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沙羅双樹の幹に身を寄せる。黒土に落ちた白い花を一瞥もせずに踏んづけ、
三夜 架月
は黄昏の紅映した黒い瞳を凝らす。
重なる緑を越える一途な視線の先には、愛する従兄でありストーキングの対象である
三夜 霧人
。
(結局追いかけて来ちゃった)
煉瓦道の上に長身の背筋を伸ばし、眼鏡に隠した切れ長の黒い瞳にどこか哀しげな色浮かべて植物を眺める従兄の立ち姿に、架月は見惚れる。
熱っぽい視線を飽きることなくただひとりに注ぎ続けていて、霧人が視線巡らせて初めて彼の隣に立つもうひとりの姿に気付いた。
(らい兄?)
短く刈った髪はいやらしいほどの原色ピンク、瞳を隠すサングラスは人をからかうような黄、派手な柄シャツに暴力的な尖がり靴、軽い性格そのままのふざけた姿は、見紛うことなく従兄の
三夜 雷一
。
霧人と同じ日に生まれ、同じ容姿をしていながら同じには見えない雷一に架月は唇を尖らせる。
(二人が喧嘩しないか見張らなきゃ!)
定職にもつかずに遊び歩いている万年金欠な弟と、旧市街で開業医を営む優秀な兄は傍目にも恐ろしく仲が悪い。顔を合わせば言い争ってばかりいるのを、霧人のストーカーである架月はよく知っている。
でも、だからこそ、二人には早く和解して欲しい。
(それがきり兄の幸せなら僕の幸せにもなるしね)
夕陽の森に肩を並べて歩き始める従兄ふたりの瓜二つな背中を見つめ、架月は慣れた動作でストーキングを続行する。
(何話してるんだろ? 二人共見たことない顔してる……)
「僕が二人の力になれたらいいのに」
重なる葉のざわめきに紛らわせて知らず呟いてしまってから、慌てて唇を掌で押さえて不審げに眼を顰める。どうして今、助けになりたい人の内に大嫌いな雷一を含めてしまったのだろう。
(今のナシ!)
黒髪を振り乱し、架月は激しく首を横に振る。今はそんなことよりも、二人の会話に耳を傍立たせなくては。
「テメエか霧人」
双子の弟にいかにも気に食わぬげな瞳で睨め上げられ、低く舌打ちされ、霧人は眉を潜める。何故ここに、そう問いかけようとした唇を閉ざす。
この植物園のある星ヶ丘には、双子の弟の前妻と子の住まいがある。この時間に浮かない顔で星ヶ丘をうろついているということは、何があったか想像に難くない。
いつものように前妻と子に顔を見せに行き、いつものようにけんもほろろな対応をされたのだろう。となれば、己と違い感情を抑えぬ弟はカッときて強い言葉を投げつける。気の強い前妻が折れるとも思えず、口論の末に平手のひとつやふたつは喰らわされたのかもしれない。
(触れるべきじゃない、か)
生まれてから今までの付き合いの長さ故か、言いたいことは言わずとも伝わったか、雷一はサングラス越しにちらりと壮絶な流し目をくれて唇をへし曲げた。
「あーあ、なんでうまくいかねーかな」
心底詰まらなさそうに言い放ち、雷一は足を早め先に立つ。柄悪く地面を蹴っ飛ばす弟の背を、霧人は見遣る。憂さ晴らしのつもりで覗いた植物園で、嫌いな兄と出会ってしまえば、気分転換にもならないだろう。
雷一に悟られぬよう、そっと息を吐く。
弟と理由は違うものの、己が今ここにいる理由も、できれば触れて欲しくはない。
――花を供え、手を合わせて祈り、けれど星ヶ丘霊園に眠る患者が生き返るわけではない。
(医療は神の力じゃない)
分かってはいる。人の手で行う以上、全力を尽くしても限界はある。
(分かっている)
けれど、病みやつれた挙句、永遠に伏せらせた患者の瞼を思い起こす度、墓参りに行く度、自分の無力さを痛感する。
髪を染めようともカラーコンタクトを入れようとも己と同じ顔をした弟がどこか気遣わしげに振り返る。何かを、恐らくはここに居る理由を問いかけて、不機嫌そうに眼を逸らす。
こちらの憂鬱さが気になるけれど、だからと言って口に出すのは心配しているようで、
