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【お三夜】秋の夜の訪問者たち
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夕暮れの寝子島神社に、賑やかな灯が輝いている。
夕空に輝き始めるお祭の気配に、
津島 直治
は黒縁眼鏡越しの生真面目そうな黒い瞳と少年らしい柔らかさ残す頬をふわり和らげ、けれど道の先に人影を見つけた瞬間に元通りの仏頂面へと表情を沈める。
神社に続く商店街がいつも以上に賑わい、参道に屋台がたくさん並ぶお祭の日とは言え、細い路地に人通りは少ない。
(近道なんですよね)
居候をさせてもらっている旧市街の親戚の家から、お三夜祭に華やぐ寝子島神社までは、山茶花の生垣に挟まれたこの道を通ると近い。外灯もない細道は、空に月がくっきりと姿を現すこの時間になると薄暗い紫の空気に染まって、
(少し怖い、……かもしれません)
怪談が苦手な十四の少年は内心ほんの少し怖くなる。そう言えば、向かいから歩いて来る中折れ帽を目深に被った和服姿の老人は、遠目にも何だか妙な違和感がある。
違和感の正体を見定められぬまま、咲き初めの山茶花の生垣の半ばで老人と擦れ違う。
育ってきた環境のせいか、老人を不審に思いつつも反射的に丁寧に会釈する。
「ああ、こりゃどうも」
少年の会釈に、思わずと言った風に老人が帽子をひょいと持ち上げ、
「おっと」
慌てたように目深に被り直す。
直治の驚愕を見て見ぬふりして、何もなかったかのように飄々と歩き去ろうとする。
(ええっと……見間違いでしょうか……)
老人の帽子の下に隠れていたものを見て驚き眼を剥いた表情のまま、身を固めて動けぬまま、見てはいけないものを見てしまった気のする直治はそれでも平静を保とうとする。
見てはいけないもの。
(具体的に言って、)
単眼禿頭の老人。
今の今見た、見てはいけないものをはっきりと脳裏に思い描き、
(いや、見間違いのはず)
必死に打ち消す。一つ目の老人など居る訳がない。
(そう、きっとそうだ……)
自分に言い聞かせながら、ぎこちない動きで振り返って、
同じようにこちらを確認する老人と目と目が合った。老人の顔の真中、まん丸に見開かれた、ひとつきりの目。
(え、あ、いや、これは夢?)
見間違えようもなく、一つ目の老人とばっちりしっかり目を見合わせて、
(私はまだ布団の中で、夢を見ているのでは!?)
直治は金縛りにあったが如く体を強張らせる。内心にもうものすごく混乱しつつ、心臓をどきどきさせつつ、それでも表情には何も出さないように努めに努め、
「……あ、ごめん」
何でもないように、
「あなたみたいな人、初めて見たものだからつい」
無愛想にぶっきらぼうに言ってのける。
妖を見ても動じぬ少年の態度に、一つ目の老人はその一つ目と皺深い口元に安堵の笑みを浮かべた。申し訳なさげに帽子を目深に引き下ろして頭を下げる。内密に、と言いたげに口に人差し指を立ててみせる。
(不思議なことが起こるとこだと思っていたけど、)
柿渋色の羽織を黄昏時の風に翻し路地の果てに遠退く老人の背を眺め、少年は小さな息を吐く。
(まさかおばけの類と遭遇するなんて思っていませんでした……)
白い月の浮かぶ夕空から吹き込む秋風にうなじを撫でられ、直治は夢から覚めたように身震いをひとつする。眼鏡を持ち上げ、物の怪見た瞼を擦って、背後に立つひとの気配に気付いた。
ぎくりとしつつ、無表情を保って振り返る。立っていたのは、薄墨色の髪と眼鏡の奥に陰気な瞳を隠した猫背の青年。
「……見た?」
思わず問いかける直治に、青年は僅かに首を傾げて見せる。何か物言いたげにしながらも、何も、と短く首を横に振る。
「ならいいけど」
赤い山茶花の咲く路地を擦れ違い、お祭に賑わう通りに出て行くぶっきらぼうな少年の背を見送り、
浅葱 あやめ
は嘆息する。
(眼鏡に不具合でもあったのでしょうか……)
何か妙なものを見たように眼鏡を外して目を擦っていた少年の姿に、旧市街で眼鏡屋を営むあやめは琥珀色の瞳を伏せる。
そうであればうちへ、とでも言えば良かっただろうか、と悩み、
(それは、ちょっと、……不審者すぎるでしょうか……)
ぐるぐるぐるぐる、悩み悩みつつ路地を数本過ぎて、辿り着いたのは路地の果て、行きつけの古い居酒屋。
路地に向いた換気扇から吐き出される焼き鳥と酒のにおいと、暮れなずむ路地に赤い光を落とす提灯と格子戸からの明るい光。黄色いパトランプのくるくる回る『やきとり ハナ』の看板を脇に縄暖簾を潜り、入り口の半ばを塞ぐビールケースを避けて格子戸を引き開ける。
