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金木犀の招き
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◆金色の時間◆
ふと思い立って庭に出てみた。
家も庭も甘い香りに満たされて、どこにいても金木犀の木のことが意識される。
この時季だけの習慣で、設楽は金木犀のある側へと足を向けた。
濃い緑の葉に淡橙色の小さな花。
見慣れた色あいに今はもう1つ、黄色い色彩が加わっている。
枝にちょんと降りてはすぐに飛び立ち、また別の場所へと降りるのを繰り返している黄色いカナリアだ。
金木犀と戯れるような動きについ見とれてしまう。
首から何か鍵のようなものが下がっているから、もしかしたらどこかの家から逃げてきた鳥かと心配になるけれど、設楽には捕まえることは出来そうにない。
カナリアの迷子の話を聞いたらうちにいたことを教えてあげないと。でも今日は何日だったかしら。やあね、最近ぱっと日付が出てこないわ。
そうそう、とちょうど思い出せたその時、カナリアが挨拶してくれるように一声鳴いた。
しばらく金木犀への小さな来客を見上げていた設楽だったが、道で騒いでいる子どもの声が聞こえてくると、いそいそとそちらへ向かった。
「よかったら寄っていらっしゃいな」
呼びかけると子どもたちがぴたりと黙った。
「金木犀の花期は短いの。次の雨が降ったら、散ってしまう。今のうちにひと握り、ふた握り、うちの金木犀の花を摘んでおゆきなさいな」
せっかくの金木犀だから他の誰かにも楽しんで欲しくて、ポプリやクレープの話もしてみるけれど。
「おいでおいでばばあが出たー!」
「逃げろー」
小学生たちは口々に言って、笑いながら走っていってしまう。
それも仕方がないかと設楽が金木犀を振り返ると、金木犀からカナリアが飛び立った。
子どもたちは足音をばたばた鳴らしながら、裏道を駆けてゆく。そうして逃げてゆくこと自体が面白くてならなくて、口々に笑いながら。
が、そんな子どもをひょいとつまみあげる手があった。
「おいでおいでばばあ? それは妖怪かい?」
子どもは、え、というように自分をつまみあげている相手を見上げ、それが
逆巻 天野
だと分かるとわあと声を上げる。
「妖怪坊主だー!」
天野がそう呼ばれるのは、彼が寺に世話になっているためだ。
「よーかいじゃなくて、トラの人だよー」
物知りそうに指摘するのはこの中で一番年少な女の子。こちらは天野がバイトをしている動物園で顔を合わせたことがある。トラの着ぐるみの中の人だと知ったのが嬉しかったらしく、何かにつけてトラの人、トラの人と言ってくる。
バイトの掛け持ちをしている所為で天野はあちこちで子どもたちと顔を合わせることが多いのだ。
天野自身は妖怪でもトラでも、子どもたちが親しみをもって読んでいるのが分かるから目くじらを立てたりはしない。だが冗談ではあっても、『おいでおいでばばあ』は聞き過ごせない。
そんな呼び方をしてはいけない、と叱ることも出来たけれど、天野はそうはせずに子どもたちに尋ねた。
「その妖怪の庭に何があるのか……見たことはある?」
知らなーい、と子どもの声が揃う。
「何があるのか気にならないかい? ちょっと行ってみよう」
子どもたちは顔を見合わせたが、天野が女の子の手を引いて道を戻りだすと、全員が後からついてきた。
生け垣の所まで戻ると、天野は庭を覗き込んだ。
「綺麗だ」
庭の奥にある金木犀の大木。今を盛りと咲いている花に素直にそんな言葉を口にして、天野はふと金子みすゞの『もくせい』の詩を思い出した。
「きれいって何が?」
