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【星幽塔】第三階層 鳥籠には少年の欠片
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「……さて」
和装の袖で腕を組み、
音羽 紫鶴
は薄墨色の瞳をゆるりと瞬かせる。
底の見えぬ瞳に映すは、目前に青々した梢を伸び伸びと広げる果樹園。
他がすべからく枯れ果てた農場内にあって、スタート地点であった丘陵からほど近い此処だけが、瑞々しい翠を保っていた。
「ここは何が起こるのかな?」
突如として不思議な場所に立たされることにはこの島に来て随分と慣れてきてはいたが、今回はそれに加え、
(菫の光か)
いつの間にか和弓さえ手にしていた。間近に眼を凝らせば、和弓と矢筒全体を不思議な紫色した光が包んでいる。
(星の力、か……なんだかまた不思議な所に来てしまったね)
空の下のようにも見えるここは、けれど『星幽塔』と呼ばれる不可思議な塔の内部なのだと言う。
「面白いね、知らない果物の樹が生えてる」
肩越しに振り返る。数歩後を落ち着いた足取りで進んできている
鮫ノ口 礼二郎
と
猫島 寝太郎
に声を掛ける。
ここに降りてくるまで、年上のふたりから『星幽塔』に関する話は粗方聞いていた。
(オーブに光、ね)
そのオーブがどこにあるのかも今は分からないが、ともかくも今は屋敷の少年が言っていたように、少年を元に戻さなくてはならないのだろう。
黒い和弓を手に、紫鶴は入り口の態を成す赤い小さな実のアーチを潜る。空を涼しく覆う梢を仰ぎ、梢に実る真紅や黄の見慣れぬ果実に興味深く瞳を細める。
「少年! 居るのなら返事をしてくれ!」
果樹園の入り口に立ち、礼二郎は何処かに居るかもしれない少年を呼ばわる。
「そうだった、名前、分からないんだよねぇ」
頭にしがみつく格好の猫のぬいぐるみを片手で抑え、寝太郎は寝癖のついた灰色の髪の頭をちらりと傾げる。
「少年!」
「こんにちはー」
下草の丁寧に除かれた園内を、三人はそれぞれの声や眼の届く距離を保って少年を探す。
(魔物の気配はなさそうだが……)
少年を呼ばわりつつ、礼二郎は他の二人の位置を確かめる。いくら星の力が助けてくれるとは言え、もしもの時の為に単独行動は控えたかった。
満遍なく陽が当たるように剪定され、根を覆う草は除かれ、果樹園は他の荒れ果てた農場とはまるで別の場所のように誰かの手が入っている。奇妙に思いながら、礼二郎はポケットから取り出したガムを口に含んだ。
礼二郎のろっこんは、ガムを噛むことで発動する『脳内ビデオガム』。
果樹のもとに立ち、礼二郎はガムを噛みながらぐるりに視線を巡らせる。ビデオカメラを回したかのように、脳内に眼にした光景を細部まで記憶する。そうして記憶した光景を脳裏に蘇らせ、じっくりと辿る。
記憶の光景を幾度かなぞって、気づいた。整備された土の上、近くに立つ果樹の根とは違う、僅かに紅色の混ざった木の根が這っている。己のぐるりを巡る地面に、立ち並ぶ果樹の隙間を縫うように、まるで果樹園全ての木がその根を元とする樹と繋がる血管のように――
十六歳にはあまり見られたことのない大人びた厳つい頬に力を籠め、礼二郎は己の足元にも這う奇妙な木の根の元を探して辿る。
「どうしたのー? 何か見つかった?」
「いや、……この、根」
言葉少なに他の木々と僅かに色の違う木の根を示す礼二郎の視線を寝太郎は追い、その先に、青々と茂る木々の中にあって一本だけ白茶けて枯れた樹を見た。
「林檎の樹だね」
枯れかけた樹を見つけて近寄る礼二郎と寝太郎の後に続いてきた紫鶴が、樹の周囲に散らばる枯葉のかたちから樹の種類を言い当てる。
「ここにくるまで林檎の樹は他にはなかった。……なんだか意味深かな」
あちこちで熟れた果実がたてる甘い香の混ざった風が、涼やかに木々の梢を鳴らして流れ来る。
周囲に散る乾いた葉を拾い、水分もなくひび割れた土壌に首を捻り、林檎の樹を元として園内の方々へ伸びる樹の根を眼で追い、この樹だけが枯れた原因を考える礼二郎を視界に入れながら、紫鶴は黙して思考に沈む。
(林檎の樹は知恵の樹)
旧約聖書の『創世記』にも登場する、その樹は、善悪の知識の木とも呼ばれる。
(2章9節以降、だったかな)