「いらっしゃい」
「あら、浅葱さん」
途端に溢れ出して体を包む暖かい空気と慣れ親しんだ迎えの声に、あやめは思わず小さな笑みを零す。ふと気の向いたときに落ち着いた時間が過ごせる。あやめにとって、ここはそういう店だった。
「やあ、あやめ君」
その店の最奥で銚子を傾けるイタリア系米国人の壮年男性に親しく声を掛けられ、あやめは小さく会釈する。
「こんばんは、ビアズリーさん」
彫りの深い顔立ちはどこからどう見ても外国人のその癖、くたびれた風貌に着古した背広、人懐っこく憎めない笑顔は何故か場末の居酒屋にとてもよく馴染んでいる。
「ご隠居、まあ一献」
「おお、こりゃどうも」
その
ピーター・ビアズリー
と相席し、注がれる酒に嬉しそうに口元を緩める中折れ帽に着物の老人の姿に、あやめはちらりと首を傾げる。
「にいさんも、まあ座らんかの」
老人にひらひらと手招きされるまま、席につこうとして、
「……、こ、こんばんは……?」
あやめは気付いた。老人が一つ目であることに。
「久しいの、元気にしてたか」
「あ、……はい」
しかも、彼とはいつだったかに奇妙な街で顔を合わせたことがある。
(……何故こんなところに?)
一瞬、そう思うも、
(迷い込んだ、の、でしょうか……)
あの街の入り口で出会った面掛けた男の口調も同時に思い出す。もしそうであるならば、彼はあの時の自分たちと同じ立場。あの街で、彼らが自分たちを事も無げに受け入れてくれたことを思えば、こちら側で彼らに少しゆっくりしてもらうのも悪くないかもしれない。
(あの街の、他の人たちも迷い込んでいるのでしょうか……)
とはいえ、接客業を営みながらも対人関係を苦手とする眼鏡屋の二代目は、ひとまず老人が僅かなり見知った相手であることに安堵する。
安堵したことにさえ罪悪感を感じて俯くあやめの前、客が物の怪であることに微塵も気付いて居ないらしい店員が熱いおしぼりとお通しの小鉢を置く。
「いつもので?」
「あ、……いつもので」
「肴、適当に見繕っときますね」
「ありがとう、ございます……」
濃い目の焼酎お湯割が出て来るのを待ちながら、あやめは古い知り合いのように世間話と酒を交わすピーターと一つ目の老人を見るともなしに眺める。
「そっちは変わりないかい、ご隠居?」
「相変わらずじゃの。みんな毎日面白おかしく暮らさせてもらっとる。ほれ、ピーターさんも一献一献」
「はい、頂きますねぇ」
「あ、酒が切れちまった。女将さん、もう一本もらえるか」
異形の訪問者のはずなのに、と思う。
彼は当たり前のようにこの場に馴染んでいる。
彼が異形であると知るピーターも、彼を当たり前のように受け入れている。
微笑ましいような、微かに羨むような。不思議な気持ちに戸惑い、あやめは供された焼酎の湯割りをそっと口に含む。
「そういえば、前は将棋が途中だったねえ」
「んあ、そうじゃったかの」
先だっての勝負では敗色濃厚な長考に入っての勝負中断で負けを逃れていたご隠居は、中折れ帽から覗く禿頭を枯れ枝のような指先で掻く。
「いや、勝負はつけにゃならん」
思い直して酒をあおるご隠居に、ピーターは軽い調子で頷く。
「将棋盤、ないかねえ」
「携帯用の小さいものならありますよ」
あやめの前に焼き鳥の盛り合わせを置き、店員が熊じみた顔に笑みを浮かべる。店の奥から小さな将棋盤を引っ張り出し、ピーターにどうぞと差し出す。
「ああ、ありがとうねえ」
二つ折りの盤を広げても両手いっぱいほどにしかならない将棋盤を前に、ピーターとご隠居は向かい合う。
「お願いします」
駒を並べ、ご隠居が酒を片手に頭を下げるのに倣い、
「はい、お願いします」
ピーターも柔らかな笑み浮かべて頭を下げる。先に指せとご隠居に言われるがまま、ぺたり、磁石で盤にくっつく小さな駒を進める。
「おお、相変わらずの奇手じゃのう」
「いやあ、お恥ずかしい」
感嘆の声あげるご隠居に、ピーターは頭を掻く。実のところ、ルールはよく知らない。あの街でご隠居と指し向かった時も今も、将棋の指し方はなんとなくのノリ。つまりは適当。
それを知ってか知らずか、ご隠居は心底楽しそうに盤を見つめる。熱が入り過ぎて帽子を持ち上げ駒を見つめようとまでするので、横で勝負の行方を静かに眺めるあやめの方がはらはらしてしまう。客はこの三人だけ、店員と女将はそれぞれの仕事に掛かりきりではあるけれど、それでも『向こう側』の住人と面識のない女将たちが単眼のご隠居を見れば恐ろしく魂消るには違いない。
