ続く道を辿りながら、市子は道々に咲く桜へと視線を伸ばす。
「こないだのアレさ」
降り注ぐ春の陽に眩しそうに細くなる瞳に、桜の梢が光のように映っている。
このひとの瞳に、世界はどんな風に映っているのだろう。
(あいにくとこの人ほどの感受性を持っているわけじゃなし)
同じ世界を同じように見られない圭花は、ほんの少し唇を尖らせる。お花見に誘われはしたけれど、結局のところ、花が咲いてなかろうが雨がたくさん降っていようがどうでもよかった。
(市子さんと一緒にいられることに比べたら)
周囲にあるどんな環境も些細なこと。
(でも)
桜が咲いていて良かった。
肩を並べて春の路を歩くこのひとは、真っ黒な髪と落ち着いた佇まいが桜という花にとても似合う。
(ねえ、知ってるかな)
言えばどんな顔をするだろう、と悪戯っぽく思いながら、圭花は道端に咲く桜に視線を奪われてばかりの市子を見つめる。
(今だって、ほら)
風に流れてきたひとひら、ほとんど真っ白なうっすら透けた花片が、愛しいひとの黒髪に宿る。それだけで、圭花はその美しさに息を奪われる。
「なんだったんだろうな」
圭花の視線に気づいているのかいないのか、市子は桜の中を歩きながら白い眉間に考え深げな皺を刻む。
「圭花?」
名を呼ばれ、圭花は夢から醒めたように瞬いた。気づけば、桜なんかよりも市子ばかりを見つめていた。
「こないだの……」
言いかけて、頷く。春まだ浅い頃にふたりで迷い込んだ、あの場所。静寂の帳に包まれたあの場所も、
「そういえば桜がすごく綺麗だった」
――花の匂いで目が覚めた。
いつの間にか落ちていた瞼を持ち上げれば、触れられそうなほど間近に桜の花が揺れていた。
揺れては零れ落ちる桜の花片に目を奪われているうち、肩に触れる温もりに気づいた。見れば、自分の肩に頭を寄せて、圭花の柔らかな紅茶色した髪があった。
ふたり、苔むした石段に腰掛けるようにして眠りに落ちていたのだと思い至り、市子は眉をひそめる。一体、いつから?
卒然と見知らぬ場所で目が覚めて、それでも不安はなかった。腕に触れる肩や背中の温もりが思いがけず心強かったからだろうか。
圭花の静かな寝息に安堵を覚えながら、市子は周囲に視線を走らせる。
(神社……?)
見覚えのない神社だった。
石段の上にある社の扁額は風雨と年月に滲んで読めず、傾いていた。長く掃除の手が入っていない石段も夜道を照らす石灯篭も、どこもかしこもが苔むしていた。手入れされぬ植物は伸び放題に荒れて、けれど参道や境内に植えられた様々の種類の桜ばかりが今を盛りとひどく美しく満開に花を咲かせていた。
(廃棄されてほったらかし、ってか)
雨上がりなのか霧でも湧いたのか、不思議な紋様を描いて湿った石段にくっつく無数の花びらに靴先で触れる。
風もなく散り落ちる桜の花びらの音と、隣の圭花の寝息以外に、何の音も聞こえなかった。
見渡す限りに誰の姿も気配もないことを確かめ、市子は穏やかに眠る圭花の額にコツリと額を寄せる。
「ん……」
「オハヨ」
小さく呻く圭花に小さく笑いかけ、不思議そうに瞬いて見上げてくる彼女の視界の中で立ち上がる。
「うん。おはよう、市子さん」
眠たげに笑い返す圭花に手を差し伸べる。掴み返された手を引き、立ち上がらせた圭花と並び立つ。石段一つ分だけ上に立てば、いつもは見上げなくてはならない圭花の黒い瞳がほとんど同じ高さにあった。
普段と違う位置で目が合い、市子は照れた。掴んだ手を離し、数段上にある古びた社の前に立つ。
(パッと見より荒れてんな)
壁の漆喰は剥がれ、柱は腐り、屋根瓦もところどころ地面に落ちて砕けている。奥へと眼を凝らすも、荒れ果てた社の内部は見ることを拒むほどの闇に包まれていた。
祭神すら分からぬまま、市子は上着のポケットから引っ張り出したがま口から硬貨を取り出し、斜めに傾いだ賽銭箱に投げ入れる。二礼二拍手一礼、柏手の音も高く、丁寧に拝む。
「邪魔すんよ」
もしかすると招き入れられたのかもしれない、そんな思いが頭を掠める。
だとすれば、此処の主は自分に何を伝えたいのだろう。
ともかく社に上がり、中にあるものを確かめよう。そう思って覗いて見るも、目を凝らしても凝らしてもぼんやりと靄がかかって見える本殿への回廊は、足の踏み場もないほどに崩れ落ちていた。
(ぐっしゃぐしゃ……こりゃー本殿まで行けねーね)
