天神平薬局のお薬キャンペーン｜リアクション

天神平薬局のお薬キャンペーン

　修は部屋に籠って作業に没頭していた。大きな作業台の上には福々しい猫がいた。今にも後ろ足で首の辺りを掻き出しそうであった。
「大枠の自律ＡＩは完成している。あとは付随する部分の強化が急務だ」
　猫に模したロボット、ＧＡＯ改に接続したケーブルはパソコンに繋がっている。画面には精緻に組まれたプログラムが整然と打ち込まれ、数時間が経過しようとしていた。
「もう少しだ。もう少し」
　疲弊を見せず、キーボードの上を指が懸命に躍る。修の顔は画面に引き寄せられ、瞬きを忘れた。
　エンターキーを高らかに押すと同時に仰け反った。修は高い天井を見上げて瞼を閉じる。十分に余韻に浸ってから姿勢を戻した。
「ようやく、この日を迎えた」
　語尾が震える。自信と不安が入り交ざった表情でＧＡＯ改を見つめた。画面へと目を戻し、プログラムを起動させた。
　修は以前の動作を確かめた。声音に反応してお手やおかわり、お座りを完璧にこなす。
「ここからだ」
　修はＧＡＯ改にメールの有無を聞いた。すると十五通の未読があることを声で返した。その中の一通にはウイルスが含まれていて適切に処理した旨を伝える。
　その後、自律ＡＩを試す為に色々な言葉を投げ掛けた。ＧＡＯ改は小刻みに振動。考え込むような沈黙を保ち、全ての機能を停止させた。
「自律ＡＩの負荷が大き過ぎたか」
　納得のいく答えであった。しかし、決して満足はしていない。修は挑戦者の顔で、いつかきっと、と声を絞り出す。
「待っていて欲しい」
　優しい目をしてＧＡＯ改の頭を撫でた。

　翌朝、疲れ果てた癒雨はベッドに突っ伏した状態で、いってらっしゃい、と力なく手を振った。
「はい、いってきます」
　制服に着替えた絵奈は笑顔で出掛けていった。
「……若いって凄いわ」
　地の底に沈むような声で癒雨は言った。

　天神平薬局のお薬キャンペーンは終了した。得られた情報で今後、どのような薬が作られるのか。それは誰にもわからない。

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：黒羽カラス
ファンレターはマスターページから！

　今回は媚薬キャンペーンに協力していただき、誠にありがとうございました。
　などと真顔で書いてしまうくらいに媚薬が大人気でした。しかも、参加者のほとんどが女性で面食らいました。
　色々と想定外のことが勃発してモブキャラを大量投入することに。売り子さんも孤軍奮闘、頑張っていただきました（大変でしたよぅ）。

　今回のシナリオではお薬の試飲がメインになりますので、購入を希望された方々の描写は敢えて省きました。
　個々で購入したことにしても構いません。騒動に巻き込まれて買えなかったという場合もあるでしょう。
　とにかくリアクションを書いていて私も個人的に媚薬が欲しくなり（ｺﾞﾎｺﾞﾎ）。

　また次のシナリオでお会いできれば幸いです。

↑ページトップに戻る