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【お花見】桜の下で待ち合わせ
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ひらひらひら、春風とお陽さまの光を纏って薄紅の花びらが舞い落ちる。
視界を過る花びらに、思わず両手を差し伸べる。それだけでは足りずに両足で跳ねて、ぱちんと両手を合わせる。そろりと手を開けば、ひとと同じかたちになった掌の中、桜の花びらはふわりと再び風を抱いて春の青空に躍り上がった。
「これが桜ですな?」
緩く波のかかったうなじまでの黒髪を春風と桜の花びらに揺らし、
ミーツェ・M・フェリス
は蜂蜜の金色した瞳をくるりと丸めた。
白い額を風に晒して頭上を仰げば、青空を透かせて薄紅の小さな花がいっぱいに咲いている。
「綺麗ですな~!」
風に持って行かれそうになった帽子を両手で抑える。帽子の中には、ほしびとであるミーツェが星幽塔に居る時――二足歩行の三毛猫猫の姿をしている時の名残なのか、猫のかたちした耳がしっかりと残っている。
様々な人々が暮らす星幽塔とは違い、『ネコジマ』と呼ばれるこの世界では猫のかたちした耳はとても奇異なものらしいと知ってから、ミーツェは猫耳も尻尾もできるだけ上手く隠すようにしている。
何と言っても、知らない世界はとても楽しい。楽しい場所を楽しむためには、この世界の人々と同じような格好をするのがいちばん手っ取り早い。
見た目十二歳の少女に見えるミーツェは、跳ねる足取りで桜花の梢が頭上に差し掛かる石段を登る。伸ばした視線の先には、たくさんの人々の頭と、それよりずっと高い位置にある赤い門。
門の向こうからは、美味しそうな食べ物の匂いがたくさんたくさん、混ざりあって漂ってきている。
(『桜まつり』ですな!)
こちらの世界に飛び出したとき、どこかの壁に貼り出されていた紙に書かれていた文字を思い出す。見慣れぬけれど綺麗な花は満開で、神殿らしい場所に続く道の左右には色んな露店も出ている。
(とってもわくわくしますなー!)
大勢の楽し気な人々に、たくさんの楽し気なお店とくれば、わくわくしないわけがない。堪らず駆けだそうとして、ミーツェは門の傍で足を止めた。道の端っこに移動し、
(その前に……)
これは星幽塔にいたときから変わっていない肩掛け鞄をごそごそ探る。『ネコジマ』に来れば、手持ちのお金が『ネコジマ』で使えるお金になることは確かめていたけれど、
(『ネコジマ』のお金、どのくらい持ってましたかなー?)
お財布の中には、銀色の硬貨が何枚かと、紙のお金が二枚。これだけあれば十分に色々楽しめるだろうとミーツェは安心する。
「さあ、どこへ行きましょうなー」
再度踏み出す足取りも軽く、ミーツェは石畳の道を歩き始める。辛い匂いにしょっぱい匂い、甘い匂い。魚の匂いに肉の匂い、野菜の匂い。ミーツェの暮らすサジタリオにもいろんな匂いが溢れているけれど、『ネコジマ』にもたくさんの匂いが溢れている。
「……んな?」
鼻先をひこひこ動かしていて、ミーツェはふと首を傾げた。食べ物の露店の群れから少し離れた桜の木の下、いくつかテーブルを並べた不思議なお店がある。
テーブルのひとつには、『ネコジマ』の人々とは少し違う衣装を纏った黒髪の男の人がひとり。暖かそうな湯気をあげる飲み物を含みながら本を読みふけっていた男の人は、近づいてくるミーツェに気づいて本をぱたりと閉ざした。衣装の裾を綺麗に捌いて立ち上がり、柔らかく微笑む。
「やあ、いらっしゃい。今日は絶好の桜日和だね」
『ネコジマ』の住人の人当たりの良さそうな笑顔に迎えられ、ミーツェは嬉しくなる。
「こんにちはですな! ここはどんなお店ですかなー?」
座り心地の良さそうな椅子、テーブルの上にはメニュー表と読み易そうな本が何冊か。通りに並ぶ賑やかなお店の雰囲気とは違って、ここは時間の流れがのんびりしている。
「古書喫茶『思ひ出』、なー?」
テーブルに置かれたメニュー表に小さく書かれた店名らしい文字を読み上げる。『思ひ出』の店主である
柏村 文也
はにこりとまた笑った。
「何かお探しかな? それとも注文かい?」