その樹だけが枯れている。
うん、と紫鶴は小さく頷く。
「実に意味深だね」
もしかして、と思う。
(この樹と少年はこの世界の変容に大きく関係しているのかもしれないね)
サジタリオ城下の酒場に流れていた噂によると、この第三階層の世界は麦藁色の眼と髪をした壮年男性が管理しているらしい。となれば、屋敷にいた麦藁色の眼と髪の少年がこの世界の管理者。
(恐らく、何者かに心を奪われて少年の幼い姿になってしまったんだろう)
紫鶴は推測を重ねる。
果樹園の中にあって、知恵の樹である林檎の樹だけが枯れていることも、
(この世界がおかしくなっている原因の一つとすれば)
少年の欠片を全て見つけ出し心身を分かたれた少年をひとつとすれば、この世界は、この樹は、元に戻るのかもしれない。
(アダムが少年だとすれば、イヴは誰だろう)
そして林檎を食べるように唆した蛇は誰で、今何処に居るのだろう。
この地の何処かにまだ身を潜めているのか、それとももう別の階層へと移ったのか。
思考を巡らせながら、紫鶴は右足で地面を三回叩く。身に宿るろっこんを発動させ、背にふわり、白鶴の翼を広げる。花と果実の香のする風を翼に纏わせ、宙に舞い上がる。
空に広がる枯れた枝を間近に見たかった。萎れた梢よりも高い位置から樹を確かめたかった。そうすれば、この樹を襲った異変の謎を解く手がかりのひとつも見つけられるかもしれない。
(果実は見当たらない、か)
枯れた一枝一枝を丁寧に確かめながら空高くへと羽ばたく紫鶴を見上げ、寝太郎はその背に広がる白い翼に瞳を細める。
枯れた林檎の樹の周囲の渇き切った土壌を根気強く調べ続ける礼二郎の広い背を見遣り、
「六情の話聞いたけど、もしそうならここは何に当たるのかなぁ……」
ぽつり、呟く寝太郎の背に、
「東の小屋は『憎』っぽかったぞ」
ひょいと声が掛かる。振り返れば、刀剣を携えた
御剣 刀
が立っていた。
「此処がこうなったのは自分のせいだと、自分自身をひどく憎んでいた。でもまあ、皆で説得は出来たよ。今は屋敷に向かっている」
「御剣君」
「少年から……リアから、桃や蜜柑や葡萄があるって聞いてきたけど、見たことない果物の樹ばかりだな」
青く茂る木々を珍し気に見回しつつ、刀は枯れた林檎の樹の前に近づく。
「蜂蜜酒の蜂蜜も採れるって」
「ああ、果樹園って養蜂も兼ねてるのかな?」
刀の言葉に頷き、寝太郎は周囲を見回す。よくよく目を凝らせば、木々に咲く花々の間を忙しく飛び回る蜜蜂の姿が確かに認められた。探せば果樹園のどこかに養蜂箱も見つけられるのだろうか。
「呉井さんもそんなこと言ってたねぇ。蜂蜜酒ってどんなお酒なんだろ?」
「オーブに光を灯して、きっと分けてもらうんだ」
食欲全開で眼を輝かせ、刀は林檎の木の周囲をぐるりと巡る。
(完全に枯れている訳じゃないんだよな)
黒い眉を寄せる。周囲の木々がこれだけ青々としているのに、この樹だけが枯れようとしているのは何故だろう。
(それに)
果樹園に至るまで、襲われはせぬものの道や畑の至る所に感じられた狼の気配が、ここでは一切感じられない。
(警戒しよう)
リアと名乗った『憎』の少年は、小屋に閉じこもることで狼の襲撃から逃れ得ていただけだったが、ここにはもしかすると狼よりも強いナニカが潜んでいるのかもしれない。
(……静かすぎる)
そのナニカに守られて、木々は生気に満ち、数多の実りを成し得ているのかもしれない。
「迂闊に触れない方がいい」
地面に膝をつき土壌を調べていた礼二郎が不意に警句を発する。刀が見れば、寝太郎が枯れた樹の幹へ労わるように指を伸ばし触れようとしている最中。
「猫島」
何か気付いたのか、と声を掛けるよりも先、寝太郎の頭上にしがみついていた猫のぬいぐるみが、ニャーニャー、と間の抜けた声で鳴いた。それだけでは足りずに、寝太郎の額をふかふかの肉球でぺちぺちと叩く。
「えっ? え?」
盗人の光が変化した猫のぬいぐるみに額を叩かれ、寝太郎はきょとんと眼を丸くする。慌てて両手で抱き上げて胸の前に下ろせば、猫は三角耳の頭をぐいと樹の根元へと向けた。
星の光に導かれるまま、寝太郎は素直に根元にしゃがみこむ。
「そこ、地中で木の根が固まっているよ。妙に――」
風を弾く音と共、紫鶴の声が降って来る。
「紅い」
