【メニーパンプキン・ドラッギング、メニーニンジャ・ドランキング】

　町役場前の通りまで進んだアニマルピュアラ一行。
　そのメンバーの詳細が、これまた奇天烈であった。

　らぶりぃおったー（志波 武道）　特徴：ブーメランパンツ
　らぶりぃばにぃ（行梨 謡）　特徴：ウサギさんへの愛
　マジカルアイドル☆ゆうにゃん（千明 優輝）　特徴：メイド服
　黒き魔法少女ノワール（滝原 レオン）　特徴：黒ゴスロリ
　チョッパーラビット（檜扇 舞華）　特徴：ウサギサンタ

　全く統一感がない。
　だが全員、魔法少女である。
　１人だけサンタが混じってるが全員が魔法少女なのだ。
　５名は町役場へ向かう道中で合流を果たした。
「サンタのウサギさん……イイゾ～イイゾ～」
　ばにぃは舞華の姿にテンションがグングン上がっている。
「これだけ味方がいれば、クイーンもニンジャも負けないわ！」
　おったーがブーメランパンツのゴムひものズレを直しながら言った。
「魔法で衣服の破れが直せるのは便利だよね……」
　アニマルピュアラは、謎の四足変態（尾鎌 蛇那伊）の攻撃でコスチュームをビリビリと破かれてしまったが、ノワールの裁縫魔法で完全復元を遂げた。
　普段からぬいぐるみ作りが得意なノワールの器用さが活きたのだ。
「ほう、経験がいきたな。あとでジュースをおごってやるじぇ！」
　舞華は謙虚にノワールをたたえた。
「べ、別に、役だとうとかそんなんじゃねぇし？　破れた服のまま戦うなんて誰だって嫌だろ？」
　そして謎のツンデレを発揮するノワールである。
　和やかな雰囲気のまま、町役場に辿り着けると思ったその時！
「カボウゥ！」
「カボボッ！」
「カーボゥ！」
　カボチャたちが隊列を組んで押し寄せてくるではないか！
　これはジャージニンジャの新江 天懸の戦術『魚鱗の陣』だ！
　突撃に特化した陣形で、魔法少女を一網打尽にしようというのだ。
　道路を覆い尽くすカボチャの洪水に、魔法少女たちは否応なく臨戦態勢に入った。
「か、数が多い！　もう、これでもくらえー！」
　ゆうにゃんは及び腰になりながらも、ショルダーキーボードでカボチャを手当たり次第カチ割っていた。
　まるでパンクロッカーだ。
「ええい、キリがない！　みんなまとめて燃えちゃえ！」
　ゆうにゃんがショルダーキーボードをかき鳴らせば、楽器からドラゴンブレスめいた火炎放射がカボチャたちをなぎ払った！
「カボチャのタルトがいくらでも作れるね！」
　そしてお菓子への再利用を忘れない。
　実際エコロジー。
　これに舞華が続く。
　彼女の魔法は『悪戯衣装箱（ベストドレッサー）』！
　要するに、対象にコスプレを強要させるためならばどんな衣装も召喚できるのだ。
　いつの間にか舞華の衣装がウサギサンタからセーラー服へチェンジ！
「搦め手以外の魔法も習得済みですよ！　誰が衣装以外は召喚できないと言った？」
　舞華の手には、分隊支援火器めいたマジックアイテムが召喚された。
「菓子がほしいか？　ならばくれてやるぜ！」
　弾薬の代わりに飴玉を装填！
「くらえっ！　マジカル☆5.56mm機関銃！」
　じゃんじゃんバリバリ飴玉雨霰とカボチャたちを無慈悲に玉を浴びせていく舞華。
「大丈夫！　死にはしない！　けど結構痛いぞー！」
　ダメ押しとばかりに舞華は空中からパイナップルを召喚してカボチャたちへ投擲した。
　すると突然、パイナップルが紅蓮の炎とともに爆発！
　見た目に騙されたカボチャたちを一網打尽にしてしまう。
「いぇーい！　マジカル☆パイナッポゥの威力はすごいですね！」
　パイナップルが爆発した、おかしいと思いませんか？
　しかし、マジカルと名が付けば許されてしまうのだ。
　そういう風潮なのだ。
