恐怖！　○○しないと出られない部屋！｜リアクション

恐怖！　○○しないと出られない部屋！

『いいの～？　咲の本性が２人にバレても～？』
　突如、矢萩の目の前に現れた黒い影の少女が嘲笑する。
　キスをしないペナルティなのか、咲にしか彼女は見えていないようだ。
『……構わん。２人は信用できる、信じてくれる』
　シャドウ咲に対して、矢萩は切り捨てた。
『あんな事があったのに、全ッ然、懲りてないのね～？　アッハハハハ！！』
『２人にそんな過ちを犯させない。咲も同じ轍を踏むつもりは、毛頭ない！』
　矢萩はシャドウ咲を一喝した。
　けらけらと嘲笑うシャドウ咲。
　だが、その嘲笑はぴたりと止んだ。
『……つまんない。だって今の咲（あなた）、欲望まみれだもの』
　それに咲は苦笑いした。
『仕方がないだろう。私は咲（おまえ）だからな』
　それを聞いたシャドウ咲は微かに口元を楽しげに歪めた。
『言ってくれるじゃないの、カマトト女？』
『ぬかせ、この糞ビッチが！』
　２人は声を堪えながら笑うと、お互いの手を取り合った。

　矢萩が我に帰った。
　男２人は従僕のごとく彼女の体を舐め回すようにキスを継続していた。
「はぁ……こんな、滅茶苦茶にして……。咲は、破廉恥だ……」
　男２人は途端に身構える。
　やりすぎたか、と互いの顔を見合わせた。
「そんな２人には、咲からキツいお仕置きが必要だな……？」
「お、お仕置き……！？」
　極夜が慄く。
「ね、姐さん……！？　ここでろっこんはマズイですって！！」
　必死になだめる亨。
　だが、矢萩は笑顔で死刑執行宣言をした。
「駄目だ。２人とも、目をつむれ。咲がいいと言うまで目を開けてはならん！」
　すっかり怯える極夜と亨。
　その姿に思わずゾクゾクする矢萩。
　彼女は極夜の顔に自分の顔を近付けると……。
　なんの躊躇いもなく、自分の舌を極夜の口腔内へ滑り込ませた。
「んぐっ！？　うぅ……」
　突然のことに気が動転する極夜。
　口元を矢萩の唾液まみれになりながら、極夜は放心状態になっていた。
　続けて亨にも同じように深いキスを行う矢萩。
　極夜と違って亨は彼女の舌を吸い返す余裕すら見せていた。
「２人共、もういいぞ」
「……はぁ、はぁ……、くく、このお仕置きは何より堪えるぜ、姐さん？」
「亨君、姐さんではなく、……咲、と呼び捨てにしてほしい……」
　顔を赤くした矢萩がそう願った。
「風紀とか世間体とか……、そんなの気にしてたのが馬鹿らしい。……私をその気にさせたんだ、最期まで付き合ってもらうぞ、二人とも？」
　物欲しそうな目つきで矢萩は２人を誘惑する。
　亨はヒュゥと口笛を吹く。
「……最期どころか地獄の果てまで一緒ですよ、六文銭も俺持ちで！」
「私だってよろしければ来世までご一緒させていただきます！」
　極夜も決意をあらたに口にした。
「……潔癖症で女性と触れ合うことができなかった私ですが、咲先、ぱ……いや、咲さんとなら、身も心も触れ合っていたい、そばにいたいって思ったんです！」
「俺との決着も忘れんなよ、咲！　ノーバトル・ノーラブ！　忘れたとは言わせねぇぜ！？」
　亨もアピールを忘れない。
　矢萩は２人の間に立つと、その張りのある胸元へ２人の顔を抱き寄せた。
「安心しろ。私は平等が好きなんだ。もちろん、知っているだろう？」
　そう告げると矢萩は極夜と亨が部屋から消滅するまで何度もキスをしたのだった。

【哀坂極夜・七峯亨・矢萩咲：脱出】

　幼馴染の幸せな（だが歪んだ）結末を見た橘勇は小さく呟いた。
「咲姉の選んだ幸せだ。俺がどうこう言うべきじゃないだろう……」
　三角関係のまま恋仲に発展する珍光景に、橘はずれた眼鏡を中指で押し戻すしかできなかった。