this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
終焉幻想曲 NO.222
<< もどる
1
2
3
4
5
…
11
つぎへ >>
階段の際で泣き崩れる女に声はかけぬまま、亨はその場に腰を下ろし、上着を脱ぐ。季節外れな春物衣装を纏って、けれどそれが妙に似合う女の肩に掛ける。泣き疲れた顔を上げる女にちらりと笑いかけ、バックパックから取り出したコップになけなしの水を少し注いで差し出す。
「……ありがとう」
「ここまで来れば少しは安全だろ」
「そう、なのかしら」
不安を消せぬ女の傍らに座し、亨は荷を解く。眼下に広がる破壊されゆく町並みを前に、今己がすべきことは嘆くことではない。
それでも、ただひとつだけ、深く深く、悲しい息を吐き出す。
滅ぶ世界の中に、想い人と出会うことが叶わなかった。
(いつか)
胸を過ぎる悲しみと気懸かりを胸に封じる。
(きっとまた会えるその瞬間まで、生き抜いてみせる……!)
そのためにも、すべきことは、気にして考えることは他に山とある。
脇に手挟んで来た身の丈ほどの鉄パイプに、バックパックから取り出した文化包丁や出刃包丁を針金で括りつけ、即席のパイプ薙刀とする。
(盗品って言や盗品か)
包丁も鉄パイプも、住人がナニカに襲われ逃げ出した後の空家や資材置き場から調達してきたもの。とはいえ、今のこの島にそれを咎める法など無い。
泣き疲れて寝入ってしまったらしい女に指一本触れもせず、亨は黙々と作業を続ける。鉄パイプに括りつけるつもりの最後の包丁の一本をいざという時のために懐に呑み、パイプ薙刀に出来なかった分の鉄パイプの先を鋸と鑢で鋭利に尖らせる。
「大丈夫ですか」
掛けられた声に顔を上げる。半ば崩れた教会と炎の色した空を背に、心配げに栗色の瞳を向けてくる黒髪の少女に向け、力強く頷く。
「要るか」
出来上がったばかりのパイプ薙刀を無造作に差し出され、
十文字 若菜
は栗色の瞳を瞬かせる。
「武器とリーチはあればあるだけ良い、だろ?」
「うん、そうだね」
寝子高校で見かけたことがあるような少年の手から手製の武器を受け取り、若菜はほんの僅か、微笑むことに成功する。
(ついさっきまでは)
この男の子も、傍らで疲れて眠る女性も、フツウの日々を暮らしていた。フツウを、当たり前だと思っていた。
当たり前だと思っていた世界が、何の前触れも無く壊れた。
当たり前の日常が、当たり前の日々が、一気に、粉々に、砕け散った。
(ステンドグラス職人が夢だった)
炎と黒煙に包まれた町を見やる。
風光明媚な観光地でもあった教会を見やる。
(でもその夢も、もう……)
幼い己に夢を与えてくれた教会は、美しかった佇まいを一変させている。
青空に高く晴れやかにそびえていた鐘楼は空から落ちてきたナニカによって打ち砕かれてしまった。
教会のシスターたちが丹精こめて世話していた庭も、地面から這い出したナニカに滅茶苦茶にされてしまった。
「水、皆に分けてやってくれよ」
「ありがとう……!」
少年から水の入ったポリタンクを示され、若菜は武器持たぬ手でそれを持ち上げる。
「武器作り終わったらそっちも手伝うぜ」
「うん、でも自分の休息もきちんととってね」
「……ああ」
一心に武器を作り続ける少年の背を、若菜は軽く叩く。
「じゃないと大事な時に動けないから」
出来る限りに明るい声で言う。それは肩越しに手を振るばかりの少年に向けてだけの言葉ではなく、自分自身にも向けた言葉。
少年の傍らに眠る女性に怪我がないことを確かめ、若菜は踵を返す。半壊してさえ、この教会が多くの人々の心の拠り所であることに変わりはない。その証拠に、教会の庭にも、倒壊を免れた礼拝堂内にも、多くの人々が逃れて来ている。
放心した表情で教会の前庭に座り込む男。怪我負って横たわる母親に縋って泣く幼女。崩れた鐘楼の瓦礫の端、墓標のように突き刺さる十字に祈り続ける老女。その老女の背を擦り続ける少年。
「ハイハーイみんな食事の時間ダヨー!」
沈みこんだ空気を跳ね除けるような底抜けに明るい声が敷地内に響き渡る。
「手伝います」
物置から折りたたみ式の机を持ち出し、焼け焦げた芝生の上に並べようとしている黒い短髪の少年に、若菜は声を掛ける。小学生の頃から教会のボランティアを行ってきたため、どこに何があるかは概ね把握している。逃げおおせた人々の応急手当や食事の世話くらいならば、自分にも出来る。
「おっ、ありっがとー!」
