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寝子島高校
【星幽塔】第三階層 鳥籠には少年の欠片
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屋敷が見えた途端、
小山内 海
は水の色した瞳を瞠った。口を開いて発せぬ声を発しようとして、出来ずに指を伸ばす。
海が示した屋敷の二階の窓には、幾本もの黒い手をその背から蠢かせながら、蠢く手の指先から赤い炎と黒い煙を吐き出しながら、――喪服の女。
「落ちます」
殿を務め、先を行く海と『憎』の少年の欠片を護衛していた
常闇 月
が呟くと同時、窓辺に立っていた喪服の女が窓の外へとぬうっと頭を突きだした。屋敷を囲む林中にも響き渡る哄笑を上げながら、喪服の背から生えて見える黒い腕を幾本もの尾のように引きながら、些かの逡巡も見せず、真っ逆さまに屋敷の前庭へと落下する。
女が落ちた枯れた繁みが煙を吐く。乾いた草は見る間に赤い炎に包まれた。
枯れた芝に黒い焦げ跡をつけながら、ゆらゆらと黒い腕を揺らしながら、女が地面を這う。女が這い寄ろうとしているのは、庭の半ばにへたりこむ麦藁色の少年。『哀』の少年の欠片に寄り添う
時高 クレオ
と
桜庭 円
、皆を護ろうと女の行く手を阻む
風雲児 轟
と大剣を構える
屋敷野 梢
。
それを見止めるなり、月は地を蹴った。風のように駆け、『哀』の少年たちとは対角の位置で足を止める。止めるなり、取り出した鈎付き縄を勢いつけて喪服の女へと投擲する。女が鎌首のようにもたげた首に縄を幾重にも巻き付ける。
連れて来た少年の欠片を円に預け、海が前に出る。女の動きが封じられているその間を縫い、魔土の力宿る大筆で女の周囲に幾つもの印を描いて行く。
縄で首を絞められて尚、女は苦しむ様子も見せずに少年の元へと進もうとする。内側から炎に焼かれ、身体の端々から煙と炎を吐き出しながら、少年の欠片たちへと黒い腕を次々に伸ばす。
煙纏う黒い手が描いた印の上を過る瞬間を狙い、海は大筆を振るった。印から突き出た石槍が黒い腕を貫く。それでも迫ろうとする腕は、唇を噛みながら足元に円を描き、石壁を生み出して防ぐ。
「……!」
影じみて実体がないように見える腕が石壁を打つ音の激しさに、海は瞳を顰めた。
「もう、……もう、止せ!」
叫んだのは、女に囚われていた『哀』の少年か、不甲斐ない己自身を呪っていた『憎』の少年か、それとも、枯れ果てた道の向こうから
獅子目 悠月
に伴われてきた『怒』の少年か。
『怒』の少年と共に皆の傍に駆け寄るなり、悠月は高く澄んだ声で歌う。
悠月のろっこんが、悠月の半径一メートルに半透明の障壁を作り出す。
海の防御を掻い潜り、悠月の障壁に迫ろうとした腕は、
「だめですー!」
駆けて来た
椿 美咲紀
が片手杖を振るい巻き起こした暴風の群に動きを封じられた。
「あ、あぁ」
哄笑を忘れ、女が呻く。
「ぁあぁぁあぁあああ!」
断末魔じみた悲鳴に重なったのは、農場の央、涸れた貯水池より天高く噴きあがる清冽な水柱の轟音。
言葉を失う人々の頭上を、水柱と共に空へと舞い上がった数多の妖精たちが解き放たれた喜びの声を上げながら翔ける。
「皆、無事かっ」
その妖精たちに囲まれるようにして、翼持つ馬の背に乗って空を翔けて来た
楢木 春彦
が声を上げた。同じ背に跨った
呉井 陽太
が心配そうなまなざしを地上へと降らせる。
農場に張り巡らされた道を辿り、畑の中を突っ切り、
鮫ノ口 礼二郎
に連れられた『喜』の少年が、
猫島 寝太郎
と音羽紫鶴に両脇を支えられた『愛』の少年が屋敷を目指している。
「んー?」
御巫 時子
と手を繋ぐ『楽』の少年を見、これで全員揃うと安堵の息を零して、馬上の陽太は首をちらりと傾げた。
鴻上 彰尋
と手を繋いでいる少女は、確か――
「っと、……」
視線を転じれば、この階層を襲った災いの因となった喪服の女は地面に伏して動かなくなっている。
陽太は小さく息を零す。
「これで何とかなった、……かなぁ?」
焦げた芝生の上に横たわった女の身に纏わりついていた炎が解けて消える。炎が消えるにつれ、喪服の女を形作っていた黒い腕も溶けるように消えた。
