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終焉狂想曲 NO.222
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引き戸の向こうから雪崩れ込むなまぐさい血臭にも、
日向 透
は眉一つ動かさない。
「おやおや」
目前でナニカに攫われ死んだ居酒屋の女将や店員には最早関心も示さず、壁のハンガーに吊り下がって揺れるマフラーとコートを外し、身につける。
『逃げ場はありません。しかし、できれば、できれば、どうぞ生き伸びて――』
テレビの画面内、最期の演説を続ける大統領を醒めた瞳で眺める。
「世界の終わり、ですか」
白い頬に歪んだ笑みを浮かべて呟く。
家屋の屋根にナニカが墜ちる。屋根が破れたか、轟音と共に天井が悲鳴をあげる。ここは間もなく潰れる。
(さて、俺はどうしましょうかね)
先程までの狂乱はどこへやら、店の外は今は不気味に静まり返っている。遠く響くナニカの咆哮と、海鳴りにも似た爆発音、それに続く燃え盛り爆ぜる炎の音。
(さすがにあんな化け物にぺろりと頂かれるのは勘弁ですね)
小さな息をひとつ吐き出す。
擦れ違うのがやっとの狭い店内を抜け、戸口から外を覗き見る。血の色した光に染まる周囲に、女将や店員を喰らったナニカの姿は見えない。
居酒屋の屋根の上、ナニカが高笑いする。店内に身を潜め、警戒の視線を伸ばす透には気付かず、力強い羽音を響かせ赤い空に飛び上がる。ひび割れた地面から空へ巻き上がる有毒そうな赤い煙を黒い翼に纏わせ、楽しげに何処かへと去る。
アスファルトに散らばる人体の残骸と夥しい血痕、踏み潰された家々、石塀に激突し黒煙をあげて燃え続ける車、――壊れた街の全てに降り注ぐ、赤。
店に入るまではいつもと何等変わりのなかった町並みが、今は見る影もない。
当たり前の日常が終わった世界を、歩く。
(不思議なものだ)
世界が終わるというのに、この心は自分でもおかしいと感じるほどに凪いでいる。
(すべてが終わるというのに)
何処かから響く誰かの断末魔も、己を動かすに至らない。例え、次に食われるのが己かもしれぬと考えても、心は冷たく静まったまま。
此処に至っても凍り付いて砕けぬ己の心を嘲笑う。ならば、と考える。己は何処で終わる?
靴先が地面に溜まった誰かの鮮血を踏む。こんなところで化物に食われ、遺体も残さず無惨に死んだ、誰か。
(どうせなら世界が終わる瞬間を見てみたい)
そう思った途端、海を見晴るかす岬の景色が思い浮かんだ。終わりを迎えるにはうってつけの景色が見られるに違いない。
知らず吸い込んだ黒煙に小さく噎せながら、透は崩壊する世界を辿る。
夜に響き渡る騒音に驚き、固く閉めたカーテンを開いて見れば、赤い空に吼えて舞い、腐った鱗を撒き散らす竜の姿。
(これ、なんなのかしら)
うなじで揃えた薄茶色の髪を揺らし、
塔尾 松生
は息を詰まらせる。
夜の学校の教室にいることよりも、窓の外にある現実に思考が追いつけない。
日常では見たことがないほどに毒々しく紅い空に、ひび割れたアスファルトから黒と赤の煙が吹き上がる。煙の中から生まれた粘性のナニカが地面に落ちる。見た目よりも恐ろしく重いらしいそれが、道路に停まった車をありえぬかたちにひしゃげさせる。
「あはは、」
あり得ぬ事態を笑い飛ばそうとして、
「……冗談でしょう?」
出来なかった。膝が笑い始める。カーテンに縋っても立って居られず、その場に座り込む。冷たい床にへたりこんだ途端、ずしん、と突き上げるように床が震えた。
瞼を閉ざすことも出来ずに呆然と瞠る黒い瞳の中、世界が壊れてゆく。
(昨日まで普通だったじゃない)
