恐怖！　○○しないと出られない部屋！｜リアクション

恐怖！　○○しないと出られない部屋！

◆起◆

「うぇ！？　キスしないと出られない部屋、でありますかぁ！？」
　小倉杏子は思わず大声を上げてしまった。
「り、理不尽でありますよ！　こーぎするであります！」
　小倉の隣には、ふてくされたような顔で困惑している荒海藤吾がいた。
　２人は普段から言葉をよく交わす仲で、互いに意識しあう仲でもあった。
　荒海は顔を赤らめながらモニタの中のビリーにワーワーと抗議をする小倉の様子を窺っていた。
「……マジかよ」
　キスしなきゃここから出られないと聞いた彼は、小倉に悟らせないように小さな嘆息を吐いた。
（俺がここに来たとき、小倉は既にこの部屋にいて俺の隣で寝てた。俺も寮の部屋で寝ていたはずだが、また神魂の影響かよ、本当に傍迷惑だな……）
　荒海はビリーを絶対にぶん殴る腹積もりで状況を静観していた。
（この部屋を出たら真っ先にあの夢魔を殴る、殴る前に消えるとかそういう落ちかと思うがあったらぶん殴る！！　大体、キスするだけって簡単に言うけど、相手の意志だってあるだろ……）
　再度、抗議し続ける小倉を見る。
（……なんだ、妙に胸がドキドキしやがる……！？）
　荒海の決断はまだ下されそうにない。
　一方、小倉の抗議に加勢が入った。
「そうだ、そこの化生！！　破廉恥だぞ！　少しは空気を読め！」
　矢萩咲もこの部屋に囚われてしまった１人だ。
　矢萩は２ヶ月前の事件以来、自分の揺れる心に戸惑っていた。
　余りにも優柔不断な自分自身に呆れ返り、苛立っていた。
「タイミング最悪じゃないか……！　しかもなんで２人がここに揃っている！？」
　びしっと指差した先には、矢萩が想いを寄せる２人の男子――哀坂極夜と七峯亨が眉尻を下げながら互いに苦笑いしていた。
「まさか、まさかこんなふざけた空間に……私達三人が揃うなんてちょっと驚きましたよ」
「俺も同じ言葉を返すぜ。なるほどな、キスオアダイじゃねーの、これ」
　男子２人は自然と矢萩の唇に視線が集まる。
「な、何をじっと見ている！？　み、見るな！　……見ないで、お願いだから……」
　恥ずかしさで参ってしまいそうになる矢萩だった。

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