読んでいた本を片手、メニュー表をもう片手に掲げてみせる店主に、ミーツェは金色の目を笑ませる。何か不思議の力が働くのか、言葉も文字も違うはずのミーツェにも『ネコジマ』の文字は理解できた。
(良かったですにゃー……)
店主のおすすめらしい本を受け取り、座り心地のいい木製の椅子に腰を下ろす。品数の少ないメニュー表から選んだのは、紅茶とホットサンド。
「ところで君は中学生かい?」
文也に問われ、ミーツェは首を傾げる。店主が言うには、中学生以下の飲食は無料とのこと。
(うーん、)
文也から手渡された本を膝に置き、ミーツェはこっそり悩む。元いた世界にも、星幽塔にも、『ちゅーがくせい』という概念はなかったように思う。
(『ネコジマ』はまだまだ未知な事がいっぱいですにゃ……)
とはいえ、ミーツェは『ちゅーがくせい』ではない。となれば、
「『ちゅーがくせい以下』ではないなですし、お金は払いますな!」
ホットサンドと紅茶の値段を頑張って計算する。こちらの世界のお金の単位はあまり知らないけれど、
「これで合ってますかな?」
これだけ出せばおつりがもらえるはず。
「うん、それではお先にお代を頂戴しよう」
どう見ても十二歳ほどにしか見えない少女の言葉をけれど否定せず、文也は小さな手からお金を受け取った。飲食分の代金を引き、おつりを手渡す。
「それでは、少々お待ちください」
「はいなー」
地面に届ない靴先をぶらぶら、ミーツェは手にした本を開く。懐中時計を持った白兎が描かれた表紙の本は、白兎を追いかけた女の子が不思議な世界に迷い込む物語。
しましま模様の笑い猫が出てきたところで、店主が注文の品を届けてくれた。のんびりまったり、ミーツェは物語とホットサンドと紅茶を楽しむ。
(読み終わったらまだまだ色んなお店を回るにゃ)
途中で眠たくなったりしたら、物語に出てくる笑い猫のように樹の幹にもたれて舞い散る桜の花びら受けながらうつらうつらしてみてもいいかもしれない。
(いいですにゃ)
星幽塔からやってきた少女はくすくすと笑う。
「面白いかい?」
古書喫茶の店主に問われ、ミーツェは元気いっぱい頷いた。本も、寝子島の桜まつりも、
「とっても楽しいですなー!」
少女の明るい声に、
志鷹 若菜
は草履の足を止めた。春色の艶やかな着物の裾を気にしながら、屋台がたくさん並んで賑やかな参道から少し外れた一本の桜の樹の下へと若草色した瞳を向ける。
桜を囲むようにして並べられた幾つものテーブルには、ちょっと休憩するにはちょうど良さそうな本が何冊ずつか。袴姿の店主が営むそこは、休憩スペースを兼ねた、
(古書喫茶『思ひ出』……)
テーブルに置かれたメニュー表の文字を読む。
春風に乱れそうになる纏め髪を掌でそっと抑えれば、挿した簪の飾りが指先に柔らかく触れた。
(一緒に来られれば良かったよね)
簪をくれた弟の顔がふと浮かんで、若菜はそっと目を伏せる。珍しく休みが重なり、折角だから姉弟で桜まつりに行こうと約束していたのに、弟は朝いちばんに職場である寝子島総合病院に呼び出されてしまった。救命医なのだから仕方がないのは理解していても、それでもやっぱり残念に思ってしまう。
お花見とお祭りだというのに沈みかける心を少しでも浮き立たせようと、母から貰った着物を手に取った。姿見の前でちょっと苦戦しつつも何とか綺麗に着付け、纏めた髪には弟から貰った簪を挿した。父から成人の祝いに貰ったバッグを持てば、気持ちはどうにか上を向いた。
(久しぶりのお祭りだったのに)
仕事で来られない弟を思ってうっかり伏せてしまいそうになる睫毛をしばたたかせる。病院の中庭には桜の樹があった。弟もきっと、合い間を見つけてお花見くらいするだろう。
(子供の頃以来、かな)
幼い頃は、近くの神社のお祭りに家族でよく足を運んだ。
(楽しかったな……)
無邪気なばかりだった子どもの頃を思いながら、春の旅をテーマにした短編集を手に取る。レジ台の前に佇んで静かに待つ店主の元で古書を購入し、珈琲とホットサンドを注文してから桜の下のテーブルに着く。
「ごきげんようですなー」
「はい、こんにちは。いいお天気ですね」
上機嫌で本を読んでいた隣席の少女に声を掛けられ、ふわりと微笑む。琥珀金のくるりとした子猫のような瞳が印象的な少女は、この辺りの子どもなのだろうか。
(病院では見かけたことないよね……?)
