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【お花見】桜の下で待ち合わせ
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真っ新な靴に桜の花びらがひとひら、舞い降りた。
それだけのことが嬉しくて、それだけのことが嬉しいのはきっと、
「やっほぉうーちゃん」
満開の桜の木の下、大好きなひとが手を振ってくれているからだ。
「由貴奈さん!」
新しい靴に降った桜を弾ませ、
卯木 衛
は
壬生 由貴奈
の傍に駆け寄る。ここのところなんだかんだでずっと落ち着かなかったけれど、今日はようやく訪れた、お待ちかねな由貴奈とのお花見。
「今日は来てくれてありがとぉ」
ぽかぽかな春の陽をふわふわした紅茶色の髪に揺らし、由貴奈は深い夜の色した瞳を淡く細める。
このひとの笑顔を見ると、どうしてこんなに嬉しい気持ちになるのだろう。
春陽よりももっと胸を温かくくすぐったくしてくれる由貴奈の笑顔にうっかりしばらく見惚れてから、衛は前髪の左側を留めた赤いヘアピンがぱたぱたと揺れるくらい大きく首を横に振った。
「いえ! 俺も一緒に行きたかったんで!」
「じゃあ早速お花見いこー」
お花見用の、たぶんクッキーの入った手提げを片手に歩き出す由貴奈の隣に並び、衛は首を傾げる。
「あ、でも今日はどこ行くんですか?」
「ん、場所?」
頭ひとつ分ほどは背の低い衛を睫毛を伏せるように見下ろして、由貴奈は企み顔で含み笑いをしてみせる。
「ふっふっふ、今から桜の下でうちの両親に会ってもらうんだよぉ」
「えっ、ええっ? わ、」
あたふた自分の服を見下ろしぱたぱたと叩く衛に、由貴奈は瞳を細めた。
「変じゃないですか、俺」
「だいじょーぶだよぉ、うーちゃんはいつも可愛い」
年下の少年をからかいながら道を歩く。桜よりも頬を薄紅に染めて焦る少年を盗み見ながら、由貴奈が思うのはホワイトデーに彼がくれた言葉。
(いい加減待たせすぎちゃってるしねぇ……)
あの言葉に、想いに、自分はまだ何の言葉も返せていない。
(答えを聞かせてあげないといけないよぉ)
答えを保留している間にも、いろんな温もりをくれたひと。
言葉に詰まる自分の隣に居てくれたひと。手を握ってくれたひと。
そのひとの声を隣に、緩い坂道を登る。道の果てに見えてくるのは、小高い丘の上にある静かな霊園。
「はい、到着」
言葉をなくして蒲公英色の瞳を瞬かせるばかりの衛を連れ、由貴奈は本土から一緒にこの島に移ってきた両親の墓の前に立つ。
「今年になってからは初めて来るかなぁ……」
墓石に降った桜の花びらを掌で払い、周りに生えた春先の雑草を抜く。複雑な顔しながらも黙って草引きを手伝ってくれる衛の様子に、思わず小さな笑みが零れた。
(独り暮らしっていうか……)
由貴奈を手伝って墓石の周りの掃除をしながら、衛は蒲公英の瞳を伏せる。そういえば、由貴奈が独りきりであんな大きなマンションに暮らしている訳なんか、考えたこともなかった。由貴奈が由貴奈でいてくれるだけで、それだけで大好きだったから、他のことには考えも及ばなかった。
(……そう、だったのか)
両親を亡くしていると知って、途端、頭を過ったのはいつかの夜のこと。嫌な夢を見たという由貴奈のもとに押しかけて、彼女の話を聞いたときのこと。
(そうか前言ってたのって)
大切な人が死ぬ夢を見たのだと言っていた。
――『守られた』結果、何一つ『守れなかった』夢。
二度と同じ事が起きないように、と何かを言いかけて、彼女は苦し気に口を閉ざした。それきり、あの夜はその話の続きはしなかった。
ぐるぐると頭を回る色々に思わず瞼を閉ざしそうになって、堪える。眉間にぎゅっと皺を刻み、唇を引き結ぶ。無言のまま、草を引き抜く。
「ごめんね父さん母さん、お墓の掃除さぼっちゃってて」
春の陽ざしを浴びて温かくなった墓石をもう一度撫で、由貴奈は手提げから出した花を供えた。
「うーちゃん」
丁寧な作業を続ける衛を呼び、両親の前に立ってもらう。
「この子がうーちゃん。紹介するの初めてだねぇ」
言った瞬間、衛はほとんど九十度に腰を曲げて深い礼をした。
「はじめまして、卯木衛です!」
(はじめまして、由貴奈さんの彼氏になりたい卯木衛です!)
