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エメラルドの迷宮でお茶を
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熱を帯びた湿気にしつこく纏わりつかれて、ジャケットを羽織った体が重くなってくる。汗と湿気で額にべったり貼り付く栗色の短い髪を掌で払い、
双葉 由貴
は群青色の瞳をぐるりに迷わせる。
右手には空色の花の群生、左手にはどこまでも深く広く続く緑の海、背後にはお化けの手みたいな枝からお化けの尻尾みたいな細い根っこを地面にたくさん伸ばす樹、頭上には硝子張りの空、足元を覆い尽くす湿った黒土と枯れた葉っぱ、蜘蛛の巣みたいに張り巡る茶色の根っこと艶々の緑色した葉っぱの蔦。
「出口……」
緑の迷路に閉ざされて、由貴は蹲りたくなる膝に手を突っ張る。
「出口どこだ!?」
叫ぶ声は緑に呑み込まれるばかり。応じる声はない。
「……っ、……」
もう一度、不安な視線を周囲に走らせる。
滝のように咲き零れる緋色の花や、橙と青紫の鳥みたいな形した変わった花、プラスチックみたいな分厚い質感の葉っぱ、綺麗な花や変わった葉っぱにつられて温室に入り、外側から眺めた時の小ささに油断して好き勝手歩いているうち、帰り道がわからなくなってしまった。
たくさん歩いたはずなのに、どこまで行っても出口が見えない。運動がそんなに得意でないせいもあり、心に覆い被さる不安もあり、段々と息も早くなってくる。
「だ、大丈夫! 大丈夫!」
弱音を零したくなる自分自身を、叱り付ける口調で励ます。
「絶対に出口につくし!」
掌をぎゅっと拳にする。どきどきする心臓を無視して、できる限り明るい声を出す。
(そ、そうだ)
こういう時は、
(冒険するノリでいれば怖くない!)
出口を求めて温室を探索しよう、そうしよう。
もう小学四年生、これくらいで焦ったりなんかしない。絶対しない。
頬を伝う汗を拭うことも、乱れる息を整えることも、迷子に焦るあまり忘れたまま、由貴は懸命に背筋を伸ばす。
「出口はどこだー!」
全身で怒鳴って、
「わ、びっくりした」
「うぅうわ!?」
背後のガジュマルの樹の気根を手袋の手で掻き分けて現れた黒髪の少年の姿に全身で怯える。
振り返った格好のまま青白い顔で固まる由貴を、
三夜 架月
は黒い瞳でジッと見つめて後、にこり、邪気のない笑みを浮かべる。
「大丈夫、怖くないよ?」
言いながら由貴の前に近づいて、
「あっ」
由貴の背後の茂みの向こう、追い求める大好きな人の姿を見つけた。
「じゃあね」
「えっ、あっ、」
途端に服の裾を翻し、一瞥も寄越さず緑の迷路へ走り去る中学生くらいのお兄さんの背に、由貴は言葉を失う。
「じゃあ、な……?」
気をつけて、と手を振って、他にも人がいることにとりあえず安堵する。湿気を帯びたあったかい空気とどこまでも続く森には辟易するけれど、少なくともここにひとりきりというわけではなさそうだ。
(もう少し歩いてみよう)
ひとの姿に勇気を貰って、由貴は元気を取り戻す。青い瞳を持ち上げ、もう一度歩き始める。
柔らかな春の陽の金色した髪を垂れ下がる蔦に絡み取られ、
五十士 柊斗
は菫色の瞳を眠たげに瞬かせた。