「しゃーねーし」
頭を掻きつつ零し、踵を返す。八重桜に彼岸桜、山桜に染井吉野に枝垂れ桜、種類どころか開花時期さえ違う桜たちが顔を揃えて咲き誇る境内を散策しようと決めたところで、
「っと」
石段の下方にポツリと立つ圭花を見た。ついいつもの癖でひとりでうろうろしかける己を叱りつけ、市子は慌てて石段を駆け降りる。どこか夢を見ているようなまなざしで桜を眺める圭花と手を繋ぐ。こんな見知らぬ場所で、はぐれるわけには絶対にいかない。
圭花の冷たく細い指先が繋がりを確かめるように力を強めてくる。それと同時に圭花の視線を感じ、市子は微笑んだ。
「……ん? どーした」
「……ううん」
市子の微笑みを見、繋いだ手を見、圭花はそっと首を横に振る。
花の色みたい、と思った。繋いだ掌の熱を通して伝わってくる、花の色みたいにいろんな感情。
(花の色はうつりにけりな、……)
そんな風に詠んだ歌を、古典の授業で習った。
きつく繋いだ手を見つめ、足元に散り落ちた花を見つめる。あの歌は移りゆき過行く時間を、移りゆくひとの心を嘆いたものだったけれど、
(でも、この温もりはずっと変わらない)
「ああ、……スゲー綺麗だった」
数多の桜に囲まれた朽ちたあの場所を思い描いているのだろう、市子の表情はどこか柔らかい。
あの場所がどこだったのか、圭花にはよくは思い出せない。傍らを歩く市子の表情からしても、それはきっと同じなのだろう。
(……でも)
はぐれないようにと手を繋いだことも、その手の温もりも、今もはっきりと覚えている。それを覚えているからこそ、
「夢だったのか」
「夢なんかじゃなかった」
市子の呟きに、圭花は間違いなくそう言い切れた。
「結局ナニカあったのかどーかも、どーやって戻って来たのかも思い出せねんだけど」
「それは私もそう。気づいたらふたりで橋の上に立ってて、びっくりしたよね」
あの時ふたりで見た桜の群生が夢幻でなかったことを確かめたくて、圭花は市子と手を繋ぐ。
(……うん)
そうして確信する。
(夢なんかじゃない)
市子は圭花と繋いだ手を見つめる。細い指と指を絡めて、気づいた。
「ただ見て愛でて欲しかったとか。……そんなかも」
あの神社の主はきっと寂しかった。そう言い換えることも出来たけれどそれは口には出さず、圭花の手の温もりを確かめる。
春の海から風が流れ来た。道の左右に咲く桜がぶわりと揺れ、花吹雪を舞わせる。光の渦のような花の海の中、市子は圭花を見遣った。
(……そーだ)
悟る。
(寂しいときちーよね)
「せっかく綺麗なのに」
花吹雪の最中で黒い瞳を瞬かせる圭花の手を強く強く、握りしめる。
こんなに美しい人を、あの花の社のように寂しくさせてしまったことがある。そのときの圭花の寂しさを想うと、市子の胸はどうしようもなく痛んだ。
手を繋いで歩く。そうするうちに見えてきた寝子島神社と、聞こえ始める桜まつりの喧騒に、市子は気を取り直す。
「まず拝んどこーか。『ヨロシク伝えといてくれ』って」
また来年、あの場所に行けたらいい。そのときは、
(モチロン圭花も一緒に)
満更冗談でもなさそうな顔つきで、寝子島神社を通してあの花の社への挨拶をしようとしている市子を横目に、圭花は淡く笑う。
(敬う気持ちって意味じゃ、私はそんなに信心のあるほうじゃないんだけど……)
「こーゆーの好きだから仕方ないわね、市子さんは」
「……ん?」
首を傾げるように見上げてくる市子の視線に、圭花は鮮やかに笑い返す。寝子島神社で手を合わせ、目を閉じて願を掛けよう。
来年もあそこに招かれるなら、その時ははまた、二人で――と。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
1000人
参加キャラクター数
110人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年05月13日
参加申し込みの期限
2017年05月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年05月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
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