天神平薬局のお薬キャンペーン｜リアクション

天神平薬局のお薬キャンペーン

　店の営業が始まった。待ち兼ねた男性客が押し寄せて早い段階で満席となった。
　次々とカクテルの注文が入り、キャストは忙しなく対応した。カウンターにいたアリサはグラスにバースプーンを入れて軽く掻き混ぜた。仕上げにグラスの縁にライムの切り身を添える。
「こちらがジントニックになります」
　アリサは手前にいた男性客に笑顔でグラスを差し出した。重みのある胸が揺れて、ふぇ、と甘ったるい声が漏れた。
「どうかした？」
「いえ、なんでもありません」
　アリサは口角を上げて対応した。カウンターに隠れた下半身に落ち着きがない。太腿を擦り合わせるような動きが徐々に速くなる。その細かい振動は胸に伝わり、唇が半開きとなった。更に開き掛けたところを手が覆って防いだ。
「キミ、具合でも悪いの？　顔が少し赤いんだけど」
「そ、そんなことは、ありませんよ。くしゃみが出そうになったので」
　口から手を離したアリサはにこやかに言った。空元気ではなく、本当に復調した様子で本人も少し驚いた表情をしていた。
　その時、硝子の割れる音がした。居合わせた客の目が一点に向かう。璃亜が床にへたり込んで笑っていた。
「ごめんなさい。足が滑って転んでしまいました」
　どのような滑り方をしたのか。璃亜は頭まで濡らしていた。スクール水着で濡れる少女。何人かの客の目尻が極端に下がった。
　アリサの不運が璃亜のろっこん「運命の輪」を無意識で発動させたのだった。アリサは幸運を授けられ、反対に不運を璃亜が受けることになった。
「……もしかして媚薬の効果？」
　アリサは身震いをした。また声が出そうになる。ろっこんの効果が切れて快楽が波のように押し寄せる。
　その中でカクテルを作り続けた。合間に深呼吸を入れる。細長いマドラーを切ない表情で見つめる時間が増えた。少し腰が引けた状態で頻りに太腿を擦り合わせる。
「……ダ、ダメだってば」
　マドラーに不自然に手が伸びる。アリサの理性が軋み始めると決まって気分が静まった。近くでは当然のように璃亜が派手にすっ転んだ。周囲の客は大いに沸いた。
　その繰り返しの中、二人の奮闘は続くのであった。