(胸糞悪ィ、と言ったところか)
「ンだテメエ、見てんじゃねぇよ」
「……なら俺の視界から出て行け」
「ああ出て行ってやる、今すぐ出てってやんよ」
憎まれ口を叩きながらひらひらと手を振って、大股に足を早めようとして、
「……んだ、ここ」
雷一は呻く。
ついさっきまでは踵を返せばすぐにでも出入り口のあるカフェに戻れそうだったのに、今はどれだけ歩いても温室の出口に辿り着けないほどに恐ろしく緑が深さを増している。
「迷ったか」
現状を確認しながらも一切乱れぬ兄の冷静な声に、雷一は余計に苛立つ。
「畜生ツイてねえ、厄日か今日は」
苛立ち紛れに手近な檸檬の樹の幹を殴りつける。揺れる柑橘の緑からふわり、虹色の燐粉を散らして揚羽蝶が舞い上がる。
「お……アゲハ蝶だ」
「……揚羽蝶、だな」
双子は同時に呟いて、重なった互いの声に一瞬顔を見合わせる。
「どっから迷いこんだんだか」
からかう色を帯びて弾む雷一の声に、霧人は頬を緩める。
一度飛び立った蝶はしばらく当所なくゆらゆらと舞うて後、白い花咲かせる果樹に羽を休めた。
知らず二人揃って視線で蝶を追い、二人で蝶が蜜を吸うて羽を揺らめかせる様を二人同じように顔和ませて見つめて、――二人で、幼かった頃の同じ夏の日を思い出す。
今と違って、昔はいつも二人だった。
揃いの虫取り網と虫籠を手に、蝉時雨の九夜山で昆虫採集に励んだ。夏休みの自由研究なんて口実で、ただただ二人で山を駆け回るのが楽しかった。それだけだった。
揚羽蝶が飛び立つ。
霧人が弾かれたように顔を上げる。兄が咄嗟に伸ばした指先が、あの日と同じように蝶を捕らえずに宙を掴む。
「っと」
あの日を思い出していて、雷一は思わず霧人を見る。その場で瞬く霧人と目が合い、気まずく視線を逸らしてピンク髪を引っ掻く。
あの夏の日、揚羽蝶を追いかけた霧人は崖から滑り落ちた。
視界から不意に兄の姿が消えた瞬間を、雷一は今も悪夢のように明晰に思い出せる。咄嗟に伸ばした両腕に兄を抱きしめ、庇う格好で崖を落ちたことも、兄を抱いた右肩を切り裂いた尖った岩の痛みも。
崖自体は然程高くは無かったが、己を庇ってあちこちから血を流す弟を見た途端、幼い霧人はパニックを起こした。
――ごめん、ごめん雷一、ごめんなさい、……
泣きじゃくって何度も謝り、自分の服を裂いて血を止めようとする兄に、
――へーきへーき、霧人ってば、おおげさー
怪我をした弟の方が笑って兄を励ました、あの夏の日。
崖の下で動けずに助けを待ち、暮れて行く空の下で二人抱き合ったことも、疲れ果ててまどろみながら見た満天の夏の星空も、降りしきる虫の声も。
あの日の何もかもを今も鮮明に覚えているのは、間違いなくあの時、医者になろうと決意したからだ。
(あの出来事が今でも俺の支えになってるからだ)
ひらひらと、ゆらゆらと、揚羽蝶が舞う。
あの日の誓いの通り医者になって、気付いたことがある。
(医者には知識や技術も必要だが、何より大事なのは患者の心に寄り添い、励まし、安心させてやること)
兄は弟を見る。
(お前は気付いてないだろうが、その才能は俺じゃなくてお前の方が持ってる)
どこまでも優しいが故に誰も傷付かせまいとおどけて、結局己だけを傷付かせてしまう弟。
(俺は……そんなお前に)
呟きかけて、今日幾度めかも知れず目が合った。
「ンだよ」
「……いや」
いつもと変わらぬ余裕綽々の笑みを見せる兄に、弟は不貞腐れてそっぽを向く。わざと逸らした視線を掠めて、あの日のように蝶が舞う。
知らず和む瞳で蝶を追いながら、雷一は右肩の肌に宿らせた蝶の刺青を思う。刺青に隠したあの日の傷痕を思う。
こんな傷痕ひとつを片割れの負い目としてしまうことが許せず、蝶の翅に誤魔化した。カッコいいだろ、とわざと兄に見せびらかして笑った。
(あの頃は良かった)
何の屈託も無く生まれる前から一緒だった片割れと笑いあっていられた。
「またあの頃みてーに戻れるなら、俺は……」
