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叔母に示された戸棚の一番上の引き戸を開ける。ふわり、樟脳のどこか懐かしいにおいのその奥に、古いアルバム数冊とクッキーの赤い缶。
「これじゃな」
小さく呟いて、
大田原 いいな
は踏み台の上で背伸びをした。小柄な体と腕をめいっぱい伸ばし、戸棚から赤い缶を引っ張り出す。片手で缶を抱え、もう片手でアルバムも取出そうとして、
「おっと」
踏み台から足を踏み外しかけた。袖を捲くってもまだ大きい、男性用の緑のコートの裾が大きく揺れる。転げ落ちるよりも先、クッキー缶を頭の上に掲げ、身軽に踏み台から飛び降りる。
「横着してはならんの」
呟いて、床の上に缶を置き、もう一度踏み台に登る。アルバム数冊を大切に薄い胸に抱いて床に座り込む。窓から差し込む温かな秋の陽を涼しい風を背中に浴びながら、赤い缶を開ける。クッキー缶の中には、日付もバラバラ、撮られた場所もバラバラの何百枚もの古い写真。
アルバムの表紙に記された年月を確認しつつ、いいなは腕まくりをする。
母親とその再婚相手と決別し、この島に戻ってきてずっと世話になっている叔母に頼まれた、昔の写真の整頓。この量だと、半日がかりの楽しい大仕事になりそうだ。
床いっぱいに古い写真を並べ、手際よく年代順に整理し始めたいいなの手が、一枚の写真を手に取って止まる。
「……懐かしい写真が出てきたの」
写真の中の幼い自分と幼い叔父を見下ろして、思わず黒い眼が細くなる。年の頃は自分が四歳、叔父が六歳だっただろうか。
あの頃はまだ、この島に住んでいた。
(叔父貴を兄のように慕っておったわ)
――おにーちゃんのばかー
写真に写る幼い自分の泣き声がふと耳に蘇る。
あの頃はいつもいつも、遊びに行く叔父の背中を追いかけて居た。旧市街の商店街を今と変わらぬ溌剌とした足取りで駆けて行く叔父の背中を、今でもはっきりと思い出せる。
早生まれのいいなと四月生まれの叔父には丸二歳分の体格差があった。どれだけ必死について行っても、『おにーちゃん』の背中は遠ざかるばかりだった。置きざりにされては迷子になって、
――おにーちゃんのばかー、どこいっちゃったのー
商店街の真中で、旧市街の路地裏で、ひとりでよく泣き喚いた。
(金魚のフンのようじゃったな)
写真を見つめる大きな瞳に、閉ざしていても笑みのかたちになる唇に、小さな苦笑いが浮かんで消える。
泣き喚く自分を見つけてくれたのは大抵叔母だったように思う。泣きじゃくる頬の涙を温かな掌で拭ってくれた。手を引いて、魔法のように叔父の元に連れて行ってくれた。そうしてその度に、姪っ子を置いてけぼりにした咎を喰らい、叔父は叔母から雷を落とされていた。
(あの頃から叔父貴の我慢強さは育っていったのかも知れんの)
懐かしい写真を秋の陽射しに翳してみる。この写真は、
(叔母上と叔父貴、儂で駄菓子屋に行った時じゃな)
思い出す。
この時は、叔父のソーダアイスを半分欲しがったのだった。ちょっと困った顔をしながらも叔父が割ってくれたアイスは、けれど歪に割れて、
――おにーちゃんのほうがおおいー!
また泣いて、叔父をもう一度困らせた。この時は確か、叔父の大きい方と自分の小さい方を取り替えっこしてくれた。『おにーちゃん』が我慢してくれた。
甘酸っぱいソーダアイスの味は、『しあわせ』だったあの頃の味だ。叔父と叔母が傍に居た。父が居た。母も、
(……母さんも変じゃなかった)
伏せた視線の先に、亡父が淡く微笑む写真。
細い指先を伸ばす。もう居ない父の写真に触れる。
自分のせいではないと分かっていても、未だに心に繰り返す。問い続けてしまう。
(どうして母さんはあんな人と再婚したの?)
心の奥から湧き上がる悲痛な言葉に胸を衝かれ、いいなは思わず耳を塞ぐ。
(あんな怖いことがあって、母さんも儂を蔑ろにして)
『あんな人』との間にあった『怖いこと』が瞼の裏に過ぎる。『あんな人』の傍らに寄り添い、自分を見下ろしていた母の眼差しまで思い出す。二人に浴びせられた言葉まで塞いだ耳の奥に蘇る。
自分を傷つける全てから身を守るように膝を引き寄せる。小柄な体には大きすぎる、男ものの緑のコートごと自分を抱きしめる。
(母さん、どうして?)
あの頃と同じ呟きを胸に零した途端、涙がこみ上げた。
地獄は長くは続かなかったけれど、親権が叔母に移って事態は落ち着いたけれど、
(……儂の苗字は変わらぬままじゃ)
大田原の姓は通称であり、望まぬ本姓は別にある。
いいなは小さな背中を丸めて深く嘆息する。吐息と共に瞳に再び宿りかけた涙は、けれど膝を抱える腕を包む緑のコートを見て止まった。
緑のコートに落ちた幾つもの水滴は、なんでもないように、呆気なくコートの布地に吸い込まれて消える。
(……うむ)
大きな瞳を縁取る茶色の睫毛で視界を滲ませる涙を払う。コートごと、もう一度自分を抱きしめる。
(儂は今も守られておる)
何処に居るとも知れずとも、必ず何処かに居るだろう『奴』を思う。
僅かに笑みを取り戻した瞳を上げれば、その瞳いっぱいに、自分の周りをぐるり囲む何百枚もの叔父や叔母の、――いいなを守る、家族の写真。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年04月04日
参加申し込みの期限
2015年04月11日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年04月11日 11時00分
参加キャラクター一覧
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