どこまでも伸びて見える黄色い煉瓦の道と、道の左右に広がる熱帯の深い森に視線を走らせ、小さく首を傾げる。
(ここには前にも閉じ込められたことがあるし、)
また不思議な出来事が起きているのかもしれない。
あの時は時間が解決してくれた。ならば今回も、
(時間が経てば元通りになるのかも)
急ぐ用事もない。広さの変わらなかった前回と違い、今回は緑も道もどこまでも延びている。何にせよ、退屈はせずに済む。
甘やかに咲く梔子の白さや涼やかな薄紫を開く桔梗に菫の瞳を細める。急がぬ足取りと穏かな眼差しで辿って居た黄色い煉瓦の道の先、
「……と、」
レトロな二眼レフカメラを小さな両手に大事に抱えて歩く少女がひとり。
「今日は」
声を掛ければ、頭のてっぺんに結い上げた大きなお団子髪をふわりと揺らし、少女は細い肩を不安げに震わせた。
振り返る榛色した大きな瞳に、見覚えがあった。
(確か、近所で)
母親らしい女性と小さな弟と一緒に、仲睦まじそうに歩く姿を幾度となく見ている。
「こんにちは、お兄さんもまいごなの?」
ふわふわと笑う少女の柔らかな言葉に、柊斗は頬を緩める。
「そうだな、迷子みたいなものか」
「あさひといっしょだねぇ、こまったねぇ」
駆け寄ってきて真直ぐに瞳を上げてくる人懐っこい近所の子どもと一緒に、柊斗は巨大な緑の迷路を眺める。
「スミレのお兄さん、もしかして近所で見たことあるお兄さん?」
「菫?」
「だっておめめがスミレのお花の色しているよ。とってもきれいねぇ」
「菫か」
少女に花の色だと言われた瞳を片手で押さえ、柊斗は淡く笑んで名を告げる。
少女は疑うことを知らぬ無邪気さで頷く。
「
椎名 あさひ
だよー。お顔は知ってるけどはじめまして」
元気よく自己紹介とご挨拶をしてから、あさひはちょっとだけ眉を下げた。
「一人はちょっとふあんだなぁって思ってたの」
確かに、と柊斗はどこまでも膨れ上がって見える透明な天井と、天井越しに暮れ始める空を仰ぐ。ひょいと膝を折り、あさひと視線の高さを合わせる。
「一緒に行こう」
「うん!」
大きく頷く少女と並んで、黄色い煉瓦の道を辿る。
ガジュマルの樹影に佇む案山子の置物、道の真中にお座りする陶器の犬、
「なんだか絵本の主人公になったみたいだねぇ」
犬の頭をひと撫でしてカメラを向けながら、あさひが呟いた。道すがらにある置物にオズの魔法使いを彷彿とさせていた柊斗は小さく頷く。
「椎名さんはドロシーかな」
「お兄さんは?」
「俺は、……」
少し先、ゴムの木に休むブリキのきこりを見つけて、柊斗は目を細める。
「きっとブリキのきこりだ」
心が欲しいと望む、がらんどうの体のブリキのきこりに自身をなぞらえて、けれどそう思う理由は口には出さない。
カメラのレンズを緑の中に伸びてゆく黄色い煉瓦の道に向け、あさひが真剣な瞳で唇を引き結ぶ。
「まほう使いを見つけてお家に帰してもらわなきゃ」
「魔法使い、か」
あさひの視線を追い、黄昏に染まり行く煉瓦の道をなぞる。
例えば、もしもこの煉瓦の道の向こうに魔法使いがいたとして、
(自分は心を本当に欲しいと思うだろうか?)
誰かを想える心を。想うが故に思い煩う心を。
それとも物語のブリキの樵のように、この体の内には本当はもう心が備わっているのだろうか。この身に心なんて無いと思っているだけ? 本当はあるのに動いていないだけ?
