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笑顔になるまで
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秋の夜にぽっかりと浮かぶ月を仰ぎ、
深倉 理紗子
は胸の底に押し殺し続けていた息を吐き出す。微かに白い息が夜空に流れて消えた。
(連絡がありませんように)
勤務する病院の職員用扉を祈る思いで振り返ろうとして、やめる。白い頬に無表情の仮面を貼り付けたまま、逃げる足取りで病院の前を離れる。
泣き出す寸前に痛む胸を細い指先で押さえつける。涙に滲む視界を瞼をきつく閉ざして堪える。
(大丈夫だいじょうぶ)
呪文のように、呪いのように、心に繰り返す。
青空の屋上で心が決壊してしまうのを必死の想いで堪えて後、午後の業務も表面を取り繕ってどうにか退勤まで切り抜けた。
(大丈夫よ、このまま行ける)
自分に言い聞かせる。背中に触れる病院の外灯の光が追い縋り掴み掛かる患者の手のように思えて、それでもその腕を振り解けず、自身の心ばかりに重荷を負わせながら、病院とは目と鼻の先の一人暮らしの自宅に重い足を向ける。
夜を彷徨う気にはなれなかった。例えば患者に怒鳴りつけられた時のように、見知らぬ誰かとも気軽に話せる馴染みの焼き鳥屋で酒に逃げる気にもなれなかった。うつむきがちな視野に入る、夜遅いこんな時間にでも照明を眩しく点けて開いているどの店にも。
唇を噛む。眉間に深い皺を刻んで自宅マンションと病院を隔てる橋を渡る。明々と光の灯る通路を通り、自宅ドアの前に立つ。重い息と共に鍵を開き、一人暮らしの真っ暗な部屋に無言で帰る。
機械的な動作で靴を脱ぎ捨て、寝起きに乱したままのベッドにバッグを放り出す。ここ最近は開いた試しもないカーテンの隙間から月光が落ちる冷たい床に服を脱ぎ散らかし、バスルームに向かう。
痛む胸に爪を立てる。何も考えない振りをして、バスタブに湯を溜める。シャワーの栓を捻ねる。流れ出す冷たい水をぼんやりと頭に受ける。華奢な裸身を伝う水が熱い湯になって、
(どうして)
ふと思った途端、張り詰めさせていたものが緩んだ。
「ッ!」
きつく締めて閉ざしていた感情の蓋が弾け飛ぶ。瞳を歪める余裕もなく、シャワーの雫に涙が混ざる。溢れて零れた涙に驚いて知らず止まった息を取り戻そうとして、胸が詰まった。
「あ……」
やっとの思いで吐き出した息が、体中から力を奪った。立っていられなくなる。その場に膝からくずおれる。
「ああう……」
熱い雨を後頭部に浴びて、声が洩れた。浴室に響く己の泣き声に、細い背中が震えて強張る。白い腿を小さな拳で叩き、瞼を両の拳で覆う。濡れた頬や唇に力が籠もる。
「……っく……う」
堪えようとして堪え切れない嗚咽がシャワーの水音に混じる。
(どうして今日なの)
四年前の今日、家族の誰よりも優しかった次姉が急性くも膜下出血で急逝した。
(おねえちゃん)
――お姉ちゃん!
心に呟いて、今朝方出勤して早々に聞いた悲鳴が耳に蘇った。
処置に走る己の耳に響いた、急性くも膜下出血で救急搬送されてきた患者の妹のその悲鳴。
次姉が亡くなった四年前のあの日、自身が上げたのと同じ、悲痛な叫び声。
(助けたかった)
助けられなかった。
どれだけ手を尽くしても、
(手遅れだった)
「う、うう……っ、」
食い縛った歯から唸り声にも似て呻きが洩れる。己の呟きが言い訳に響いて許せなくて、また涙が吹き出す。
――お姉ちゃん!
息を引き取った患者に縋って泣き崩れる患者の妹の声の幻が、責めるように耳朶を叩く。
まるで四年前に戻ったかのようだった。
次姉が倒れた時はまだ、医者ではなかった。姉のようなひとを救いたくて、更には自分のような思いをするひとを救いたくて医者になったのに、
(わたしは、)
あの患者を助けられなかった。患者の妹を笑ませてあげられなかった。
医者になれば助けられると思っていたのに、医者になっても、
(わたしは、無力だ)
身を苛む絶望に、涙が止まらない。
どれほど泣いたか分からなくなる頃、膝にシャワーの湯よりも熱い湯が触れた。シャワーに打たれながら、泣き腫らした目をのろのろと上げる。バスタブから湯が溢れ出してしまっている。
手を伸ばし、湯を止める。早朝から夜まで働き詰めな上に大泣きして疲れ果てた体をどうにか持ち上げた瞬間、目眩がするほどの空腹感に気がついた。髪を伝って目に流れ込む湯を掌で拭って、こんな最悪の気分でも体はしっかりと快不快を訴えることに今更ながら気がついた。泣き笑いに頬が緩んだ。
シャワーの湯を止めて、息をひとつ。
浴室の扉の向こう、携帯電話の音が鳴っている。
(急患?!)
反射的に浴室を飛び出す。バスタオルを引っ掴み、床が濡れるのも構わず、ベッドに投げたバッグから電話を引き出す。鳴動する携帯の画面が示して居るのは、けれど勤務する病院のものではなく、古くからの友人の名。
息と笑みが零れて、まだ笑えることにもう一度笑って、通話ボタンに触れる。
「……もしもし?」
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
笑顔になるまでの一幕、お届けにあがりました。
悲しい涙も嬉しい涙も。色々な涙の場面を書かせてくださいましてありがとうございました。
普段はあまり見られない、色んな方の涙を見ることが出来ました。とても楽しかったのです。
ご参加くださいまして、読んでくださいまして、ありがとうございました。
またいつかお会い出来ますこと、楽しみにしております。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年04月04日
参加申し込みの期限
2015年04月11日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年04月11日 11時00分
参加キャラクター一覧
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