紫鶴の言葉を受け、礼二郎は周囲の土と示された位置の土の色を見比べる。
「確かに」
頷くなり礼二郎は地面に両手斧を置く。躊躇うことなく地面に膝をつき、掌が汚れるのも構わず、林檎の枯葉が降り積もった地面を指で掻く。葉を払いのけた後に現れた存外柔らかな土を手で少し掘り広げたところで、
「……おい」
礼二郎は黒い瞳を険しく歪めた。
土の下、紅い木の根が大きな繭のようなナニカを形作っている。緩い弧を描いて埋まる紅く半透明な殻の中に小さな人影を見るなり、刀は剣を鞘走らせた。
「リア……!」
「待て、逸るな」
刃を突き立て紅い殻を破ろうとする刀を押しとどめる礼二郎の隣、ふわりと紫鶴が降り立つ。ろっこんの翼を消し、膝をつく。掌を伸ばし、少年を納める棺のような繭の殻に触れる。指先で軽く叩き、
「こんにちは」
土にほとんど埋まる繭の中、微睡むように瞼を閉ざした少年の欠片に挨拶をする。
「君を探してたんだ」
「助けに来た。安心してくれ、危害を加えるつもりはない」
「出ておいでよ」
殻を叩く紫鶴や、地中の少年に声を掛ける礼二郎や寝太郎を見、刀は一度小さな息を吐いた。刃を鞘に納め、風にそよぐ果樹園の木々を見遣る。
「……この樹と一緒に、頑張って周りの皆に与えてたんだねぇ」
労わるような寝太郎の呟きを耳に、刀は東の小屋にいた『憎』の少年よりもずっと痩せて見える地中の少年を見下ろす。
己の身命を削って果樹園の木々に与え、そうしておそらくは、農場に跋扈する魔物たちからも此処を護っていた。それはどれほどの魔法であり、『愛』なのだろう。
「屋敷にいる少年が待っている。同行してはもらえないか」
「屋敷まで行かないかい? 君たちがひとつになれば、きっとこの樹は元に戻る」
礼二郎や紫鶴の根気良い説得に、硬い繭の中の少年はゆるりと瞼を開いた。
「他の皆もこの世界を元に戻すために奔走している」
地中から見上げられ、紫鶴は淡く微笑む。
「だから、大丈夫。まだ間に合う」
強く請け負う黒髪の少年の言葉に、麦藁色の髪の少年は小さく頷いた。痩せ細った両腕をもたげ、己を閉ざす殻の内側から殻を押す。それだけの動作で、大した力もかかっていないはずの殻に無数のひびが走った。
少年を閉ざす紅い殻が音もなく砕け、霧のように消え失せる。身ひとつぶんだけの穴に蹲る格好で、立ち上がれぬほど衰弱しきった少年に、寝太郎と紫鶴が手を伸ばした。穴から引き上げられ、少年は己が護り続けて来た果樹園の風をゆっくりと胸に満たす。
「屋敷まで一番近くて、できるだけ安全なルートを通って行きたいけど……」
ともすれば意識を失いがちな少年の身を支えつつ、寝太郎は周囲を見回す。少年の加護を失ったせいか果樹園の木々が不安げに戦慄いているようにも見えた。
奥の繁みから今にもナニカが飛び出してきそうな気すらして、けれど、
(怖いとか言ってられないな)
洩れそうになった言葉をごくりと呑み込み、奥歯を噛みしめる。
片方を支えていた紫鶴が不意に離れ、前に出た。よろめきながらも踏ん張る寝太郎を視界の端に捕らえつつ、紫鶴は黒の和弓に矢を番える。呼吸ひとつで集中し狙いを定め、流れる仕草で矢を放つ。
風を切り裂いた矢が離れた位置で黄色の小さな実をつける繁みに刺さると同時、小さな唸り声と共、黒狼が飛び出した。
寝太郎に抱きかかえられた少年が薄く眼を開いて呻く。
「ああ、葡萄が……」
礼二郎が斧を手に飛び出す。跳躍し襲い掛かる狼の牙と爪を、幅広の斧刃の面を盾代わりにして受け止め、狼の身を弾き飛ばす。
弾かれた狼が体勢を整えるよりも早く、刀がろっこんで『加速』する。
斧を構え直した礼二郎が見たのは、太刀筋さえ見えぬ速さで切り捨てられて斃れた狼と、その狼の傍らに立って刃を鞘に納めようとしている刀の姿。
戦闘態勢を解くなり、刀は少年を振り返った。狼が飛び出して来た果実の繁みを示す。
「ちょっと待て。あれが、葡萄?」
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2016年07月26日
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2016年08月02日 11時00分
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