(動かない心なら無いと同じではないのか)
花の色の瞳を眠たげに瞬かせ、出口のない思考の淵に沈む柊斗の傍ら、群咲くノウゼンカズラの花の鮮やかな緋色が勢いよく揺れた。
「鳥さんかなぁ」
動じぬあさひがシャッターチャンスを求めて向けたカメラのレンズに、
「出口っ! どごだーっ!」
ほとんど涙声で喚く由貴が飛び込む。
「ゆきくんだ!」
思わずシャッターを切りながら、あさひが笑った。
「あれ?」
由貴は雪に溶け込む青空のような深い青したつり目を丸く瞠る。迷い込んだ森の中、知っている人の声を聞いて一心に駆けてきたけれど、あさひの隣に居るお兄さんは誰だろう。
横から現れた少年に警戒のかたちにしかめた青い瞳で見上げられて、柊斗は温和な笑みを浮かべてみせる。見たところ、あさひと知り合いらしい。顔見知り程度の自分と居るよりも、友達と一緒の方が彼女ももっと安心できるだろう。
「今日は」
会釈して名乗れば、少年は全身に漲らせた警戒感を一瞬のうちに解いた。ひとりで迷う不安もやはりあったのだろう、迷子仲間を見つけた嬉しさが顔いっぱいの笑顔になる。
「俺は双葉由貴! あさひの友達だぜ!」
「ゆきくんあのね、スミレのお兄さんはブリキのお兄さんだったんだよ」
由貴が自己紹介を終えるなり、あさひは大得意な顔で報告をする。
「あれぇ、ちょっとちがう?」
「スミレ? ブリキ?」
「あさひはドロシーなんだよ」
楽しいことを友達と早く一緒に楽しみたくて、話の順序を省いてマイペースに一生懸命伝えようとするあさひの言葉に、柊斗がそっと補足を入れる。
「あ、オズの魔法使いか!」
「うん、オズの魔法使い!」
得心して両手を打ち合わせる由貴の仕草が嬉しくて、あさひは何度も大きく頷く。思わずぴょんぴょん跳ねる。
あさひの動作につられて跳ねかけて、あさひよりも一歳分お兄さんな由貴はぐっと足を踏ん張る。みんなで迷子は迷子だけれど、ここは少しでも男らしくあらなければ。
(さっきちょっと情けない声聞かれたし)
由貴はドロシーなあさひと、ブリキの樵な菫色の瞳の柊斗を交互に見遣る。オズに例えるのなら、
「じゃ、俺はライオンだな!」
凛々しい声で宣言して、双葉は目覚めたライオンのように大きく伸びをする。
あさひと並んで黄色い煉瓦の道を元気よく歩き始める双葉のライオンのような茶色の髪を眺めて、柊斗は菫の瞳をちょっと細める。
(臆病なライオン、か)
昔読んだ物語のライオンは、威勢よく吠え立てながら、その実ひどく臆病者だった。本当は勇気が欲しいのだと蹲って言っていた。
あの臆病なライオンの姿と、一生懸命に背筋を伸ばそうと頑張る彼の姿はあまり重ならない。
(“勇気がない”ようには見えないけれど、)
それでも足りない、と思ってしまうのは、少年が少年であるが故だろうか。それとも、
(心があるからだろうか)
「ライオンさんはゆうかんなゆきくんにピッタリだねぇ!」
柊斗の穏かな視線に見守られて、由貴に隣を歩いてもらって、心強いあさひは元気よく歩く。
「かっこいいよな、ライオンって!」
あさひに褒められ、双葉は内心の嬉しさを出さぬようにしながら思わず胸を張る。
「知ってるか、あさひ」
「なぁにー?」
「物語のライオンは弱虫じゃないぜ!」
「そうなの?」
「だって大事な時にちゃんと勇気を出せただろ!」
だから、と由貴は真直ぐな視線をあさひへと向ける。ぎゅっと拳を作って力説する。
「かっこいいよな、ライオン!」
「うん、そうだねぇ」
「な、ブリキのにーちゃんもそう思うだろ?」
振り返って同意を求める無邪気で勇敢なライオンの少年に、ブリキの青年はそっと微笑む。
「ああ、そう思うよ」
「せっかくだからかかしさんもいたら楽しかったのにねぇ」
少年と青年の会話を耳にしながら、あさひはどこまでもマイペースに気になった植物たちにカメラを向ける。褪せない深紅の百日紅、背高のっぽの芭蕉、どこからか迷い込んだ季節はずれの揚羽蝶。
「あっ、この木の実、ハートの形でかわいいねぇ!」
百日紅の根元に小さな丸い葉を広げる植物の枝先、幾つも実るハート型の真っ赤な実を見つけて、あさひははしゃいだ声をあげる。見て見て、と傍らに立つ双葉の手を引く。背後の柊斗を振り返る。
「ブリキのお兄さんにピッタリ、かもー?」
物語のブリキの樵は、絹で出来たきれいな『心』を手に入れていた。
(あさひはまほうつかいじゃないから)
