ブラック・ブラックの夜｜リアクション

ブラック・ブラックの夜

◆10:15　唯一つ変わらないルール

「……御剣」
「如月か……」
　影人間と退治を続ける御剣に、如月が合流した。
　共に相手を見据えたまま、肩を並べる。
「あいつの能力……『黒い膜で覆う』だけじゃねぇ……かもしれねぇ」
「……警戒は、している」如月の言葉に、御剣が応えた。
「あの野郎、妙な霧を出しやがった……それに、俺が攻撃した時、ガラスみてぇに砕け散った。そのくせ、ピンピンしてやがる」
「……砕けた？」
「見るのが早ぇかもしれねぇな。行くぞ」
　如月が御剣の胸元に軽く拳を当てると、突如として影人間へ向かった。
　事前の打ち合わせなどしていない御剣は――しかし、その後を当然のように疾走る。
「おう、まァたお前か。懲りねェな」
　影人間が如月を見て、歯を剥き出しにして笑う。
　しかしその挑発には応えず、如月は相手の正面で突如屈んだ。
　開いた空間から、木刀の鋭い穿刺が放たれる。
　虚を突かれた影人間がすんでのところでそれを躱し、姿勢が崩れた所へ如月が足払いを仕掛ける。
　バランスの崩れた影人間が地面へと肩を打ち付け、そこへ御剣が瞬時に木刀を振り下ろす。
　転がりながら打撃を避けた影人間が立ち上がろうとする。が、その首を刈り取る勢いで木刀が横薙ぎに振るわれた。
　御剣の手に、確かな手応えが伝わる――しかしそれはあまりにも想像と違い、軽かった。
　同時に目の前で影人間の首が『砕け』た。
　舞い散る粉塵を避けるように地面を蹴り、下がる。
　風が黒い霧を運び去ると、影人間は変わらず、笑みを浮かべながら立っていた。
「なるほど……」御剣が握った木刀と影人間を見比べて、納得する。
「な？　……なんか変だろ、あいつ」

　――パチン、ペシャ。
　言葉を重ねる二人を見て嘲笑を浮かべていた影人間の頭に、三度目の白ペンキ風船がヒットした。