授業風景～倫理の時間の場合～｜リアクション

授業風景～倫理の時間の場合～

＜李小麗の場合＞
『人を殺してはならないと考える理由』
　→もしかしたらという可能性をも断ち切ってしまうから

『その理由を端的に表した言葉』
　→【断絶】

　李はその小柄な体で精一杯の主張を行った。
「まずしゃおりーはずっと……、どんな人にも繋がりがあって、その繋がりを自分の勝手な思い込みで断つ事をしたらいけないと、そう思い続けてるから、人の命を奪う事に反対なのだ」
　李は思い返していた。
　彼女が不殺を誓うきっかけになった、『憤怒』の事件。
「人の心には、色んな形のものがたくさん詰まってて、命を奪ったり奪われたりした時、色んな人の中から溢れだすのだ。そのほとんどが……」
　――憤怒に染まって、凶行に走った少年の顔が、李の脳裏にちらつく。
「悲しい、会いたい、会えない、憎い、恨んでやる、とか、聞いてるだけで、辛くて苦しい気持ちばかりだから……、そんな事が起こらないように、しゃおりーはこれからも必死に止めたいのだ」
　それは彼女の決意表明。
　少年が社会的に裁かれることになった黒幕に、先日、李は直接対面した。
　絶対にあの者たちのいいようにフツウを蹂躙させてはならないと、不殺を以て李は立ち向かうと固く心に決めた。
「色々言ったけれど、結局しゃおりーは……相手を理解しようと頑張って、諦めずに接してきた人の目の前で命が消えたり、繋がりが途絶えるのを見たから、余計にそう思ってしまうのだと思うのだ……」
　でも、と李は最後に一言だけ付け加えた。
「絶対に、しゃおりーは負けないのだ、屈しないのだ！」

　後日、李のもとに手紙が届いた。
　事件を起こした少年へ宛てた手紙の返事が帰ってきたのだ。
　李は中の文を検めると、遠い空を眺めざるを得なかった。

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