ブリキのお兄さんが望む『心』は魔法みたいに作ってあげられないけれど、
「一しょに写真、撮ってもいーい?」
写真を撮って、それを贈り物にすることはできる。
ドロシーに澄んだ瞳で見上げられて、ブリキ男はふうわり微笑む。
「お願いできるかな」
「俺がとるぜ!」
「ゆきくんが撮ってくれるの? ありがとうー!」
名乗りをあげるライオンの手を借りて、たくさんの真っ赤なハート型の木の実とドロシーと並んで写真をパシャリ。
「こっちの葉っぱはタイムだねぇ」
ハートツリーの茂みの脇、薄紅色の小さな花を咲かせるハーブを見つけて、あさひは今度は双葉に笑いかける。
「ゆうきが出てくるハーブだよってお母さんが言ってたよー」
あさひのカメラを大事に抱える双葉を手招きし、ハーブの小さな群生をふたりで挟んでしゃがみこむ。花束のようにたくさんの花を咲かせるタイムを指先でつつき、あさひはその指を由貴の鼻先に差し出す。
「いいにおいがするんだよー」
「そ、そうなのか?」
「ゆきくんも一しょに写真撮ろうよー」
何だかとても驚いた顔をする由貴の手からカメラを受け取り、あさひは柊斗に撮影をお願いする。
「いいかなぁ?」
「も、勿論!」
あさひに教えられた通りにレトロなカメラを構える柊斗の前、めいっぱいの笑顔を浮かべる少女の隣に並ぶ少年は、知らない感覚を覚えた胸の辺りを抑えてとても不思議そうな顔をしている。
ブリキのお兄さんにはハートの写真を、ライオンの友達には勇気の花束の写真を。現像できたらそれぞれに手渡そうと決めて、あさひは柊斗の手からカメラを受け取る。
「……それにしても出口、見つからないねぇ」
花と緑と土の匂いに満ちた温室をぐるり見回す。
もう随分と長く、黄色い煉瓦の道を歩いている気がする。
「絵本のサイゴはどうしてたかなぁ?」
学校の図書室で借りて読んだ本の内容を思い出そうと首を捻って、足元の自分の靴が目に入った。
「あ、クツのかかとを鳴らしてたっけ」
オズの国に降りてすぐに手に入れた銀の靴。今履いているのは銀の靴なんかじゃないけれど、物語みたいにコツコツコツと三度鳴らせばもしかしたらこのエメラルドの迷宮を飛び越えて帰られるだろうか。
「家が一番いい、と願うのも必要かもしれないね」
菫の瞳を優しげにきらめかせ、柊斗が付け足す。こうして三人でほのぼのと道を歩いて探索するのも楽しいけれど、ずっとここに居たいと思えば、この不思議な道はどんどん続いて行ってしまうのかもしれないから。
「うん」
ブリキのお兄さんを見上げ、ドロシーは頷く。
「やっぱりお家がいちばんいいよねぇ」
大切な呪文を唱えるようにそっと囁き、迷子のあさひは同じ迷子の柊斗と由貴の手をぎゅっと握る。
物語で読んだ迷子の女の子は、迷い込んだ魔法の国で出会ったブリキの樵やライオンとさよならしてお家に帰ったけれど、あさひは二人とはぐれないよう、二人の手を離さないよう、しっかり握る。
だって一緒に帰らなくちゃ。
靴の踵をコツコツコツ、三回鳴らす。
物語のように空を飛ぶことも砂漠を越えることもできなかったけれど、手を繋いで三人一緒に歩き出せば、黄色い煉瓦の道の先、視界覆う緑の向こうに一際明るい光が見えた。
「あ、出口だ!」
由貴がはしゃいだ声をあげる。
「行こうぜ二人とも」
手を繋いだ二人に声を掛けるなり、先立って駆け出そうと踏み出した足をふと止める。あさひとしっかり繋いだ自分の手を見下ろし、ちょっと迷って、迷ったことに照れた。振り解くようにあさひの手を離し、不思議に熱い頬を気付かれまいと駆け出す。
数歩も行かぬ間に、出入り口のカフェに続く蓮池と石橋が見え始める。
(冒険は大変だったけど)
結果的にあさひ達と会うことができたし、不思議な迷路に迷い込んだのも、そんなに悪くなかったかもしれない。
「こっちこっち! 行こうぜ!」
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日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年06月19日
参加申し込みの期限
2015年06月26日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年06月26日 11時00分
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