子どもたちも覗き込んでいるが、子どもの目の高さでは金木犀はよく見えないようだ。
「金木犀。お子様には分からないかな」
そう言って天野は、子どもの1人を肩車してやった。
子どもは肩車されたことにまず甲高い歓声を挙げ、ついで目に入った金木犀を、あったと指さす。
「いっぱい咲いてる!」
「え、どこどこ?」
「あたしも肩車ー」
子どもが足にしがみつき、天野はバランスを崩した。肩車をされている子が天野の髪にしがみついて叫ぶ。
そんな騒ぎが届いたのだろう。
「どうしたの?」
老婦人が生け垣の向こうから顔を覗かせた。
「ああ、設楽さんの家でしたか」
「逆巻くん? どうしたの、そんな所で」
「金木犀の花を見ようと思ったんですが、ここからだとみんなには見えないみたいで」
「それで肩車なのね」
設楽は納得したように笑うと、玄関のほうを手で示した。
「良かったら、入って見ていってちょうだい。金木犀も私しか見る人がいなくては寂しいと思うの」
どうする? と子どもたちを見れば、興味は惹かれている様子だけれど、もじもじとするばかりだ。さっきはやしたてて駆け抜けたばかりなのだから、ばつが悪いのだろう。
「庭を荒らさないって約束できるんなら、一緒に金木犀の花を見に行こう」
天野が誘うと、子どもたちはうんと言ってくっついてきた。
そこまでを見ていたカナリアは、角を1つ折れた人目のない路地に舞い降りた。途端に鳥の姿は
桜井 ラッセル
に変わる。
足早に角を曲がって設楽の家の前に行くと、ちょうど子どもたちを引き連れた天野が庭に入っていこうとするところ。
「どこ行くんだ?」
ラッセルのかけた声に振り返った天野は、知った顔にああと答えた。
「設楽さんの庭。金木犀があるそうだから」
「へぇ、俺も行っていいかな?」
尋ねたラッセルに設楽が答える。
「どうぞいらして。お客様はたくさんのほうが賑やかで楽しいわ」
それにあなたも、と設楽に呼びかけられて、ちょうど生け垣の所で足を止めたばかりの
獅子島 市子
は、はあ、と瞬いた。
金木犀の香気を感じ、どこの家だろうときょろきょろ探していたのだが、どうやらこの家がそうらしい。
いきなり知らない人に呼ばれても……とも考えたけれど、招く設楽の柔らかい微笑にふと亡き祖母を思い出す。
(まーコレも縁か)
花は嫌いじゃないし、少しぐらい付き合っても悪くはないだろう。
こっちこっちと設楽に案内されて、皆は玄関の前を左に折れ、庭に沿って進んでいった。
庭の片隅に1本だけ植えられた金木犀の木は、ゆうに2階まで届く高さの大木だった。
「この星みてーな花、キンモクセイって言うんだ。よし覚えた!」
忘れないようにとラッセルは口の中でキンモクセイと繰り返す。
「金木犀を見るのは初めて?」
「いや、俺、秋が来るたび町中で見かける金木犀が好きで、よく足をとめててさ。でも名前を聞いたことはなかったんだよなー。だから今日来て良かった。――です」
設楽相手にタメ口になってしまっていたことに気付いて、ラッセルは急いで付け加えた。
木は芳香を放つ小さな花をこんもりとした木いっぱいにつけている。
咲き出したばかりだろうか。木の下に落ちている花はまだ少ない。
せっかくだからと、市子はスマホを取りだして金木犀を撮影する。
少し離れた全体像、一面緑とオレンジ色に埋め尽くされるようにもう1枚、アップにして花の形が良く分かるようにまた1枚。
良い角度を模索してあちらこちらから眺めているうちに、そのひかえめな愛らしさに見惚れてしまう。
香りと比べて目立たぬ花の様子から、謙虚、謙遜という花言葉のあることを市子は思い出す。
(けっこーたくさん花言葉があったっけ……)