あとに残ったのは、小さな黒猫。
動かぬ黒猫の傍らに膝をつき、『哀』の少年は黒猫を抱き上げる。己の心と体を分かち、農地のあちこちに閉じ込めた黒猫を、けれど少年はきつく抱きしめ涙を流す。
「話を、聞かせてくれるかい?」
円は少年の細い背をそっと擦る。
「ゆっくりでいいよ、吐き出してごらん」
「……ごめん、なさい」
優しい言葉を掛けられれば掛けられるほどに項垂れる少年の頭を、轟がごしごしと撫でる。クレオと梢がただ黙して気遣わしげな眼差しだけを向ける。
「自分だけで抱え込むのは辛くないかい?」
「僕が、悪いんだ」
肩を震わせ、少年は呻いた。身体が萎むほどの息を吐き出して後、顔を上げる。己の欠片を集めてくれた人々を、己を助けるべく邸に飛び込んできてくれた人々を麦藁色の瞳に映す。
「この子は、永く家に仕えてくれた妖精なんだ。父が死に、母が死に、それでも家に居てくれた妖精たちのひとり。僕を好きだとずっとずっと言い続けてくれていた子。……でも、僕はこの子の想いに応じてやれなかった。働く皆と同じ、大切な家族だと、家族としてしか見られないと」
少年は首を横に振る。
「それでもこの子は傍に居てくれた。それなのに、――いや、だからこそ」
湧き上がる哀しさに獣のように呻く少年の背に触れたのは、海が連れて来た西の小屋に閉ざされていた少年。彼に倣うように、寝子島の人々にそれぞれ連れられてきた少年たちが、己と同じ姿した少年に触れる。
瞬間、少年たちの姿が消えた。あとに現れたのは、齢四十前後の男の姿。
低い壮年の声で、男は続ける。
「たぶん、だからこそ、この子は僕を引き裂き、他の妖精たちを封じた。受け入れられぬ辛さのあまり、僕に自分だけを見てほしいと望むあまり……」
苦渋に満ちた麦藁の眼を伏せる。眼尻に眉間に、深い皺が寄る。
「でも、この子はこんな力を持ってはいなかった……誰がこんな力を与えたんだろう」
一体誰が。それに対する答えを持つ者はこの場には最早いない。
悪夢を見ているかのように、閉ざした瞼が震える。
「こんなことをする子じゃなかったのに、僕のせいでひどいことをさせてしまった」
「君は悪くないよ」
丸くなる男の背を、円は少年の姿の彼にしていたと同じように撫で続ける。
「でも」
「君は悪くない」
自分よりもずっと年下の少女に慰められ、男は泣き笑いの表情を見せた。泣きながら、笑いながら、黒猫の身をかき抱く。
「ごめん、ごめんな」
詫び続ける男の腕の中、身動ぎもしなかった黒猫が小さく鳴いた。
「生きてる」
円の言葉に、男が目を瞠る。その眼に新しい涙が溢れる。
にゃあ、と黒猫が鳴く。周囲に集うた人々の耳に、ごめんね、と聞こえた黒猫の声に、男はますます強く猫を抱きしめた。
「僕こそ、ごめん」
抱き合う男と黒猫を、屋敷に集うた人々の頭上を、虹を撒き散らして涼やかな風が通り過ぎる。
「うわあ……!」
風が大地を優しく撫でて過ぎた途端、枯れ果てていた地面の草が見る間に瑞々しさを取り戻して立ち上がった。そこここで露を弾いて蕾が膨らみ、歓声をあげるように花が咲く。枯れた梢に若葉が萌え、一息の間に青々と繁る。
涼やかな風が鮮やかな緑の大地を渡る。
黄金色の向日葵が青空に向けて大きな花をもたげ、柔らかな萌黄色した作物が風にそよぐ。
「おー」
一陣の風が過ぎるなり一変した世界を、円は見回す。踵でぐるりと一回転して男を見れば、元通りの姿となった農場主と農場主に抱かれて未だぐったりとする黒猫を、いつの間にか数多の妖精たちが囲んでいた。
二足歩行の犬が、蝶の翅持つ小人が、角持つ白馬が、種々の妖精たちが、さわさわさわと風の声で騒めく。
にゃあ、と黒猫が弱く鳴き、
「僕が、悪いんだ」
農場主が緊張した声で言った途端、
『ほんとしょうがないわねえ』
『リアはこれでよく分かっただろー?』
妖精たちはあっけらかんと笑い声を上げた。
ことの元凶とも言える黒猫に向けられる感情が優しいものであるのに、円が胸を撫で下ろした時、
「みんなー! おつかれさまなのー!」
屋敷の向こう、明るい声が響いた。
聞き覚えのある声に、円は笑みを浮かべる。駆け寄って来たふくふくとした少女に手を振る。
