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【星幽塔】第三階層 鳥籠には少年の欠片
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白く乾いた石畳の道を辿る。熱も湿気も持たぬ風に纏うた白いドレスの裾をまくり上げられ、
小山内 海
は咄嗟に片手で抑えた。もう片手に抱えた、魔土の光が変化した身長ほどもある大筆が傾ぎ、慌てて両手で掴む。
「大丈夫か」
風に煽られぱたぱたと揺らぐ筆先を、背後から
御剣 刀
が掴んで支えた。上目使いにそれを見止め、声発することの出来ぬ海は小動物じみた仕草で小さく何度も頷く。大丈夫、と大筆を抱え直しながら、風に煽られはだけそうになったドレスの腹を合わせる。
星幽塔に呼び出された寝子島の人々は、大抵がこちらの世界に合わせた衣装となる。少し後ろを警戒しながら歩く
常闇 月
と
壬生 由貴奈
も、傍らに立つ刀も、フツウの日常には見ない衣装を纏っている。月は黒いマントの下に様々な武器を隠し持ち、由貴奈は炎のような装飾施した弓を手に、刀は武骨な刀剣を帯びている。それはいい。いいけれど、
(おへそ、見える……)
刀の視線が気になってちらりと見遣れば、刀は頬を僅かに朱に染めてそっぽを向いた。向いた先、黒いマントを羽織ってはいるものの、ともすれば薄く筋肉のついた月の白い腰や腹が目に入る。
刀の視線に気づいた月に敵意すら籠った闇色の瞳で睨まれ、刀はまた慌てて視線を逸らした。
「かたなん?」
「ハイ」
足を緩めた月に背の後ろに隠れられ、由貴奈は何かを考えているかのような何も考えていないかのような茫洋とした表情で刀に呼びかける。
「顔赤いけど、大丈夫ー?」
「……大丈夫です」
頭の回転の良い先輩にからかわれているような気分になって、刀はいつもよりも露出の高い同級生ふたりから僅かに距離を取り、足を早める。
剣士の青い光が変化した刀剣を固く握る。
(常在戦場だ)
動揺のあまり乱れそうになった息を整え、前を見据える。
小麦色を通り越して枯れ果てた麦畑に挟まれた道の先、農場にあって目を惹く巨木が聳えている。立ち枯れたかのように瑞々しさを失った大樹の根元に半ば寄りかかるように、半ば呑まれるように、木造の小屋が見える。
「しっかし、長閑な農場に見えてかなり寂しい場所だよねぇ」
由貴奈がぽつり、呟いた。
「どこもかしこも枯れてる」
「そうですね」
由貴奈と肩を並べて油断なく歩を進め、月が頷く。
「昔は誰か管理してたのかな? だとしたら、何で誰も居なくなったんだろ」
放置されてそう時間が経っているようには見えない。居なくなった誰かは、今は何処に居るのだろう。
「少なくとも、今は……」
言いかけて、月は口を噤んだ。惑いのない視線を大樹の陰の小屋へと向ける。耳を澄ませ、眉根を寄せる。
「声が」
短い警句を発する月に合わせ、先を歩いていた刀と海が、隣を歩いていた由貴奈が、ほぼ同時に動きを止める。
――死ねよ、ああいっそのこと死んでしまえよ
誰かが誰かを呪う言葉を耳にしながら、由貴奈が静かに弓に矢を番える。海が大筆の先を地面につける。
いつどこから何が飛び出してきても対応できるようにしながら、刀も黒い瞳に力を籠めた。見たところ、小屋の周りには何者の姿も見えない。
『なんだか不気味』
袖を引いた海に短く書き込んだスケッチブックで話しかけられ、刀は同意を示して頷く。
「これ、魔物も脅威に感じる何かがいるから近づかないんじゃないか?」
「少年の唸り声のようなものが」
「うーん、……」
月の言葉に弓を構えたまま更に耳を澄ませ、由貴奈が首を捻る。
――何で分かってやれなかった、何でこんな愚鈍なんだよ
「なんか恨み言みたいなー?」
周囲を警戒しつつ、戸口に近づく。近づいた途端、木造の壁が揺らぐほど、内側の壁に重い何かが打ち付けられた。
ぎくりと身を固くして、けれど海は息さえ殺して耳を傾ける。小屋の内から聞こえる憎々しげな声が意味のある言葉であるのなら、
(ちゃんと聞こう)
小屋の中の誰かが何を伝えたいのか、知る必要がきっとある。自分の言葉を伝えるのはその後でいい。
(でも、私はしゃべれないから)
自分の言葉を伝えるには直接会わなければならない。
海は左右僅かに色合いの違う青の瞳で真っ直ぐに扉を見据える。分厚そうな木製の扉には、鋭い爪で抉られたような傷が幾つもつけられていた。