双子の弟と同じく寝子島総合病院で小児科を専攻とするため、職業病のように考えかけて、そっと首を横に振る。何か起こらない限りは、今日はお花見を楽しもう。ちょうど、袴姿の店主が注文の品も届けてくれた。
「おまちどうさま。……お花見に似合ういい着物だね」
「ありがとうございます。母に貰った着物で、……こういう機会でないと着てあげられなくて」
人懐っこく笑う店主に微笑み返し、若菜は珈琲を手にする。ふわりと漂う香を楽しみながら、桜の景色を眺める。
ひらひら、ふわふわ、満開の桜から儚い幻のように花びらが舞い落ちる。
夢のような景色のその中を行き交う人々のその中に、学生らしい三人組を見つけ、若菜は瞳を細めた。楽し気に談笑する女の子ふたりと、つかず離れずの距離で会話に参加する男の子がひとり。
(――あの日、確かに彼女はそこに居て)
彼らの姿が、かつての自分たちの姿と重なった。
滅多と見せないくすぐったそうな表情で弟が連れてきたひとつ年下の恋人と、いつかの春、桜の下を一緒に歩いたことがある。
(可愛くて、優しくて……)
本当の姉のように慕ってくれた彼女が大好きだった。妹ができたようで嬉しかった。いつか本当のお姉さんになれたらいいなと心から思っていた。
その彼女はもういない。儚い桜のように、その生涯を閉じてしまった。
珈琲の湯気を揺らして、若菜はそっと息を吐く。
桜のような彼女の笑顔に連鎖して思い出してしまったのは、彼女の葬儀の日の夜。同じ日に生まれ、同じ時間を生きてきた弟が、普段あまり見せたことのない涙をただただ流し続けるあの姿。
(……泣き疲れて眠るまで、抱きしめることしかできなかった)
倒れ込むようにして眠り、眠ってからも夢うつつに涙を流す弟の寝顔が、今でも忘れられずにいる。
彼と同じ想いをする人を、一人でも減らしたいと願った。彼女のように病を得ても、笑顔で幸いな未来を迎えられるようにと想った。だからこそ医の道を選んで進んできた。
医師免許を得て夢を叶えた今も、その想いはずっと変わらず心の片隅にある。それと共、どうしようもなく、思いもする。
(自分に出来ることは少ないのかもしれない)
けれど、と思う。けれど、それでも――
お花見の人々からそっと視線を逸らす。どうすることも出来なかった無力な己の悲しい思い出に唇を噛む。幾度となく瞬き、堪えようとして、出来なかった。
参道に向いた椅子の向きをずらす。できるだけ人の目に触れぬよう、桜と向き合う。バッグから携帯電話を取り出し、母を呼び出す。
「……ごめんね」
電話口に母の声を聞いた途端、堪え続けてきた涙があふれた。零れる涙を抑え切れないまま、胸を詰まらせる想いを母に伝える。何を問うでもなく、母はいつもの優しい声で相槌を打ってくれた。頑張りなさい、と背中をそっと押してくれた。
母の声に、若菜は頷く。
休みが終われば、新しい日々が始まる。
「……どうか、」
祈るように、桜を仰ぐ。
「見守っててね」
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
1000人
参加キャラクター数
110人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年05月13日
参加申し込みの期限
2017年05月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年05月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
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