熱血！　寝子島不良伝　～死闘！　木天蓼不良四天王現るッ！～｜リアクション

熱血！　寝子島不良伝　～死闘！　木天蓼不良四天王現るッ！～

【森を枕に……】

　焔はクラスメイトでもある神木煉と合流して先へ先へと先行していたが、思わぬ事態に遭遇していた。
「……参道もそうだけど、その周辺にも大量に仕掛けられているな」
「ちょっとした山の要塞だわね」
　簡易トラップの数々が仕掛けられていたが、何よりも二人が危険視したのはこういうことだ。そこらへんの木の上に向けてバシッと焔は弓を放つ。
「ひゃぁーーーーーーーっ！」
　その瞬間、落ちてくる不良。
「……そら」
「たわらばっー！」
　煉も木々の影に潜んでいた不良を引きずり出して倒している。
　煉は薙刀と木刀の二つを持ち、木刀は腰に指し、もう一方で薙刀の方をうまく操って罠を解除したり、敵を倒したりしていた。
　それらが終わった時、不気味な雰囲気に戻ったという意味で森は静寂を取り戻した。
　所々から木々を寝子校生が駆け上がってくるのが見える。
「……ゲリラ戦か、こいつら本当に不良か……？」
「強力な統率者がいれば、集団戦術は出来るわ。心配なのは……」
　そう言って、ふと落神神社の方を見上げる焔。
「……？」
　煉がその様子にふと見入るが、焔は首を振って思考を止めた。
「ネコッターで警告しましょう。最初の時点で警戒すべきだったかもしれないわ」
　そう言ってネコッターを開く焔。
「って、あら？」
「どうした？」
　煉が焔の援護をしつつ、問う。
「……これ、思いっきり敵の作戦当ててるよね」
　そうやって、ネコッターの画面を見せる焔。
「これは……アイツだな」
「……だね」
　何となく、緑のコートの人物が二人の頭をよぎった気がした。
　その瞬間であった。
　ドサッと隣で罠に引っかかったのか、倒れる生徒がいた。
　バラバラとばら撒かれる工具類……というよりもこの生徒、学生服の裏生地や袖にペンチ、ニッパー、ドライバー、その他工具を仕込んでいる。
「おい、大丈夫か……畑生」
　恐る恐る呼びかける煉。
「何かね？　今ちょうど敵の罠の具合を確かめたところだ」
　そう言って、むくりと起き上がり再びトラップを仕掛けるのは畑生言嗣である。
「何というか、その大丈夫なの？」
　焔も恐る恐る声をかけるが。
「問題ない。心配してくれるのならありがたいが、それはもっと別の時に使ってくれ給え」
　謙遜しているのかどうかも分からない。淡々と応える言嗣。
　なんというか、言嗣はわざとトラップがありそうな場所へ行き、引っ掛かり、解体してそれを掻き集めて別の罠として仕立てあげるという作業をしているのである。
　しかし、寝子高側は進軍する側であって守る側でなない。
　だから、敵の妨害にもなりはするが、どちらかというと味方の妨害に近い。
　が、言嗣にとってはそんなこともお構いなしなのであろう、それは言嗣がこの山の中で重装備を担いで歩き回っても元気でいるこの事実が物語っている。
　つまるところ、ズレているのだ。
「それで、もう行っていいかね？　次の罠を探さなければいけないのだが？」
「そうだな、くれぐれも気を付けてくれ……」
「何、軽く運動するだけだ――、ついでに我らの無事を祈っておいてやろう」
　そう言って、森の奥へと走り去っていく言嗣を見送りながら、参道の罠を二重に解除する羽目になった二人の足は大いに止められるのであった……。
　その間焔は、不良の相手を煉に任せ必死にネコッターを操作していた。
　どうにか、勝つために。