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笑顔になるまで
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追い風が頬を撫でて過ぎる。
緩く編んだ長い髪の端をからかうように揺らされて、
早坂 恩
は足を止めた。深い夜の色した瞳を鮮やかな茜の空へともたげる。
風と共に頬をくすぐる髪を掻きあげて、ふと、左の耳につけた冷たいピアスが指先に触れた。見なくとも分かる、漆黒のオニキスがはまったラウンドフレームピアス。
ピアスに指先を触れさせながら、夕日の色に染まる校舎を瞳いっぱいに映す。
(ねえ、見える?)
心に呼びかけるのは、今よりもずっと、どうしようもなく幼かった頃に出会った懐かしいあの人。
(貴方は――)
思い出すのは、初めて出会った日に見せてくれた穏かな、けれどどこか寂しげな笑顔。
体が酷く重たかった。震える瞼を開いて、見知らぬ白い天井を見た。
左の腕に嫌な違和感を感じて、腕を持ち上げる。細い腕に繋がる点滴の管を目にして、ああここは病院なのだと気がついた。
心臓に負担をかけ過ぎたのだとすぐに思い当たる。
物心もつかぬ小さな頃に患っていた心臓は、治療はしても、他の人と同じ体の頑強さまでは得られなかった。
――丈夫に産んであげられなくてごめんね
――ごめんな、辛いだろう
両親からの詫びの言葉が嫌で、反発するあまりに叔父の居る寝子島に逃げ込んだ。自分は大丈夫だと言い聞かせるように、両親のもとでは禁じられていた走ることにも、泳ぐことにも、手当たり次第に挑戦した。
そうして、
(このざま、ね)
体調を崩して倒れた。
「おはよう」
傍らに聞き慣れぬ男性の声を耳にして、顔を横に向ける。
「おはよう、ございます」
窓辺のベッドの上に座って本を開く、自分よりも少しだけ年上の男性に向けて嗄れた声で挨拶をする。
長く入院しているのであろう、そうして自分よりも重い病気を抱えているであろう病みやつれた顔で、けれど彼はひどく優しく、悲しく、微笑んだ。
病に疲れ果てて、それでも他人に微笑みかけることの出来る彼が、とても立派に見えた。
暫くは治療とリハビリが必要と医者から聞かされたのはそのすぐ後。
ベッドが隣同士ということもあって、色々な話をした。社会人である彼は、学生には知りえない話を沢山知っていた。
入院して数ヶ月も経たぬうち、兄弟のように心を通わせた。
――そんな、ある日。
医師や看護士達が忙しげに廊下を駆ける足音を聞く眠れない夜、隣のベッドに不安げな溜息を聞いた。
「……誰だろう」
「誰でしょうね」
その日も、いつかと同じように誰かの命の終わりを一緒に感じ取った。口に出さずとも次の番はもしかしたらと過ぎる不安を共有した。
「正直、怖くてね」
「……私も、怖い」
彼は月明かりに苦く弱く笑い、ベッドに身を起こした。窓の外の月を焦がれるように見上げ、
「高校を、途中でやめてしまってね」
小さく零す。いつも身につけていたピアスを両耳から外し、痩せた拳に包んで差し出す。
「君はきっと先に退院する」
祈るように言う彼の手から、月に淡く光る漆黒の石のはまったピアスを受け取ろうとして躊躇う。
「これを身につけて学校に通って欲しい」
せめて高校を卒業するまでの生きる意味を、理由をくれようとする彼が、その日を前に遠くへ行ってしまうのでは、そんな予感が胸を過ぎって、
「頼むよ」
けれど、彼の願いを断れずに頷いた。彼の願いごとピアスを受け取った。
結局、病院から先に去ったのは彼だった。
彼の居なくなった窓際のベッドをいつまでも眺めて居たのを覚えている。
青空が綺麗な日だった。風が気持ちのいい日だった。
ずっと隣に居た彼の姿が見えなくなってしまったことが悲しくて、二度と彼の声が聞けないことが辛くて、そうして、近いうちに自分も彼のようにこの世界から去ってしまわなくてはならないことが恐ろしく怖くて、泣いた。
止まらない涙に濡れる握り拳に、チクリ、熱を帯びた痛み。
(……?)
涙に滲む瞳を拳で擦り、その拳を開いてみれば、掌の中には彼がくれたオニキスのピアス。
何もかもを包み込んで漆黒に優しく輝く石に、彼の掌のぬくもりを思い出した。遺されたピアスを見つめるうちに、何度も交わした笑顔の嬉しさを、交わした約束を思い出した。
彼の願いを叶えようと思った。
左の耳にピアス穴を開けたのは、彼が亡くなった次の日。無造作に耳朶を貫いた針の痛みに、いつか死ぬ自分の体が、けれど今は間違いなく生きていることを思い知らせてくれた。
幼い気持ちのままに開けたピアス穴は、暫くの間膿んで熱を持った。看護士にきつく叱責されもしたけれど、傷の痛みを感じなくなる頃には彼を失った悲しみや死の恐怖に涙することも少なくなっていた。再び笑うことが出来るようになっていた。
茜空を仰ぐ。あの人が遺したピアスに触れる。
一対だったピアスの片割れは、病院を退院してすぐに彼の墓標の前に供えた。
(――懐かしい貴方は今、私が笑っているのを見ていますか?)
相変わらず体は弱いけれど、あの頃よりも少しは大きくなった。
あの頃のように頑なな幼さで無茶をすることもない。
(でも、)
ピアスに誓う。生きる力を分けてくれた彼に誓って、力強く微笑む。
(精一杯出来る事をして生きていくわ)
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年04月04日
参加申し込みの期限
2015年04月11日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年04月11日 11時00分
参加キャラクター一覧
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