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啜り泣きの密やかな声を聞いた気がして、
八神 修
は猫恋の鐘に続く坂道の途で足を止めた。紅葉がそよぐ道の端に、潮風流れる岬の森に、視線を巡らせる。
不安も孤独も全て心に押し込めようとしているかのような、そんな泣き声。
誰かいるのか、と声を張ろうとして、止める。暫く睫毛を伏せ、もしかしたら誰にも聞かれたくないのかもしれないと慮る。探さない方がいいかと思う胸に、ふと幼い頃の記憶が過ぎった。
心のずっとずっと奥に封じ込めた、笑うことも頼ることも忘れていた、『あの頃』。
――あの頃の己は、今も心の奥底に蹲っている。
物心ついてすぐ連れて来られた八神の家で、自室にとあてがわれた広い部屋の隅で、今も膝を抱えて泣いている。
あの頃は、回り中が敵に見えた。何くれとなく世話を焼いてくれるメイドも、気遣わしげな声と眼差しをくれる執事も、皆みんな、己を母から引き離した敵だと信じた。
部屋の扉を閉ざし、誰も入るなと鍵を掛けた。そうして、母に会いたいと泣いた。部屋の外で様子を窺うメイド達の気配に、逃げられないと悟った。
どれだけ泣いても無駄だと、年の頃よりも冷静だった幼心に理解していても、涙は後から後から湧いて出た。
涙に滲む瞳で見つめた部屋は冷たく広くて、それが余計に寂しさと不安を掻き立てた。分厚い壁は押し殺した子どもの泣き声など容易く呑み込んだ。堪え切れなくなった泣き声と母恋しさごと部屋に押し込められて、――たったひとり。孤独だった。
泣いて泣いて泣き疲れて、それでも涸れない涙を涙で濡れた袖で拭う。いつまでも乾かない涙で頬がひりひりした。ずっとしゃっくりあげ続けたせいで身体がひどく疲れていた。
寄る辺ない視線を広い部屋に彷徨わせて、部屋の一角、分厚い本が並ぶ造りつけの立派な本棚に行き着いた。
幾つもの窓から流れ込む夕暮れの光を頼りに、本棚の傍に寄る。一番下の段に並ぶ、細緻な刺繍が施された布製本の全集の一巻を両手で引き出す。本棚に寄り添うように背中を預け、頁を開く。
それは古い植物図鑑で、物心ついたばかりの子どもには読めない難読漢字もたくさん並んでいたけれど、それでも、文字を追っている間は苦しさを忘れていられた。
だから、小説だろうと学術書だろうと構わなかった。
高い天井まである本棚に詰まった書籍を仰いで、これだけの本があればしばらくは保つ、と思った。書籍の中に辞書を見つけ、小さく笑う。そう言えば、母は辞書の引き方を教えてくれていた。
母の温もりを感じたくて、母に習った通りに辞書の頁を捲り続けた。そうするうちは孤独を感じずに済んだ。
孤独からまず救ってくれた知識を友としよう。寂しさを心に押し殺して、冷静さを取り戻そう。己の立場を受け入れよう。そう、幼心に決めた。
力が無いから泣くことになるんだと思った。
早く大人になろう。力を持とう。母に会えるようになろう。
八神の家の、子供心に恐ろしいほど広く感じたあの部屋で、決意を固めた。
(……尤も)
紅葉をざわめかせる海風に髪を揺らされ、修は過去に沈んでいた己の心を現在に引き戻す。
幼い決意を果たすよりも先に、母は他界してしまった。
(……がんばろう、な)
今も心の奥に泣く幼い己に語り掛ける。
(俺なら、がんばれるから)
それに、と僅かに濡れた瞳を坂道の先に向ける。
今は、友人が居る。腹心と呼べる者も、家族と思うたくさんのペット達も居る。
あの頃は敵にしか見えなかった父とも、育ての母とも、彼岸に発ってしまった産みの母とも、繋がっている。今は、確かにそう思える。
ほんの僅か、涙の熱帯びた息を海風に流す。
丘の天辺、秋の陽射しを受けて煌く猫恋の鐘の脇に、小さく丸くなった背中が見えた。うずくまる少女の頭の上には、ふくよかな三毛猫。
「……慣れるのだ……慣れなきゃ、……」
見慣れた赤いジャージの背中がひどく寂し気に見えて、風に零れて消える独り言がひどく悲し気に聞こえて、思わず足を早める。
(……ああ)
ふと、理解する。
あの頃の自分を思い出したのは、彼女の孤独を耳にしたからだ。
ジャージの袖で涙を拭う少女の傍ら、静かに歩み寄り、腰を下ろす。優しく淡く、微笑む。
「言ったろ? 真央は一人じゃないって」
一人きりの丘に現れた親友の姿に、一目で言い当てられた涙の理由と的確な言葉に、真央は翠の眼を見開いた。息が詰まる。言葉の代わりに涙がまた止まらなくなる。
「大丈夫だ、俺がついてる」
重ねるように言われ、背中を撫でられ、真央は堪らず修にしがみ付く。一人でずっと我慢し続けられていた泣き声が、支えを得た途端に心の底から溢れて零れた。
触れることを許してくれる人が居る。
人は、こんなに温かい。
大声で泣きながらも、真央は途切れ途切れに此処に来るまでの自分自身のぐるぐるした気持ちを吐き出す。時に支離滅裂になる少女の話に根気強く耳を傾けて後、修はそっと言葉を紡ぐ。
「存在は、……在るだけで影響を与え合う」
涙に濡れた瞳を瞬かせる真央に、修は笑う。
「俺と真央の関わりのようにさ。それは一人じゃない証にならないかな」
頷きつつも、言葉もなく泣くばかりの真央の背中を修はぎゅっと抱きしめる。
「あーごめんなのだ……」
もう大丈夫と腕の中でもがく真央に、
「あるぇ~修ちゃんも目が赤いのだ?」
強がって笑ってみせる真央に、
「真央は一人じゃない」
しっかりと言い聞かせて、ふとおどけてみせる。真央に背に回す両腕に力をこめる。
「それとも真央は、この俺も此処に居ないって思うかい?」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年04月04日
参加申し込みの期限
2015年04月11日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年04月11日 11時00分
参加キャラクター一覧
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