シナリオ「【お花見】桜の下で待ち合わせ」

【お花見】桜の下で待ち合わせ

　かつて九夜山三夜湖の央には小島があり、城があった。
　小舟によってのみ渡ることのかなうその城を、九夜山麓の村人たちはこう呼んだ――『八夜城』。
　樹齢千年の桜に護られた八夜城を居城としていたのは、一帯を領土としていたとされる八ヶ淵氏。
　青く美しい湖面に白い城が佇むその様は、まるで白猫が眠るようであったとされ、八夜城は別名を『眠り猫城』と呼ばれた。

　桜咲き乱れる春の夜、眠り猫城を悲劇が襲う。
　折しも城と支え合うようにして生える千年桜は満開、老いてなお空覆うほどに咲き乱れる花を愛でんと、城では年に一度の大宴会が開かれていた。
　桜吹雪の中、酒樽は開かれ、武芸者たちが競い、旅芸人たちが唄い舞い、――一族郎党三百人余りの人々は、けれど一夜にしてその城ごと、千年桜ごと姿を消した。
　地殻変動による地盤沈下とも不可思議の力による神隠しとも言われ、金鉱脈を擁していたとされる八ヶ淵氏の埋蔵金を探し、後年様々な調査の手が入るも、八夜城も八ヶ淵の埋蔵金も何一つとして発見には至っていない。

　――一族が滅亡したがゆえに今は僅かに遺構を遺すばかりとなっている、三夜湖南部に存在した八ヶ淵一族の里には、とある伝説の痕跡がある。
　曰く、桜が咲き水面に月の道が出来る頃、湖の央、朧月の中に幻の城がその姿を現す。
　幽世より現れし眠り猫城と千年桜は、八ヶ淵城の人々と共、迷い込んだ人々と共、一夜限りの現世を楽しむという。

　　　　　　　　　　　　　――寝子島書房　『幻の八夜城』より抜粋

　窓から流れ込むうららかな春の日差しをつややかな黒髪に揺らし、雪代伊織は手元の本に一心に落としていた視線をふともたげた。本に落ちる陽光に、ひらひらふわふわ、薄紅の影が躍っている。
　窓の外、花の香含んだ春風に舞う桜の花びらを黒髪の下の鮮やかな紅の瞳に映せば、桜よりも甘く色づいた唇が優しい弧を描いた。
　三角座りの膝の周りにうっかり散らかして置いた、本や冊子や広告の上にも開いた窓から流れ込んだ桜を見つけ、白い指を伸ばす。桜の花びらを一枚一枚掌に集めながらも、絶賛さぼり中の寝子島図書館司書の視線は無意識に文字を追っている。

　――寝子島神社で桜まつり開催
　――星ヶ丘の小さな植物園『ねこの庭』　小さなお花見とお茶会
　――寝子島シーサイドアウトレット　大観覧車　空から桜をみてみよう

「春ですわね」
　桜の花吹雪の景色が瞼の裏に浮かんで、思わず呟く。今日は土曜日、天気は晴れ。

　ちょっぴりお洒落して、桜まつりをそぞろ歩こうか。

　『ねこの庭』まで散歩して、お茶会に紛れ込もうか。
　それとも、三夜湖の幻の城を訪ねてみようか。
(ひとりで過ごすのはもったいないでしょうか)

　桜並木の真ん中に立つ、気になるあの人の顔が浮かんで、思わず照れ笑い。人目を気にして咳払いしつつ、伊織は窓の外の春を眺める。
(……さあ、どうしましょう)
　春爛漫の今日一日を、どう過ごそう。

運営部より

お花見の１日を描く定員無制限のシルバーシナリオは２つあります。
本シナリオは、そのうちの１つです。

　　　　★ 土曜日のお花見
　　　　　５月１３日（土）公開　担当：阿瀬春マスター　★ 本シナリオです！

　　　　　　　　＜主なお花見スポット＞
　　　　　　　　・寝子島神社の桜まつり。お酒もお弁当も。屋台もいっぱい
　　　　　　　　・星ヶ丘植物園『ねこの庭』で小さなお花見とお茶会
　　　　　　　　・寝子島シーサイドアウトレット大観覧車に乗って空から桜をみてみよう

