this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
エメラルドの迷宮でお茶を
<< もどる
1
…
2
3
4
5
6
…
7
つぎへ >>
デジタルカメラの画面の中に切り取られて、火花を散らすように咲くフットボールリリー。
火花のように爆ぜる赤い花は、別名を『線香花火』。
地面に挿された板の説明書きに、
神代 千早
は物珍しげに眼鏡越しの瞳を和らげる。高い天井を支える鉄筋と、透明アクリル越しの澄んだ秋空を写し撮る。傍目には面白くもなさそうな真顔で、けれど実際は気になるものを見つける度に眼鏡の奥の瞳を輝かせて、デジカメのシャッターを切る。
黄色い煉瓦道に気根を腕のように伸ばすガジュマルの独特な樹形をカメラに収め、その傍らに藁詰めの胴体に麦藁帽子の案山子を見つけてそれも画像データに焼き付ける。
物静かにのんびりと足を進めつつ次々とシャッターを切っていて、ふと気付いた。足元に伸びる黄色い煉瓦道だけを残して、一面、鮮やかなエメラルド色。
ついさっきまでは視線を伸ばせば最奥の緑の棚が見えていた。棚の中央に据えられた小さな宮殿の置物が葉陰に見え隠れしていた。
今はそれが見えない。何もかもを覆い尽くして、覆い隠して、深い緑。
様変わりした温室に瞬き、デジカメを持っていた手をおろす。カメラの画面越しでなく、己の瞳にぐるりを捉える。
雪崩れるように咲く様々な色の華やかなブーゲンビリア、煉瓦道にまではみだそうとしている生育旺盛な羊歯、白い砂地にこんもりと鮮やかな緑を膨らませる仙人掌、椰子の樹に絡みついて締め上げて垂れ下がる蔦。
見開く瞳に名前も知らないような色濃い緑を映し、眼鏡の中で瞬く。ふわり、鼻先を掠める空気の暖かさと湿気にも二度三度と瞬きを繰り返す。
今にも覆い被さって呑み込まれそうな植物たちの緑に、花の鮮やかさに、物言わぬ草木に満ち満ちる命の気迫に圧され、思わずよろめく。たたらを踏んだ靴底に感じた固い煉瓦道の感覚に、息を洩らす。
圧倒的な緑の景色から、足元から長く奥へと続く黄色い道へと視線を逸らす。カメラを構え、自分の靴先と黄色い煉瓦道を写す。
カメラのまま空を仰ぎ、緑の天幕のずっと上、透明アクリルと鉄筋越しの空を写す。訪れたときには午後の明るい陽光が、今は黄昏に近い朱金の光に暮れている。
カメラ越しの視線を伸ばした先、待ち受けるように道の真中に立つ子犬の置物。
「……ますます、『オズの魔法使い』だ」
呟き、道程を確かめるように子犬の陶器を撮る。動かぬ子犬の前にしゃがみこみ、頭をひと撫でする。案山子に子犬、
(ライオンにブリキの樵、……だったか)
正直なところ、登場人物くらいしか思い出せはしない物語では、主人公の少女はどうやって自分の家に帰ったのだったか。
印象に残っているのは、幼い頃に映画で見たドロシーが履いていたルビーの靴。
カメラのレンズをもう一度足元に向けても、映画の中の少女の足元を飾っていた鮮やかな紅とは正反対の無骨な靴が写るばかり。
小さな笑みを零して、ドロシーになれない青年は黙々と煉瓦の道を辿り始める。どれだけ遠く離れてしまおうとも、ともかくは最奥を目指そう。
静かに歩む青年が視線を真直ぐに伸ばせば、その先、白い日傘を黄昏の金と葉陰の翠に染めて、ひとり佇む白い髪の少女。
黄昏の色を吸った白く長い髪が小麦の穂のような黄金に見えて、千早は黒い瞳を細める。
先に立つ小柄な少女の足元を飾るのは、赤い靴。
先ほど思い浮かべた映画の主人公のように見えて、
「……ドロシー?」
思わずぽつり、低く零した青年の声に、日傘差した少女が振り向く。
少女の身体に纏わりつくように蠢く黒い影にも似たものを見た気がして、少女が此方の気配に勘付いた瞬間に影が地面に落ちたようにも見えて、千早は瞼を固く閉ざした。
葉陰の揺らぎがそう見えただけだろうと見当をつけて瞬かせた千早の黒い瞳と、髪よりも真白い頬した少女の血色の紅い瞳がぶつかる。
「……っ、と」