あやめの気遣わしげな眼差しに気付いてか、ご隠居は単眼を悪戯っぽく瞬かせた。注意深げに帽子を押さえ、縁を目深に引きおろす。
とりあえずは一安心して、あやめは焼き鳥を口にし酒を含む。祖父に付き合わされていたくらいで、何手も先が読めるほどの腕があるわけでもないけれど、
(……岡目八目とは言うもの、ですね)
口を出そうか手を貸そうか迷ううち、
「……あ、」
ピーターの何気ない一手に、思わず声が漏れた。
(しまった)
咄嗟に口を塞ぐも、零れた声は取り戻せない。きょとんとしたピーターと、苦笑い気味のご隠居の視線を受けて、あやめは元より白い顔色をますます白くする。
「すみません」
身を縮めて小さく謝る青年に、人懐こい小父さんと爺は揃って愉快そうな笑みを浮かべた。
「あやめ君は詳しいんだねえ」
「若いと言うのはいいもんじゃあ」
父や祖父に近い年齢のふたりの鷹揚な笑顔に、あやめはますます肩を窄める。
「次の一手、どうしようかねえ」
「あ、あの、……ええと」
ピーターから助言を求められ、戸惑いながら口を出せば、
「む、……次、どうしようかのう」
今度はご隠居から手助けを請われる始末。
自分の出した一手に対抗する一手に悩み、ご隠居と一緒になって唸るあやめを楽しげに見、ピーターは手酌の杯を傾ける。
「今日はいい日だねえ、こうやってまたご隠居と将棋ができて」
しみじみと目を細めて、そういえばと思い出す。
「うちのかみさんともね、たまに勝負するんだよねえ」
「んあ、強い理由はそれかのう」
中折れ帽の頭をちらりともたげるご隠居に、ピーターは慌てて手を振る。
「あ、将棋じゃあなくて、オセロなんだけど」
「オセロ?」
「うちのかみさんめっぽう強くて、気が付いたらいつも隅っこの方を取られてるんだよねえ」
いつだったかにオセロ盤を挟んだことを思い出す。あの時も確か酒盛りのついでだったと思い、ピーターは照れくさいような笑みを知らず零す。
盤上を見据えつつピーターの嫁さん話を耳に挟んでいて、あやめはふと他人には滅多と言えない己の恋を思う。想った途端、羨望と渇望に痛む胸を酒の熱で無理矢理洗い流す。
(……僕は)
腹の底に落とし込んだ恋心に代わり浮かび上がってきたのは、ご隠居の住むあの奇妙な町の、恋心と引き換えに人形のパーツを寄越す不思議な土産物屋。
もしもまたあの町に迷い込んだとして、
(またあの土産物屋を見かけたとしたら――)
その時、自分はどうするだろう。
「こないだもほとんど真っ黒にされちゃってねえ……」
「女将さーん、すまんがオセロお願い出来んかのー」
将棋に手強いピーターをどうにかして唸らせるべく、ご隠居は初めて耳にしたオセロゲームに手を出そうとする。
「あっ」
ご隠居の次の一手を忘れていたことに焦り、ふたりがオセロゲームにも手を出そうとしていることに焦り、あやめは楽しげなふたりに恐る恐る口を挟む。
「……あ、その、……ええと」
口から言葉が出てこないことにも焦り、カップに残ったお湯割りをぐっと一気に飲み干す。
「……そろそろ、帰りの時間を気にした方が、いいかもしれません……」
こちらの住人が向こうの町に長居すれば記憶を失うように、向こうの住人がこちら側に長居すれば、もしかすると何か良くないことが起こるかもしれない。
女将たちに不審がられぬよう懸命にぼやかして伝えるあやめに、ご隠居は思い出したように頷く。
「そうじゃの、そろそろ帰らんと」
「惜しいねえ、またひと勝負できればいいけどねえ」
「今度はオセロじゃ」
「酒でも飲みながらね」
「そうじゃな」
若者に促され、小父さんと爺は頷き合う。
「帰り道は、……案内、した方が、……」
こちらに詳しくないご隠居を慮って不安気な顔するあやめに、ご隠居はカカカと明るく笑って勝敗のついていない将棋盤を示した。
「後は頼む」
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
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日常
コメディ
SF・ファンタジー
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年10月16日
参加申し込みの期限
2015年10月23日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年10月23日 11時00分
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