　　　　★ 日曜日のお花見
　　　　　５月２０日（土）公開予定　担当：桂木京介マスター

　　　　　　　　＜主なお花見スポット＞
　　　　　　　　・寝子ヶ浜海浜公園でお花見イベント。ステージではライブも♪
　　　　　　　　・桜川。屋形船や小さな手漕ぎボートで、川から見上げる桜を堪能
　　　　　　　　・寝子島街道の桜並木。夜はライトアップ。星ヶ丘ではオープンカフェやバーも

どちらのシナリオも、上記のお花見スポット以外でも好きな場所で好きなように過ごせます。
その他不思議なナニカもあるようですが、くわしくはシナリオガイドをご覧ください。

ＮＰＣは、特定のマスターが扱っているキャラなどをのぞいて、自然であれば誰でも登場可能です。
行動予定の決まってるキャラは、シナリオガイドでその内容が公開されます。

１人のＰＣさんが２つのシナリオ両方に参加することもできます。
１つずつ独立したシナリオのため、シナリオをまたいでの行動はできませんが、
土曜日に桜の木の下で失恋して、日曜日に友だちとどんちゃん騒ぎ、といった行動はＯＫ！

このシナリオのリアクションは、らっかみ！タイムの「４月」に公開されます。
１年のシメと同時に、新たな生活に向けて、みんなで楽しみましょう～☆

ゲームマスターより

担当ゲームマスター

阿瀬春

マスターコメント

　こんにちは。阿瀬　春と申します。
　やってきましたお花見の季節！　お花見しましょう、いろんなところで！

　ガイドには雪代伊織さんにご登場いただきました。ありがとうございました！
　もしもご参加いただけます場合は、ガイドに関わらずどうぞご自由にアクションをお書きください。

　基本的には、桜が満開な、とある土曜日の寝子島の一日を書かせて頂くフリーシナリオとなっております。
　いくつか、お花見スポットやイベントもご用意させていただきました。ひとつ、ないしはふたつに行動を絞ってアクションをかけていただきました方が、濃いリアクションに仕立て上げられると思います。よろしければご利用ください。

【A】自由にお花見
【B】寝子島神社の桜まつり
【C】三夜湖の千年桜
【D】星ヶ丘植物園『ねこの庭』のお花見お茶会
【E】寝子島シーサイドアウトレットの大観覧車

　※選択肢は『キャラクターの行動・手段』欄に【A】【B】のかたちで記してください。

【A】自宅や公園や学校など、桜咲く場所で自由にお花見

　寝子島には桜スポットがたくさんあります。
　いつもの公園だって、学校だって、桜の木があるのなら自宅だって、桜が満開の頃にはいつもと違う雰囲気になっていること請け合いです。
　お友達を招いたり、待ち合わせしてみたり。いろんな場所でお花見をしましょう！
　土曜日の朝から夜まで、ご自由にお過ごしください。

【B】寝子島神社の桜まつり　

　寝子島神社では桜まつりが開催されています。
　桜がたくさん咲く境内の一角には、朝から晩まで屋台がずらり。屋根のある椅子とテーブルつきの休憩場所や、敷物を自由に広げられるスペースだってあります。

　お酒もお弁当もお酒も持ち込み自由、みんなでわいわい楽しみましょう！
　お店をお持ちのPCさんは、一日限定出店の屋台を開店されても楽しいかも……？
　その場合は、コメントページに「こんなお店をだすよ！」と宣伝するとお客さんが来てくれるかも！

【C】三夜湖の千年桜

　珍本・奇書を発行していることで知られる『寝子島書房』発行の『幻の八夜城』に記載されている、三夜湖に昔あったとされるお城です。
　本を読んでいなくとも、寝子島に伝わる伝説のひとつとして知っていたり、じいちゃんばあちゃんから聞いたことがあったりするかもしれません。