『狼?』
「扉が開けられなくて諦めてどこか行った感じかなぁ?」
扉につけられた爪痕に指を這わせ、由貴奈が呟く。
「開けるな」
低く低く、扉の奥で声がした。
「誰も入って来るな」
幼い声音で語られるとは思えぬ、暗い憎悪に満ちた声に、海は目を瞠る。由貴奈が扉から指を離し、眉を寄せる。
「今日は」
開けるなと言われた扉を、刀は軽く叩く。誰に向けているのかも分からぬ憎悪には全く揺らがぬ声で、静かに挨拶をし、名乗る。
「屋敷の前に居た少年に頼まれて、『少年のかけら』を探しに来た。名を教えてくれないか」
(話は通じるだろうか)
危惧を感じ取ったかのように、内側の壁が何かで激しく殴打された。
「誰が行くものか」
低い拒否の声の後、漏れ聞こえたのは小さな嘲笑。
「名、……名か。名は、リア」
「扉を開けてはもらえませんか、リア」
「誰が開けるか」
激しい拒絶にも怖じず、月が扉の前に立つ。扉に埋め込まれた鍵の形状を確かめ、革製の腕輪を嵌めた片手で触れる。腕輪につけられた宝石が、淡い金の色に瞬いた。
盗人の光の宿った手には、数本の針金。
「……失礼します」
囁く間に容易く扉の鍵を解除し取っ手を引こうとする月の手を、海がそっと止める。唇に指先を当て、静かに、と指示して後、扉の前の地面に魔土の光の大筆で簡単な印を描き込む。
海が頷き、月が頷き返す。
「開けます」
月がそっと扉を開いた、その瞬間。
木椅子が飛んできた。
背後に立つ由貴奈を庇い、避けずに重ねた腕で防ごうとする月の目前、地面から石壁が噴き出した。鈍い音立てて弾かれた椅子が床に転がる。
「来るな!」
もう一脚の椅子が、堅い背表紙の本が、食器が、次々に海が土の魔法で作り出した壁に投げつけられる。戸口に立つ誰を傷つけることもなく床に転げる。落ちて砕ける。
「きみがあの男の子の欠片?」
石壁と扉の隙間から見えた麦藁色の髪の少年に向け、由貴奈は声を掛ける。
「男の子に頼まれてさ、できるならあの屋敷までついてきてほしいんだけど……」
「嫌だ」
手元にあったものを全て投げつくし、息を切らせてその場に座り込む少年の両手に鉄の枷を見、由貴奈は小さく息を吐いた。獣すら潜れぬ小さな窓から光が流れ込むだけの薄暗い小屋に目を凝らせば、少年の足にも鎖の枷。
海が魔土の光の大筆で生みだした石壁を消した。海と月を制し、刀が先に室内に踏み込む。素早く周囲を見回し、少年以外に誰もいないことを確かめる。
「サジタリオの酒場で、農場を取り仕切っているのはおじさんだと聞いた。……リアが、その『おじさん』か?」
「ああ、そうだ」
くすり、少年が幼い瞳に浮かべるには似つかわしくない昏い笑みを滲ませる。
「僕が、分けられた欠片のひとつ。でも僕は、絶対に元には戻らない」
「それは、この階層で起きたナニカが原因なのか? あとできれば果樹園で何が起こっているのかとか、蜂蜜酒――」
水が枯渇し、働く妖精が消え、農場主が消えたこの状況の原因を、小屋の後に向かうつもりの果樹園で何が起きているのかを、どうすれば蜂蜜酒を貰えるのかを、刀が小屋に閉ざされていた少年に問いかけるよりも先、
「原因か」
くすり、少年が嗤い始めた。零れた嗤い声は、間を置かず弾けるような哄笑に変わる。
「そんなもの、僕に決まっているだろうが! 水が枯れたのも、僕が分けられたのも、大切な農場が荒れ果てたのも! 全部ぜんぶ、この僕のせいだ!」
(少年の欠片というのは)
誰も彼もを憎々し気に睨む少年を見遣り、月は無表情に瞬く。
(まさしく、)
丘の上で寝子島の人々が語っていた推論を思い出す。
(感情の欠片なのかもしれませんね……)
ここに囚われているのは、喜怒哀楽愛憎のうちの、おそらくは『憎』。
「だから、僕はここから動かない。愚かな僕なんかバラバラになったまま死んでしまえばいい」
何らかの原因でこの事態を招いた己自身を憎む、『憎』の少年に、月は近づく。
「それでは大切な農場は荒れたままです。あなたがあなたを裁いたとしても、」
両手足を縛める鎖を引き摺り、少年が身を引き摺るように立ち上がる。月の迫力に圧されたように後退る。
「ここは元には戻らないでしょう」
少年に追い縋るように、月はそっと室内に踏み込む。
説得が適わないのであれば、気絶させてでも屋敷に連れて行こう。屋敷に向かった人々の後ろ姿を思い、月は膝までを覆い隠すマントの内で拳を固める。