「ステラちゃんおひさー」
「おひさしぶりなのー!」
抱きつく勢いで駆けて来たステラに、円は取り出したチョコレートを差し出す。
「はいチョコレートだよ!」
「わあ、いえーいなのー!」
「イエーイ!」
おおはしゃぎのステラとハイタッチを交わしながら、円はちらりと農場主を見遣った。
(アステリズムとステラは同時には出現できないのかも、と思ってたけど)
ステラが塔、アステリズムが階層であるのならば、大枠で考えれば同じ塔であり、人格の違いがあるにせよ同一の存在なのではないか。そう考えていた。
けれど今、ステラとリア――アストラルタワーとアステリズムは同じ場所に存在している。そもそも、二人の様子を見る限り、互いの顔を見知っているようにも思えない。
――みんなの活躍で、星幽塔も変わる。ステラも、星の力も
第二階層で、ステラはそう言っていた。
(彼女達は、どんな変化を望んでるんだろうね)
「……ねえ」
リアの衣服のポケットに大人しく収まった黒猫のもと、円はそっと近づく。
「君をあんなにしたのは、誰なの」
にゃ、と黒猫は呟く。猫の言葉を解するらしいリアが訳す。
「象ったのは僕の母親だけど、それは僕に一番近しい女性だったからというだけで、……え? なに? 丸っこくてニヤニヤしてるのが力くれた? ……誰だろう、農場にはそんな妖精はいない」
「あの、畑の作業のお手伝いをさせてもらっても?」
卒として現れた妖精たちに眼を白黒させたり、妖精たちに物珍し気にまとわりつかれたりしていた寝子島の人々のうちから、
御巫 時子
がそっと手を上げた。
「草取りや収穫や、……きゃっ」
『あらー助かるわー』
『手は多ければ多いほどいいぜー』
上げた手を翼持つ妖艶な女に掴まれ、二足歩行の犬に腰に抱きつかれ、時子は眼を丸くしながらもおっとりと笑う。
「はい、よろしくお願いします」
「こちらこそ、頼むよ」
「後で少し向日葵を頂いてもいいですか? ステラさんにプレゼントしたいのですが」
「もちろん。彼女には一緒に遊んでももらったからね」
時子に笑って頷きながら、リアは屋敷の表の扉を指し示す。屋敷の玄関に、次の階層への扉は存在しているしい。
「道はもう開いているから、時が来れば行くといい」
人の好い笑顔を見せてから、ふと首を捻る。寝子島の人々を、寝子島の人々に宿る星の力を見つめて後、またふわり、笑う。
「ここのオーブに光が灯ったことで、君たちに宿る星の力にまたひとつ、新たな光が増えたみたいだ。詳しくは次の階層に行かないと分からないけれど、……たぶん、移動を少なからず容易くするような、そんな力だ」
でも、と農場主は続ける。
「出立の前に、蜂蜜酒を飲んで行くかい? パンも焼こう、食事を出そう。疲れたときはいつでも立ち寄っておくれ。皆で歓迎しよう」
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
第三階層の物語、お届けに上がりました!
お楽しみ頂けましたら幸いです。
ご参加くださいまして、読んでくださいまして、ありがとうございました。
みなさまのご活躍によりまして、第四階層への扉も無事に開き、その上もうひとつ、新たな星の力が解放されることとなりました。
どんな星の力なのか、そのあたりもどうぞ楽しみにしつつ、次のガイドをお待ちください。
次の物語はコメディもシリアスもどんと来い! なあの方です。どうぞお楽しみにー!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
冒険
SF・ファンタジー
バトル
定員
20人
参加キャラクター数
22人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年07月26日
参加申し込みの期限
2016年08月02日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年08月02日 11時00分
参加キャラクター一覧
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