どうして、と呟く唇が震えた。別の教室に残って居た誰かが紅い世界に飛び出す。空から轟音巻いて腐った竜が降る。誰かをその顎に咥えて飛び去る。悲鳴が遠退いて、消える。
ああ、と掠れた声が洩れる。
(もうこれでおしまいなのかしら)
まだ夢を叶えてさえいないのに。
震える膝を立て、机の上に散らかしたノートに指を掛ける。震えて思うように動かぬ指のせいで、ノートが床に散乱する。開いたページには、シューティングゲームを想定して描いた、幾つものデザイン画。
夢を描いていた。
(あたしがデザインを担当したゲームがでて、大ヒットして、)
――そんな不安定な夢なんて止めろ
そう叱りつけた兄を見返してやりたかった。
紅い空を見上げる。空に蠢く得体の知れぬ化物たちを見つめる。
恐怖に冷えていく体に、激しく打つ心臓に、詰めていた息を吐き出す。
(……兄貴)
こんな世界で、兄はまだ生きているだろうか。
(あたし、まだ兄貴にもちゃんと話して謝ってなかった)
確かに自分の夢を巡って大喧嘩をした。顔も見たくないと言い放って、もう随分と実家に帰っていない。
大喧嘩したときの兄の顔が脳裏を掠める。
(知ってる)
兄が夢を諦めろと言ったその心中を。
兄は、亡くなった父の代わりに家族を守ろうとしただけ。大事にしようと必死になっているだけ。分からない訳がない。
(大事な家族だもん)
窓の外、校庭を割って現れた大百足が無数の固い足で地面を踏み砕く。樹木を踏み倒し、学校の壁を叩き壊す。
「お母さん」
恐ろしげな音に、知らず母を呼んで、思わず顔を覆う。母にも、お礼を言っていない。
この学校に行きたいと言ったときも、笑って背中を押してくれた。
――夢を大事にしなさい
何時でも笑顔のひとだった。美人なのに、自分のものより娘の洋服を買うのを楽しみにしていた。
(あたし、二人にまだ言いたい事があるのに……)
母を、兄を、大事な家族を想う。どうにかして伝えられないかと泣き出しそうな視線を巡らせて、床の上に散らばったノートに紛れた携帯電話を見つけた。
メールなら、届くかもしれない。
震えの止まらない指を必死に伸ばし、掴み取る。外を徘徊する恐いものたちに見つからぬよう、壁際の机の下に身を潜める。
紅い光に染まる空っぽの教室にうずくまる。
崩壊する世界にあって、きっと回線も混み合っている。もしかすると誰にも届かないかもしれない。間に合わないかもしれない。それでも、伝えたかった。
大事な家族へ。
大切な友人へ。
素直になれず、伝えられなかった大好きな気持ちをメールに託す。最後くらいは自分の気持ちに素直になりたかった。
時折耳に届く恐ろしげな咆哮や悲鳴に身を固めながら、必死になって家族や友人にメールを送信して後、松生は瞳を伏せる。祈るように携帯を抱きしめる。
(最後になるなら)
メール画面を開く。大好きなあの人のメールアドレスを確かめ、文字を打ち込む。
短い文面を書き終え、迷う暇もなく送信ボタンを押して、松生は瞳をもたげた。窓の外の紅い空を見つめる。化物が飛びかう空。人を喰らうものが這いずり回る地面。
届かないかもしれない。
間に合わないかもしれない。
そう思った途端、たまらなくなった。真直ぐに教室を飛び出す。
(一目会いたい)
それが今生の別れとなろうとも。
廊下に出る。どこからか雪崩寄せる血腥い風にこみあげる吐き気をこらえ、非常出口から外に駆け出す。ナニカに砕かれ散乱する校舎の壁や屋根の残骸を踏み越え、道路を走る。
よく知るはずの学校の通路がまるで見知らぬ道のように見えて、松生は息を乱す。
彼が何処に居るのかも分からなかった。
出会えるはずもないと心の底で分かっていた。
それでも、――それでも。
車の激突を受けた生垣の角を曲がる。
待ち構えて居たのは、大好きなあの人ではなく死神の大鎌振りかぶる魔人。哄笑と同時、血色に滑る刃が瞬きの躊躇もなく振り下ろされる。
