FAINYAL FANTASY｜リアクション

FAINYAL FANTASY

〔episode.2〕〔水〕

【ニギリヘイのアメイジングアドベンチャー】

　握利平は目の前で起こった現象に呆然としていた。
「……なんだこりゃ？」
　利平は気がつけば知らない場所にいた。
　目の前には大きな堀に囲まれた無駄に荘厳な聖堂らしき建物があった。
　とすれば、これもまた神魂の仕業だろう。
「要するにここを攻略して、魔王っぽいアレを倒せばクリアなんだろ」
　利平は状況を正しく理解し、跳ね橋を渡って堀を越えて聖堂へ入る。
　彼はいつになく急いでいた。というのも、
「よっしゃ、さっさと終わらせてオニギリ食うぞ！」
　利平はおにぎりを食べる直前で、こちらに飛ばされていたのだった。

　かくして握利平の愉快な冒険が始まる。
　なお、彼のこの世界における職業（ジョブ）は『光』の漁師である模様。

【ミヤマツリチユのトリックオアトリート】

　宮祀智瑜も気がつけば異世界の水の聖堂の入口にやってきていた。

「また神魂の仕業ですか……。それにしても何でこの格好なんでしょう？　ハロウィンの季節だから？」
　智瑜は胸元の開いた大胆なドレスの布地をひっぱりながら呆れたように呟く。まったく神魂というのは何を考えているのかよくわからない。
「とりあえずあの聖堂（？）の中に入ればいいみたいですね」
　智瑜はそう呟くと、衣装とセットでやってきた浮遊式のカボチャのクッションに腰かけてふわふわと移動を開始した。
「それにしても大きな聖堂……。いったい中にいるのはどんな人なんでしょう？」

　そうして『木』属性の魔法使い、宮祀智瑜の不思議な旅が始まる。

【ヤシキノコズエのアバタフライドリーム】

　屋敷野梢も水の聖堂付近に召喚されていた。

「また神魂の仕業なんですー？　でも、こういうダンジョンって楽しいですよね！」
　梢は神魂に巻き込まれた現状を素直に楽しんでいるようだった。
　何事も難しければ難しいほどに燃える性格の彼女にとって、今回の現象もまさしく一つのゲームのようなものだったのかもしれない。
「攻略、燃えてきますよー！」
　梢はスキル《妖精の加護》で背中から生やした蝶の翅をはためかせて、宙を舞った。
　そのまま堀を楽々と飛び越えて、聖堂内部へ進入していく。

　かくて、『木』属性の妖精、屋敷野梢の胡蝶の夢のごとき物語が始まる。