　樹齢千年とも伝えられる桜の老木と支え合うように建つ、小さなお城。
　数百年も前に突如として跡形もなく消え失せたはずのお城が、今夜限り、湖の真ん中に現れます。お城と共、お城に渡るための船頭つきの小舟も湖畔に浮かんでいるようです。
　三夜湖周辺にお花見に来ていたり、伝説を知っていて面白半分に湖周辺をうろうろしていたり、ナニカ妙な気配を感じて近づいてみたり。お城と千年桜に近づけば、そこでは華やかな和装の人々がお花見宴会の真っ最中。
　気さくにその辺をうろうろしているお殿様と奥方、小さな姫君は、見覚えのないあなたを特に警戒もせず、どうやら旅芸人か旅人かなにかと勘違いしている様子。
　酔っぱらいの臣民に一緒にお酒を呑もうと誘われるかもしれません、武芸者に手合わせを願われるかもしれません、何か楽器を持っていれば聞かせてくれと乞われるかもしれません。
　武芸や音楽等で殿様や臣民を喜ばせることができれば、もしかすると何か褒美の品を贈られたりもするかも……？

　月が中天にさしかかる頃には、解放されます。舟に乗れと急かされ、湖畔まで送り届けてもらえますので、帰りの心配はご無用です。

【D】星ヶ丘植物園『ねこの庭』のお花見お茶会

　星ヶ丘(地図上C-8エリア)にある、のんびり巡っても15分程度で全部見て回れる小さな植物園です。あちこちにベンチが置かれた家族経営な植物園の一角には、小さな小さな一階建ての温室と温室cafe『Oz』があります。
　今日は、植物園の真ん中に植えられたそれほど大きくない一本の桜の木の周りにテーブルが置かれ、『ちいさなお茶会』と称したお花見会が開かれています。
　館長らしい麦藁帽子の恰幅のいい中年男性と、娘らしい『Oz』の女性店員がお出迎え。ハーブティーやハーブクッキー、シフォンケーキやサンドイッチなどでおもてなし。

　春のうららかな昼下がりを、のんびりまったりお過ごしください。

【E】寝子島シーサイドアウトレットの大観覧車

　空から桜を見てみよう、と題したフェアを開催中です。大観覧車の半額チケットつき広告がシーサイド駅で配布されたり、周辺民家にポスティングされたりしています。
　観覧車から見下ろせば、穴場っぽい桜スポットも見つかるかもしれません。
　アウトレットでお買い物したり、穴場スポットに向かってみたりもできます。

　また、観覧車の小さな窓から入り込んだ桜の花びらに触れると、あなたが『初めて』体験した出来事をまざまざと思い出すこととなります。(初めて彼氏と出会ったときのこと、初めて星幽塔に迷い込んだときのこと、初めて誰かと手を繋いだときのこと、などなど)
　もちろん、フツウに観覧車を楽しむことも可能です。

　カップルやご友人とご一緒にどうぞ。もちろん、おひとりさまも歓迎です。

　登場NPC

　以下のNPCは寝子島の桜の下で行動しています。

・青木慎之介
　近所のじいちゃんから聞いた『八夜城』を探すべく、パンとジュースを鞄に詰めて九夜山を散策中。　

・桜栄あずさ
　星ヶ丘の『ねこの庭』で教頭の黒崎先生と一緒にアフタヌーンティーを楽しんでいます。

・黒崎俊介
　桜栄理事長のおとも。例によって影が薄いです。

・富士山権蔵
　『八夜城』で一人芝居を熱演しています。

・寝子サンマ
　寝子島神社桜まつりで観光大使として活動中。旧市街の焼き鳥屋が持ち込んだ七輪を仁王立ちで見つめています。

　その他、キャラクター登録されているNPCは、自然なかたちであれば、桜の下で出会ったり行動を共にしたりすることができます。
　※特定のマスターが主に担当しているNPCは、軽めの描写となります。

　それでは、ご参加、満開の桜の下でお待ちしております。

サンプルアクション（1）