「知るものか! 来るな!」
少年が両の拳を振り上げる。手首に巻きつけられた鎖の端が凶暴な音立てて月を打とうと振り下ろされる。体術に長ける月であれば、それは容易く避け得るもの。
(止むを得ません)
軽く躱し、少年に当身を食らわせようとして、
「――常闇!」
刀に肩を引かれた。月と位置を入れ替えるようにして、刀が少年の振り下ろした鎖に背を打たれる。
「かたなん!」
海の声にもならぬ悲鳴と、由貴奈の声が重なる。
「何故です」
「……俺たちは少年をひとつにする為に来たんであって、戦いに来たわけじゃない」
身を挺して庇った月に鋭く問われ、刀は首を横に振った。鎖に打たれて痛む肩と背に顔を顰めつつ、少年を見遣る。
今しも己が憎しみに任せて打った刀に静かに見つめられ、少年は一瞬泣き出しそうな瞳をした。逃げようと後退り、壁に背をぶつける。その場にへたへたと座り込む。
「嫌だ、誰が行くものか! 誰があんな、……あんな愚かな僕自身のもとなんか」
鎖に縛められた両腕を持ち上げ、少年は涙に汚れた顔を覆う。その少年の細い膝の傍、海は近づき跪いた。優しい瞳で少年を見遣る。
(何をそんなに憎むの)
憎しみは忘れなくてはいけないなどと、きれいごとを言うつもりはない。でも、何かを、誰かを憎んでしまうほとの悩みがあるのなら、聞いてあげたかった。
『きかせて』
一緒に屋敷まで来てくれないかと頼むのは、その後でいい。
「……素直に頷いてくれないなら、まぁしょうがないねぇ」
海の隣、由貴奈がしゃがみこむ。くすり、企み顔で笑う。
「じゃあ、話を聞いてくれるよう努力しようかな」
「あんたらには関係ない」
吐き捨てて立ち上がろうとする少年の手を、由貴奈は掴む。掴んだまま離さず、まっすぐに少年を見上げる。
「時間に追われてるわけじゃなし、」
月を、刀を、透徹した瞳に映す。出来る限り早く屋敷へ少年を連れて行きたいふたりを視線で制する。
「きみが何であんな言葉を並べてたのか、聞いたげる」
真っ直ぐに少年を見つめる。
「何であれ怒りや憎しみは、自分の中に封じ込めてちゃ悪いことしか起きない」
どうしようもなく優しく、瞳を和らげる。
「その前に発散しちゃった方がいいし、ね?」
少年はひとりきりの悪夢から覚めたように瞬いた。海を見、由貴奈を見、己が打ち据えた刀を見る。
月がその身に宿る盗人の光の力を存分に発揮し、少年の手足の枷を容易く外してのけた。赤黒い枷の痕を擦り擦り、少年は身の縮むほどの息を吐く。
「……僕は、僕が憎い。あの子を受け止め切れない愚かな僕のせいで、あの子はあんな風になってしまった。だから、僕は僕自身を縛めた」
「あの子?」
由貴奈の問いかけに、少年は頷く。
「屋敷で見ていないか。元々は黒い毛の美しい子だったんだ」
刀と月は顔を見合わせる。屋敷の扉から出て来たナニカは、影の様な黒い手だけだった。
「だから、『死ね』?」
由貴奈の言葉に、少年は泣き笑いの表情をする。
「死んでもどうにもならないよな」
『私たちがその子をどうにかする』
海が少年の手を取って引く。だから、と立ち上がらせる。
「そうだねぇ、じゃあ、行こっかー」
あくまでのんびりと由貴奈が立ち上がり、戸口に立つ。
海に手を引かれ小屋から一歩出、降り注ぐ光の眩しさに麦藁色の瞳を細めながら、少年は思い出したように刀を呼び止めた。
「果樹園には林檎の樹があるよ。桃や蜜柑も、葡萄も。蜂蜜酒の蜂蜜も果樹園で採れる」
「ちょっと行ってくる!」
少年の言葉を聞くなり、後は任せた、と喜々として石畳を駆けて行く食いしん坊の背を呆れ顔で眺め、月は黒マントの内に隠したナイフに指先で触れる。
そうしてほとんど無表情に近く、少年に向けて淡く微笑んだ。
「あなたは私が護ります」
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20人
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シナリオガイド公開日
2016年07月26日
参加申し込みの期限
2016年08月02日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年08月02日 11時00分
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