蝶の羽ばたきに誘われて零れた己の声に、雷一は頬を歪める。己と同じ顔の兄を睨むように見つめ、唇を噛む。
「辛気臭くなっちまった」
嗤う。
「忘れろ」
掌を蝶じみてひらひらと振り、振り返ることを拒んで再び先に歩き出そうとするその背に、
「ふえぇ……」
聞いたことのある泣き声を聞いて、雷一は足を止める。躊躇わず振り返って眼にしたのは、少し離れた葉陰に立ち尽くして端整な頬を涙に歪める従弟の姿。
「かづきちじゃねーか、テメエも迷子か」
「架月……? お前も来ていたのか」
「カフェにぬいぐるみ置いてきちゃったから、取りに行かなくちゃって、……でも、戻れなくて、もしかして迷子かもって、……」
二人に説明しながら、架月の瞳に大粒の涙が滲み出す。涙に詰まった息を吐き出して、そうしてしまうともう止まらなかった。
「きり兄らい兄ー!」
近い位置に立っていた霧人にしがみつく。手を伸ばして少し離れて立つ雷一の腕を掴む。うっかり二人に泣きついてしまってから、
(やば、……尾行してたことバレてないよね?)
霧人の胸に顔を埋めたまま、架月は細い身体を強張らせる。
「かづきち泣いてんの?」
「べ、別に泣いてないし!」
いつも通りにからかいの声を掛けて来る雷一に顔を顰めて見せつつ、架月は内心で安堵する。尾行は気取られてなさそうだ。
「んじゃ、帰るか」
架月の涙と己の憂いをケラケラと笑い飛ばし、雷一は叔父の子の手を力強く取る。
「僕子供じゃないのにー!」
「こうすりゃ迷子になんねーだろ」
(かっこ悪ィとこ見せらんねー)
それは多分、兄も同じだろう。
「そうだな、いつまでも迷っているわけにはいかない」
不安そうな表情を見せる従弟の頭を撫でて励まし、霧人は胸の央に居座る憂いを心の隅に追い遣る。架月を真中に三人で手を繋ぎ、出口を目指して歩き始める。
「こうしてると親子みてーだな」
道案内じみて先へ先へと舞い飛ぶ揚羽蝶を眺め、雷一は微笑む。
「俺様ちゃんがパパで霧人がママ、架月が子供、なんちって」
(……昔はよくこーやって手を繋いだっけ)
幼い頃は兄と。父親になってからは幼い子供と。
けれど長じて兄とは反目ばかり。年頃になった子供には嫌われるばかり。
(幸せな頃はもう戻らねえ……か)
「なんで俺がママなんだよ……」
ぼやきながらも悪い気分はせず、霧人は唇を緩める。
(そうだ)
二人を見ていて思い出した。
家族の皆が幸せを掴むまで支え、見届けてやりたい。それが己の生きる目的なのだと、――日々に追われ、大切なことを忘れていた。
(それまでは俺も弱気になってる暇はないな)
雷一と霧人に繋がれた手を見つめ、それぞれの思いに沈む二人を交互に見上げ、架月は二人の手を強く握る。
「わかった!」
殊更にはしゃいだ声を上げる。ふたりの注目を集めてから、道すがらに見た置物や、今歩いている黄色い煉瓦の道について話す。
「きっとオズの魔法使いなんだよ! だからね、『家が一番いい』って唱えて踵鳴らせばいいんだ!」
「昔、子供に絵本読んでやったな」
「手を取り合い歩くことで道は切り開かれる、……オズの魔法使いのそんな教訓の話だったな」
霧人そっくりに睫毛を伏せる雷一の手と、雷一そっくりに明るく笑う霧人の手を、架月は離さないようぎゅっと握り締める。
「それじゃあ、行くよ!」
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阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年06月19日
参加申し込みの期限
2015年06月26日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年06月26日 11時00分
参加キャラクター一覧
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