怪人セブンの選択｜リアクション

怪人セブンの選択

　鈴野海斗が救命ボートを点検している。
　万が一の際、救命ボートに細工がされていればそれこそ人命に関わる。
「破壊はされてねぇべか、係員さん？」
　鈴野がもう１隻のボートを点検する係員に尋ねる。
　既に事情を説明しており、泉月花からの指示も合わせて来ていたのでスムーズに協力をしてくれている。
「大丈夫です。特に異常はないです。しかし、船にお詳しいんですね」
「まぁ、この格好通り、軍艦にはうるさいっちゃ。それ繋がりで船の知識は他人よりあると自負しているべ」

　帝国軍人姿の鈴野だが、表情は柔和な笑顔を浮かべていた。
「いやぁ、若いのに博識ですね」
　そこへ疾走する三毛猫少女が半泣きで鈴野に突進してきた！
「また迷子なのだぁ～！！」
　後木、迷い過ぎ問題である。
「夜景のネオンが綺麗だからって脇道へ突っ走る嬢ちゃんが悪いんだろう……？」
　振り回される代田も泣きそうだった。
「あんた、メサイアか？　敵か？　味方か？　答えるっちゃ！」
　警戒して軍刀の柄に手をかける鈴野に代田はため息混じりに応えた。
「勘弁してくれ。俺はもう厄介事はゴメンだ」
　両手を挙げる代田の前に後木が飛び出す。
「海斗ちゃんダメなのだＤさんは真央ちゃんの肉壁なのだイジめないでほしいのだ～！」
　涙でぐしゃぐしゃの後木の懇願に、鈴野は戸惑いながらも警戒を解いた。
（まぁ、フツウに敵も味方もないべ。フツウの前では昨日の敵が今日の味方になりえるっちゃ……）
　自分のため、島に居る妹のため、なによりみんなのため、みんなの願いが「フツウ」だと信じる鈴野は切り替えが早かった。
「よろしくだっちゃ、Ｄさん。オラは鈴野だべ」
「代田だ、Ｄさんじゃねぇ。こちらこそよろしくな」
　２人が挨拶を済ませる。
　実際、日本人らしい奥ゆかしい光景である。
　その時、特設シアター方面から少女の悲鳴が響いた！
　３人は床を蹴り、声の持ち主のもとへ全力で駆ける！！