　つまりパイナップル爆弾……ただの手榴弾だった。
　ノワールも空間から剣を両手で掴むと、双刀を血気盛んに振り乱した。
「くそ！　どうりで道中のカボチャどもが少ないはずだぜ！」
　ノワールは迷う。
　彼女には必殺技がある。
　それこそ敵味方問わず辺り一帯を更地にできるほどの威力の魔法だ。
「ああもう！　こうなったら！」
　ノワールが魔力を開放しようとした、その時である。
「かもんっ♪　バニー！（性欲）」
　ばにぃの召喚獣がノワールを押し潰してしまった。
「グワーッ！？」
　断末魔とともにノワールはアスファルトの舗装にめりこんだ。
「ん？　なんか叫び声が聞こえたようなー？　聞かなかったことにしよう」
　ばにぃは“なかったこと”にした。
「そんなことよりも、全長５ｍのビッグなうさぎさんきゃわわっ……！」
　自分で呼び出した召喚ウサギにばにぃはダイブ！
　そのモッフモフの体毛を堪能する。
「ふぅ……、ところで、える知ってるか、なぜうさぎさんが性の象徴とされているか？」
　いつもはやる気のない雰囲気のばにぃの顔つきが、急に凛々しく引き締まる。
　うさぎのことになると、ばにぃは非常に真面目になるのかもしれない。
「古代ゲルマン人の豊穣の女神の化身がうさぎさんなのだ。つまり、うさぎさん自身が神と同一という神聖な“もふもふ”なんだ。そしてうさぎさん自身が繁殖力が非常に強く、生物学者の中には『年中発情しているアニマルは人間とうさぎさんくらいだ』と言わしめるほどらしいぞ？　そもそも、うさぎさんがこんなに性欲が強いのは野生では天敵が多いからなんだぞ。みんな、うさぎさんが食べちゃいたいほど好きなんだってことだよね。そんなわけで、うさぎさんの性欲を甘く見ないほうがいい……。時にうさぎさんは、生物と無機物の垣根を越えて欲情するからな……！」
　召喚されたビッグうさぎさん（♂）の目つきが情熱的に色めく……気がした。
「よーし暴れちゃいなさーい（意味深）」
　ばにぃの掛け声を合図に、ビッグうさぎさんは全速前進！
　途中、カボチャたちをバリバリと噛み砕きながら、向かうは……町役場の建物！
　そしてうさぎさんは建物にしがみつくと、小刻みに振動を初めて……。
「そんなことでお前に満足させてたまるか！」
　飛来した魔砲少女カイリがうさぎさんを砲撃！
　巻き添えになった町役場もろともうさぎさんは爆発したのだった。
「まさか町役場にダイレクトアタックするなんて……。どうして同種族と合体しないんだ……」
　呆れたカイリは燃える町役場を見下ろしていた。
「ちょ、えー！？　モエテルー！！　ダイレクトアタックはカイリちゃんのほうじゃな～い！？」
　慌てるおったぁだが、もはやマジカルネコジマ空間内では何でもアリなので、特に事態を収拾しようと思わないのであった。
「それよりも大量のカボチャさんたちをなんとかしなくっちゃ☆」
　おったぁも召喚術を行使すべく、内なる魔力を開放！
　セクハラされた甲斐があった！
「愛の！　魅惑の！　カワウソ大行進！！」
　杖から光線が放たれると、そこから３匹のカワウソたちが現れた。

　＼コツメカワウソだピキュー！／＼ニホンカワウソだキュー！／＼オオカワウソだアウォア！／

　３匹は勢いよく飛び出すと、カボチャたちを発達した小臼歯で噛み砕いていく！
「あぁ、この光景、私が幸せ…ッ！」
　カワウソ大好きなおったぁにとっては天国の光景。
　しかし、実際は荒々しくカボチャを噛み砕いて吐き出す地獄のような所業が行われていた。
「実際のカワウソは噛みついたりします、ましてやオオカワウソはワニも襲うから絶対に近づいちゃだめだぞ！　らぶりぃおったーとのおやくそくッ♪」
　謎のカメラ目線。
　おったぁはどこまでもあざとかった。