何枚もの真っ白なシーツが秋風にたなびく。
石鹸と糊の香の風にうなじで切り揃えた黒髪を惑わされ、
深倉 理紗子は眩しげに細めた翠玉の眼を雲ひとつない秋晴れの空へともたげる。
内科医として勤務する寝子島総合病院の屋上に、今は人気はない。
後手に閉めた鉄扉が、がしゃん、と重たい音をたてる。その音に華奢な背中を叩かれ、理紗子は消毒液の臭いが染み付いた白衣の裾を揺らして一歩、踏み出す。
踏み出したほんの僅かな衝撃で、視界が涙に塞がれた。
今にも溢れて零れそうになる涙を堪えようと、患者に応対するときは努めて柔和な笑みを絶やさずにいる優しい瞳に、ぎゅっと力が籠もる。柔らかな唇を噛んで頬が大きく歪む。
足を早める。
屋上の端に辿りつき、道を塞ぐ錆びた鉄柵を両手で掴む。剥がれ掛けた塗料が指先に刺さるのも構わずきつく握り締める。
秋風と洗濯物が踊る病院の屋上の端、誰かが置き去りにした秋桜の鉢の傍らに立つ。柵に背中を預ける。広がる町並みからも青空からも顔を背ける。座り込んでしまいそうになる膝を、けれど懸命に堪える。
うずくまってしまえば、きっともう動けなくなる。
午後からの回診で、患者に笑顔を見せることも覚束なくなる。
(それだけはだめ)
患者を不安にさせたくない。院内に戻れば、いつもの笑顔にならなくては。微笑まなくては――
でも、今は。
人目のないこの場所でだけは。
こんにちは。阿瀬 春と申します。
どんなに頑張っていても、泣きたくなるときってあります、よね?
ガイドには深倉 理紗子さんにご登場頂きました。
ありがとうございました。
泣き虫で優しい女医さん。私も出来るなら診ていただきたい……! というのは捨ておいて。
ガイドの場面はあくまでもイメージですので、もしもご参加頂けます場合は、場所も涙の理由もぜんぶ変えてくださいまして構いません。ご自由にアクションをかけてください。
今回は、みなさまの泣き顔を拝見させて頂きたいと思います。
あなたはどんなときに、どんなことで涙を零されますか。または零されましたか。
大泣きした過去でも、今現在でも、どちらでも構いません。あなたの涙の訳を、教えてください。もしも涙が乾いたなら、笑顔になったその訳も、お教えください。
場所やシチュエーション等、お好きにどうぞ。
もしくは、泣いているともだちや誰かを必死になって笑わせようとする(あなた自身が泣いて居ない)アクションでも大丈夫です。その場合はできればGAを組んで頂けますとありがたいです。
※NPCの登場はありませんこと、ご了承ください。
ご参加、お待ちしております。