どこまでも軽く、どこまでも鮮やかな笑顔を見せる少年に、見覚えがあった。
「生徒会長さん、だよね?」
「そそ、セートカイチョーの志波ブドーでっス!」
おどけた動作で片手を挙げて、
志波 武道
は運んできた机を広げる。
「あ、ええと、十文字若菜、だよ。怪我はない?」
「ヘーキヘーキ」
若菜から真摯な瞳で尋ねられ、武道は笑みを深くする。
「俺一人だけだったらとっくに死んでたかもなー」
テヘ、と軽く笑う。いつものように。フツウ通りに。
「不謹慎だ、馬鹿か」
庭の半ばに座り込んでいた男に吐き捨てられても、武道は笑みを絶やさない。こんな時だからこそ、と信じるが故に。
(それで少しでも)
気持ちが明るくなる子がいるなら、と思うが故に。
「あっ、櫻ちゃん! 手伝うよー」
温かいシチューの大鍋を一人で運んで来る
楪 櫻
の姿を見るなり、武道は彼女のもとに駆け寄る。
「問題ない」
「そう言わずー」
黒い瞳を玲瓏と細め、首を横に振る櫻の手から鍋の持ち手の片方を取り、武道は櫻と並んで食事の配膳を始める。
「これ櫻ちゃんが作ったの?」
「手伝った」
武道の問いかけに短く応じつつ、若菜が運んできた皿にシチューをいれる。
「ハイハーイ、ちゃんとみんなの分あるからねー」
傍らに立ち、いつもと変わらぬ明朗な声と表情で作業する武道の横顔をちらり、見やる。教会に辿りつき、此処で武道と再会を果たした。率先して生存者のサポートに回る武道に倣い、元々一人暮らしをしているためもあって料理の心得のある櫻は教会の調理場に立った。
ただただ、懸命に立ち働いた。
「まずは腹ごしらえ!」
黙々と働く己の隣、武道は前に立つ人ひとりひとりに力強い声を掛け、笑みを向け続けている。
(……奴の事だ)
こういう時だからこそ、と彼は考えているのだろう。
櫻は内心で感心する。
(他人のために笑えるのは強さだ)
「食え食えー、何ならにーちゃんの分もやろっか」
涙塗れの頬で笑う少年の頭を撫でながら、武道は他人に掛ける言葉で己をも鼓舞する。
(希望はないかもだけど)
「……な、生き抜こうぜ」
言葉が、己を生かすと信じる。
「此処にいたら兄弟や友達も来るかもしれないし!」
シチューの皿を手に老女のもとへ戻る少年に手を振りつつ、武道は瞳に力を籠める。
ここに至るまで、多くの人々の死を見て来た。
(……自分の目で見てないなら信じないからなー)
それでも、兄弟の死はこの目で確かめていない。だからこそ、認めない。それに、
(そう思った方が耐えられる)
ぎゅ、と一瞬固く結んだ唇は、机を挟んで立つ銀髪紅眼の後輩と紅髪黒眼の後輩を眼にした途端に笑みに解ける。
「サキリくん、斗南くん」
「今日は、志波先輩」
高校生活を送っていた頃と変わらぬ物静かな笑み返す
サキリ・デイジーカッター
と、
「……どうも」
こちらも一見変わらぬ面倒くさげな投げやりな挨拶を返す
灯 斗南
。
「サァお食べ!」
武道からにこやかにシチューの皿を渡され、櫻からスプーンとパンを渡され、サキリは思慮深げな一礼をする。二人に背を向け、息吐くように血色の空を見仰ぐ紅の瞳には、刃の如く鋭い光。
(どうしてこんな)
空に無数に泳ぐナニカを見据える。地に伏せて泣き喚く人々を眺める。地獄の様な世界だ、と思う。思いながら、その中性的な優しい唇には冷酷な笑みが滲む。
(だけど案外、この方が僕の性分には合っているのかもね)
茶道部に属するうちに培った所作の良さでシチューを平らげ、腹を満たす。
(僕はフツウの少年になる事を目指していたけど)
服の内に隠した小型刃物の感触を皮膚に確かめる。フツウの少年ならば、きっとこんな不穏な冷たさに安心したりしない。
(結局、血生臭い殺し合いを好む残酷な人間でしかなかった)
嘆きに似た心中の呟きのその癖、白い頬には荒んだ色が見え隠れしている。
(……まあいいさ)
投げ捨てるように、もう一度息を吐く。甘ささえ含んだ笑みを地獄の空へ放る。この地獄で、
(最後まで戦って楽しむとしよう)
密やかに微笑み、残酷にさえ見えるその笑みを隠して丁寧に両手を合わせる。ごちそうさま、と呟き、教会のぐるりに視線を巡らせる。ひとまず、星ヶ丘教会は安全な様子。
(不幸中の幸いだ)
とはいえ、ここも長くはもたないだろう。これだけの人々が集まっていては、食糧等の物資もいずれ底をつく。
(残っていてもジリ貧だ)
紅色の瞳にしばらく睫毛の銀影を落として考えて後、サキリは小さく顎を引く。空になった食器を返すついで、
「僕はここを出る」
学校だけでなく、ここでもまとめ役になりつつある先輩にそっと告げる。