刃が腹を貫く。痛みよりも衝撃に息が止まる。片手に握り締めた携帯電話が地面に落ちる。
「あ、……」
唇から零れた声が、喉に湧き上がる熱い血に濁る。急激に失われる血に視界が霞む。
瞳の光失う、その間際。
笑い狂う死神の背後に、あの人を見た。
(日向、さん……)
(……塔尾さん)
知人の死の瞬間を眼にしても、最期のまなざしを受け止めても、けれど透の心は凪いだまま。
松生の遺体を投げ捨て、死神が跳ねる。目前の死に束の間の充足を得、黒衣の下から黒い翼を生やして紅い空に飛び去る。
(死んだか)
此処に来るまでに道端で拾った鉄パイプを手に、ひび割れたアスファルトに伏せて動かぬ少女の体を冷めた目で見下ろす。少女に触れもせず先を急ごうとして、コートのポケットで携帯電話が震えた。
深翠の瞳に訝しげな色浮かべ取り出せば、光る画面が記してメールの着信。
送り主は、足元に横たわり息絶えた少女。
『日向さんへ』
メールの題名には、紛うことなき己の名。
『貴方に憧れていました』
少女から流れ出した血が靴先に触れるのも構わず、透は携帯画面を見つめる。彼女は何を伝えようとしていた?
『貴方の話す声が好きでした。優しい笑顔が好きでした。』
一緒に甘いものを食べるのが好きでした、とメールは続く。本当の貴方に会ってみたかった、と。
『好きです』
少女の最期の言葉に、透は失笑する。蔑む色の瞳で足元の死体を見つめる。掌の中の携帯画面を見る。終末の騒乱に穢されるこの世界で、こんな状況にあって、彼女はこんなメールを打ったのか。最後の心残りをメールに託したのか。
(俺が好きなのか)
「馬鹿馬鹿しい」
吐き捨てる。事切れた少女を罵る。愚かだと。何故この状況にあってこんなものをと。
何故こんな自分に、と。
けれど。心底愚かしいと思っているはずなのに、その心が不思議とざわめいている。
少女の想いなどという下らぬものに心を揺らがせる己に苛立ち、視界に光をちらつかせる携帯電話を仕舞う。少女の遺体を打ち捨て、背を向ける。足早にその場を逃れる。
(――岬に)
己の死に場所は、そう遠くない。
不気味な紫に水膨れた草木に埋まる岬の突端に立つ。遥かな水平線は鉄錆の色、数歩先で落ち込む崖に打ち寄せる波は濁った虹色を渦巻かせている。
あり得ぬ海の色に、うっすらと笑う。
腕時計を確かめる。そろそろ、世界が終わる。
胸を焼く奇妙な熱と痛みに吐き出した息に混じって、大量の血。そう言えば、此処に至るまでに地面を割って噴き出す黒煙を幾許か吸った。
己が終わるが先か、世界が終わるが先か。死の淵に立って、最後の一日を振り返る。
(世界は醜いのか、あるいは美しいのか)
ふと胸にこみあげる思いを、くだらないと切り捨てる。ポケットに隠した携帯電話を、少女が寄せてくれた想いを、握り締める。
血の気の失せた瞼を閉ざす。
そうして、――
(これで、おしまい?)
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阿瀬春
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
冒険
SF・ファンタジー
バトル
定員
15人
参加キャラクター数
16人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年06月06日
参加申し込みの期限
2015年06月13日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年06月13日 11時00分
参加キャラクター一覧
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