心の中でだけ、肩書きを付け足しもう一度ご挨拶。最敬礼の頭を上げると、由貴奈は両親の墓に手を合わせていた。その横顔の静謐さに、衛はまた見惚れる。このひとの真摯さは、とても綺麗だと思う。
「さ、お花見しよっかー」
合わせた手を解き、由貴奈はおっとりと微笑んだ。つと伸ばされた指先を辿れば、敷地内にある蒲公英が咲き乱れる小さな広場の央、墓地の守護者の如く佇む桜の大樹。周囲の桜木からも散った桜の花びらで、ベンチの周りは優しい桜色に染め上げられていた。
「この霊園、春は桜が咲くし秋は紅葉も見れて綺麗な場所なんだよぉ」
墓石に挟まれた石畳の路を過ぎ、桜の下に置かれたベンチまで移動する。手提げ袋から出したクッキーと水筒入りのカモミールティーを出せば、お花見の準備は出来上がり。
「だからうーちゃんにも来て欲しかった」
ほろりと零れ落ちた自分の言葉に、由貴奈は瞬く。
(そうだ、うちは)
うーちゃんと、綺麗なものを一緒に見たかった。
隣に座った衛は、揃えた膝に両の手を並べて突っ張らせて桜を見上げている。
「はー……ほんとすげー」
衛の呟きに由貴奈は頬を緩める。衛の真っ直ぐな言葉は、いつだって心を打つ。
持って来たクッキーをひとつ、齧る。口いっぱいに広がる甘いお菓子の香は、いつか母親がお祭りで買ってくれたクッキーと同じ。
「うーちゃん」
傍らの衛と同じに桜を見上げて、それからきちんと衛と向き合う。名を呼んだ途端に目を合わせてくれた衛に笑みを向けようとして、出来なかった。
「……うちの両親ね、五年くらい前に死んで……」
この期に及んで言葉を濁そうとした唇を噛む。
誤魔化してはならない。だって今日は彼の真っ直ぐな想いに答えを出したくてここに来た。
「いや、目の前で殺された」
衛の大きな瞳がますます大きく見開かれる。
「それと一緒に、中学の頃可愛がってた後輩も一緒に殺されたよ。残念ながら、アイツのお墓は本土だから今は会いに行けないけど」
おどけて笑おうとして、泣きそうになった。
言葉を続けようとして、言葉に詰まる。自分の顔がひどく強張っているように思えた。ひどく、怖い顔をしているように思えた。
たぶんとても暗い顔をしているはずなのに、衛は一瞬も目を逸らさなかった。そのことに勇気を得て、由貴奈は春の空気を胸に満たす。
「……殺せば、殺される」
春の空気さえ凍り付かせるような言葉を吐き出す。心から恐れるものに挑むように、由貴奈は衛を見つめた。
「うちの手は、血に染まってる」
ねぇうーちゃん。由貴奈は囁く。
「うちが『一緒に死んで欲しい』って言ったら、どうする?」
咄嗟に言おうとした言葉を、衛は呑み込んだようだった。瞬きひとつを返され、おそらくは続きを促され、由貴奈はことさらに明るく笑って見せる。
「……なーんてね、冗談だよ冗談」
それでも、衛は何も言わなかった。笑いもせず、怒りもせず、ただ静かに由貴奈の言葉を待ち続ける。真実を聞き出そうと待ち続けてくれる。
「うーちゃんから告白受けた時ね、」
だから由貴奈は続けられる――このひとが、見ていてくれるなら。
「すごく怖くなった」
だから答えを保留にした。一度血塗れになったこの手で、大切な人を守れるかどうか不安になった。だって一度失敗した。守ろうとした人たちを、誰一人守れなかった。
両親と後輩のことに対する折り合いはもうつけているけれど、忘れたことはひとときもなかった。
「大切な人をまた失ったらどうしよう、って」
言った途端、衛の顔が不意に赤く染まった。今の今まで見つめ合っていた瞳をどきまぎと瞬かせる少年の様子に、由貴奈は思わず笑う。
(……でも、実は答えは決まってたのかもねぇ)
必要だったのは心の準備と、それから、受け入れる勇気だけだった。
準備をする時間も、勇気も、ぜんぶ衛がくれた。
「……こんな人間でよければ、付き合ってくれる?」
差し伸ばされた由貴奈の手を、衛は見る。柔らかくて優しい手だと思う。戦うことを知る強い手だと、思う。
「ッ、……」
真っ直ぐに差し出された由貴奈からの答えに、答える言葉を失った。その代わり、微塵の迷いも躊躇いもなく由貴奈の手を取る。途端、熱を帯びた頬を涙が伝った。
「わ、……うわ」
慌てて掌で涙を擦る。格好いいところを見せたいのに格好悪いなあと思って、それでもできるかぎり一番いい笑顔を浮かべる。由貴奈の手を引き、両腕でぎゅっと、ぎゅーっと抱きしめる。
「由貴奈さん、俺ね。さっきの、いいですよ」
――一緒に死んで欲しい
大好きなひとの唇から溢れたその言葉を聞いて、一瞬頭が真っ白になった。どうしたらいいのか分からずどうしようもなくなって、だから思ってしまった。
(由貴奈さんが望むなら、一緒に死ぬのも)
まぁ、いっか。
(けど、まー……なんだ)
「ただですねー。俺、もっともっと由貴奈さんと一緒に居たいし、やりたいこともいっぱいあるんで。もっともっともーっと歳をとって、おじいちゃんとおばあちゃんになったら、」
抱きしめた由貴奈の肩を掴み、真正面から大好きなひとの瞳を覗き込む。それでは足りず、白い頬を両手で挟み、笑いかける。
「そういう約束でなら、いいですよ」
だから、と衛は笑う。大好きなひとのために笑い続ける。
「できるだけ末永く、よろしくおねがいします」
頬を挟む衛の手に手を重ね、由貴奈はそっと自分の頬から引き剥がす。そうして返事の代わり、衛に小さくキスをする。
「……甘い」
蒲公英色の瞳を見開いたまま、照れることさえ忘れて衛が呟いた。
ついばむようなキスの後、衛の笑みを分けてもらったかのように由貴奈は笑む。
初めてのキスは、クッキーの味がした。
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阿瀬春
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
1000人
参加キャラクター数
110人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年05月13日
参加申し込みの期限
2017年05月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年05月20日 11時00分
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