「本土がどうなっているのか確かめたい」
「……それは」
「もしかしたら助かる糸口が見つかるかもしれない。教会に残った皆を救う為に、……僕はここを出る」
後輩の行動を憂いて寄せた眉を、けれど武道は唇をかむようにして開く。短く笑う。
「サキリくんはそう決めたんだな」
莞爾とした笑み向けられ、サキリもまたふわり、笑う。
「かなり駄目元だからあまり期待はしないでね」
「いーや、期待しちゃうZE!」
だから、と武道はサキリの瞳を真直ぐに見つめる。
「必ず帰って来い」
武道の笑みに返す笑みを持たず、サキリは踵を返す。駆け足に近くその場を離れつつ、先輩に倣ってなるべく軽く見えるように手を振る。
「それじゃ行ってくるよ」
教会を去るサキリより少し離れた瓦礫の影、
「……くそ」
低く低く、斗南は呻く。食べ終えた食事を前に、怨嗟と悲哀の声に溢れる教会の敷地を見回す。多くの人々が嘆いている。死の恐怖に震えている。
フツウにはあり得ない色した空。フツウにはあり得ないかたちしたナニカが我が物顔に飛び回る空。フツウにはあり得ないナニカが這い回り、生き残った人々を襲い続ける町を、睨む。
それは正に世界の終わりの風景。
(……認めない)
拳を固める。
(鬱展開は嫌いなんだ)
だからこそ、決める。最期まで抵抗し続けてやる。
いつもと同じように、面倒くさげな仕草でフラリ、立ち上がる。
「ごちそうさま」
平らげた皿を返し、教会の前庭を横切る。何気ない足取りで、星ヶ丘の町へと、阿鼻叫喚の世界へと続く階段へと向かう。
「行くのか」
「ん」
階段の端で黙々と武器を量産していた黒髪の少年が、多くを問わぬままに投げ渡してくれた鉄パイプの先に包丁を固定した即席の薙刀を受け取り、誰かの血で汚れた石階段を降りる。
フツウの世界を壊したナニカを、力の限り殺して殺して、殺し尽くすつもりだった。その途中で食い殺されようとも構わなかった。
――ねぇ
その途中、斗南は確かに聞き慣れた忌々しい声を聞いた、気がした。
――何でそこまでするの?
あの忌々しい鴉は、耳障りな声できっとそう尋ねるだろう。ただの好奇心から。ただのからかい心から。
(僕が生きた証を残したいからだ)
幻の声に、斗南は低く応じる。
どうして今、この声なのだろうと思う。
――なら手を貸してあげよっか?
どうして今、あの憎々しい声が、言葉が、思い浮かぶのだろう。
――みんな死んじゃったらつまんないし
(お前の手なんて借りたくない)
眉間に深い皺を刻み、斗南は罵声を吐く。
(いつも僕らのフツウを壊そうとしておいて、今更助けようなんて)
「……身勝手な奴だ」
最後の言葉は心に納め切れなかった。低い唸り声となって唇から零れ落ちた。
(身勝手、か)
――じゃあ見てるだけにするわぁ
くすくす、くすくす。耳元であの鴉が嗤う。うなじを黒い翼に掠められた気がして、その鬱陶しさに思わず首筋をがりがりと掻きむしる。それでも、声は消えなかった。嗤い続けた。
――あんたがいつ助けを呼ぶか期待しながら
胸に宿る怒りを此処には戻らぬ決意に変えて、懐に隠した仮面を取り出す。ピエロのそれにも似た面を掛け、上着のフードを深く被り、顔を隠す。そうして炎を想えば、少年の掌に炎が宿る。
「来いよ」
空に踊る翼持つ龍のかたちしたナニカに向け、地を打ち砕いて現れる蟲のかたちしたナニカに向け、ヒーローに憧れた少年は、そうすれば誰かに認めてもらえると信じた少年は、背筋伸ばして吼えた。
少年を獲物と見做した蟲の群が空から殺到する。仮面の奥に猛々しい笑み刻み、少年は己が掌から炎を噴き出させる。
少年の姿が深紅に消えて、――その後、少年の姿を見たものは、居ない。
<< もどる
1
2
3
4
5
…
11
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
終焉幻想曲 NO.222
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
冒険
SF・ファンタジー
バトル
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年09月22日
参加申し込みの期限
2015年09月29日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年09月29日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!