眼鏡越しの黒い瞳が恥じてたじろぐ。思わず零れた言葉を隠すように掌で唇を隠す黒髪の青年に、
桜 月
は緩く首を横に振る。淡く微笑む。
「残念ながら私はドロシーではない」
「失礼、そうですよね」
白く長い髪と紅色の瞳がそう感じさせるのか、どこか儚い少女の唇から発せられた男性的な固い口調に、千早は小さく頷いて人違いを詫びる。
ドロシーか、と呟いて、月は心持ち楽しげに傘をくるりと回す。
いつものように日の高い内は星ヶ丘寮の自室で服飾のデザイン画を描いていた。日が傾く頃に筆を止め、もう少しで散歩の時間かなと窓から黄昏近づく空を眺めて、そう言えばと思い出した。
最近出来た植物園にある温室とカフェの話を。
折角だし行ってみようかな、といつもより早めに支度をした。色素が極端に少ない月の身体は、強い陽射しを浴びればたちまち熱を孕む。しっかりと日傘を差して訪れた植物園で、暗くなればよく見えなくなる植物たちを見るため、カフェよりも先に温室へと足を進めた。
そうして、異変に巻き込まれた。
果て無く広がり己を閉ざす緑の迷宮を見回して、大丈夫だろうと思う半面、不安もあった。だから身に宿るろっこんで己の影を立体化させ、己が意志で動く影をボディガード代わりとして、未だに慣れぬ影の気配に眉を潜めながら奥へ歩き出しかけた時に掛けられた、
(……ドロシー)
竜巻によってオズの国に迷い込んだ少女の名。
ドロシーになれない青年と、ドロシーと間違われた少女は、何となく後先立って歩き始める。青年は時折足を止めてカメラのシャッターを切り、少女はしゃがみこんで草花の形を書き留める。自然、ふたりの足取りはのんびりとしたものとなる。
千早は造形のインスピレーションを得んがために。
月はドレスやアクセサリーのモチーフやデザインの素を探すために。
何度めかに揃って足を止め、滝のように零れ落ちるグリーンネックレスをそれぞれの手段で捉えようとして、
「結構歩いているな」
「そう、ですね……」
それぞれが道沿いの景色や草木に夢中になって歩いてきたふたりは視線を交わす。
「えっと、……困ったな、これ出られるかな?」
「道が続いていますし、……」
年下の少女の言葉に、千早は不安の欠片も見せぬ黒い瞳に煉瓦の道を写す。溢れる緑に呑み込まれてもまだ先に続く黄色い道。
「大丈夫でしょう」
「うん、……大丈夫だよな」
青年の言葉に頷き、月は思い出したように自身の名を告げる。
「神代千早です。あなたも、何か創作を?」
「服のデザインを考えるのが好きなんだ」
同じ寝子高校芸術科に通う先輩後輩関係にあるふたりは、ほんの少し緊張の解けた笑みを向け合う。そうしてほとんど同時に被写体に向き合おうとする。
迷宮の最中にあってもインスピレーションを求めるそれぞれの行動に、ふたりはもう一度、お互いに戸惑ったような視線を交える。
「……いや他にもデザインに使える面白い植物があるかもしれないじゃないか」
「その通りです」
言い訳じみた月の言葉に力強く顎を引き、千早はカメラのレンズを緑の迷路へと彷徨わせる。
花の紅、実る果の緋、新芽の朱。涼やかにそよぐ葉の緑、重なりあう葉影の碧、落ちて尚も青さを残す翠。透明な膜の内に閉ざされても命を育み続ける草木のただ中、
「どのお花も葉っぱも、みんな綺麗ですね」
親しい誰かに話しかけるように明るく弾む声をあげる黒髪の少女。
薄紅のコートの裾をふわり揺らし、ポケットから取り出した携帯電話のカメラを熱帯の植物に向ける。カシャリ、電子音が響く。
写すものを探して携帯電話を構えたまま踵でくるりと回ったところで、
「えっ、あっ……えっと、こんにちは」
宮祀 智瑜
は自身に向けられた青年のカメラレンズに気付いた。独り言を聞かれてしまったことに頬を染めつつ、挨拶をして片手を上げてみせると、青年は焦った仕種でカメラを下ろす。
青年の傍ら、知らぬ顔で草花を素描していた日傘の少女が紅の瞳を僅かに笑ませて会釈を返す。
「星ヶ丘の植物園だからやっぱり広いですね」
青果店を営む祖父母の店に訪れるお客さんに話しかけるように、智瑜はほんの少しはにかんだ微笑みを浮かべる。一瞬顔を見合わせ、次いで揃ってこくりと頷く黒髪の青年と白髪の少女に屈託なく笑いかけ、智瑜は写真やメモをとるふたりの邪魔をせぬよう先だって歩く。
新しく出来た植物園を歩くのは楽しかった。しかも今日は買ったばかりのコートを着ておめかしもしている。
祖父母に行って来ますを言ったときに始まり、寝子電に揺られて景色を見ていたときにも、植物園に入ったときにも、ずっと続いていたわくわく感は、今も続いている。
携帯電話を取り出し、植物園に着いてすぐに撮った写真を呼び出す。匂い立ちそうな花の写真も、鬱蒼と繁る木々の写真も、家に帰ったら祖父母にぜんぶ見せてあげよう。今度一緒に行こうと誘ってみよう。
(でも、)
歩いても歩いてもまだ続く黄色い煉瓦の道に、智瑜は汗ばむ額を拭う。手袋を脱いでコートのポケットに入れ、コートも脱いで手に持つ。
(あんまり広いとお祖父ちゃんたちは歩くの大変かも)
それでも、祖父母ならここの花の良い香りも目に優しい緑も、きっと喜んでくれる。
(カフェなら植物を見ながら楽しめそうかな)
パナマ草にサンスベリア、サボテンの『月世界』。花屋によく行くこともあって植物には結構詳しいけれど、これだけ広いと知らない花も珍しい花もたくさんある。
見慣れぬ花の脇、隠れるように設置された説明書きを見つけて、前に膝を折る。植物の名や開花時期や特徴を記した文字を丁寧に目でなぞっていて、ふと傍らに差した影に黒い瞳を上げる。
「いい色だ」
日傘の影に色素の薄い身体を隠して、花の色した瞳の少女が頬を緩める。
「外国でしか見れない花なんですね」
並んで深紅の花を見つめながら、寝子島を出る機会をあまり持たぬ、幼い頃に両親を亡くし祖父母に育てられた智瑜はうなじまでの黒髪を揺らして首を傾げる。
「寝子島にしかない植物ってあるのかな?」
「……さあ、どうでしょうか」
花の深紅しか捉えられぬほど間近にカメラのレンズを寄せていた眼鏡の青年が、智瑜の独り言を自分に掛けられたものと思ったか、少し驚いた表情で瞬く。
「咲くと猫の顔の形に見える花とか可愛いかも」
「色は白かな」
「探せばあるかもしれません」
月が日傘をくるりと回し、千早がセル黒縁の眼鏡を押し上げる。
エメラルドの迷宮に立って、けれど迷宮をさほど迷宮とは思わず、青年と少女ふたりは焦りを知らぬ足取りで黄色い煉瓦道を歩む。
道々に咲く花の色や緑のそよぎを思うさま楽しんでいて、
「……ん、終わりか」
月が不意の幕切れに紅の瞳をきょとんと瞬かせる。
気づけば、いつしか三人は深緑に白い斑の入った蔦が天井まで絡む透明アクリル壁の前に立っていた。
「エメラルドの都、ですね」
千早が蔦の壁の央に据えられた小さな宮殿の置物を示す。
「あっ、あれ? こんなに短かったかな?」
今まで歩いてきた道を確かめようと後を振り返った智瑜が首を傾げる。たくさんたくさん歩いてきたつもりだったのに、背後に広がっていたのは地平まで続くような深い森ではなく、少し歩けば出入り口に辿り着けるほどに小さな小さな温室の森。
伸ばした視線の先、出入り口のカフェさえ緑に見え隠れしていて、智瑜は目眩にも似た感覚に襲われる。
(あ、でも)
くすり、小さく笑う。
(これなら、お祖父ちゃんたちでも楽に歩けそう)
<< もどる
1
…
2
3
4
5
6
…
7
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
エメラルドの迷宮でお茶を
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年06月19日
参加申し込みの期限
2015年06月26日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年06月26日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!