香りの強さから、陶酔。一斉に咲いて一斉に散る、高潔。
他にも、真実、真実の愛、初恋、変わらぬ魅力など、良い意味の花言葉を持つ。
(……似合いそうだな)
市子は脳裏に誰よりも愛しい人の面影を浮かべた。
彼女に香るままの金木犀をあげられるなら……花言葉も相まって良い贈り物となるだろうに。
撮影の手を止めて物思いに耽る市子と対照的に子どもたちは元気だった。
「それー!」
ラッセルと一緒に、金木犀の周りをぐるぐると追いかけっこして遊ぶ。
子どもたちを連れてきたほうの天野は、その輪には加わらず縁側に腰掛けてのんびりと眺めた。
さすがに走り疲れたラッセルが、もーダメと縁側に逃げてくると、設楽がお疲れ様と声を掛けた。
「おやつに金木犀のクレープを焼いて、お茶でもいれましょうか」
食べる食べると子どもたちが騒ぐが、結構な人数だ。設楽1人で用意するのは大変だろう。
「しょーがねーね。手伝うよ」
市子はスマホをしまって縁側から設楽の家にあがった。
「ありがとう。お願いするわ。待っている人たちはよかったら花を摘んでモイストポプリを作ってみない? かなり長く香りが楽しめるのよ」
ポプリを作るのなら、花を摘んできれいにゴミを取り除き、さっと洗ったものを広げて水気を飛ばしておかなくては。そう説明する設楽に、
「やる!」
ラッセルは即答し、市子は後ろ髪を引かれる思いで立ち止まった。
「……モイストポプリ? ……いっすね」
乾燥させたら消えてしまう金木犀の花の香りも、モイストポプリなら留めることが出来そうだ。
「お花摘みのほうをやる?」
設楽に言われて心が動いたが、おやつの用意を設楽に任せてしまうのも心苦しい。
「んー、手伝いが終わって時間があったらってことで」
ここは仕方がないかと市子は手伝いを取った。
キッチンというより台所というのが似合う場所でのおやつ作り。
クレープ生地に、良く洗って水気を切ってある金木犀をぱらぱらと散らして焼き上げる。
木に咲いているときは淡いオレンジ色なのに、焼き上がったクレープではくっきりとしたオレンジ色の花となるのが不思議だ。
クレープを何枚も焼いて、生クリームを泡立てて。金木犀で香りをつけたお茶を淹れて。
「あんまり金木犀ばかりだと香りに酔っちゃうかしらね。そうそう、以前こうやって金木犀尽くしのおやつを出した時にね、こんなことがあったのよ」
市子の手際がいいから設楽には指示することはあまりない。となると始まるのが長い長い昔の話。
年配者の話し好き。
思っても口に出さないで適度に相づちを打つ。お祖母ちゃん子だった市子には慣れっこのことだ。
焼き上げたクレープとお茶を縁側に運んでいくと、洗った花を広げて干していた子どもたちがわらわらと寄ってきた。
「おやつきたー!」
「はは、そんなに待ちどーしかったか?」
巣で口を開けて待つ雛に餌を持ってきた親鳥の気持ちが分かりそうだ。なんて市子が思っていると。
「おねえちゃんの分のお花、あそこだよ」
一番小さな女の子が干してある金木犀のほうを指さした。
「へ?」
「こいつらはポプリ作れるほど長居をさせられないし。けど花を摘んでみたいって言うから」
おやつを用意してくれている市子の分を摘もうということになったのだと天野が説明する。
「お花つんだのー」
こんな風にと差し出した女の子の手で、金木犀がひとにぎり香る。
「あんがとね」
市子が礼を言うと、子どもたちは顔いっぱいの笑顔になった。
わいわいと皆でおやつを食べ終えると、子どもたちは天野につれられて設楽の家を後にした。
その後、金木犀がちょうどよく生乾きになった頃合いを見計らって、ラッセルと市子はポプリ作りに取り組む。
基本は瓶の中に粗塩と金木犀を交互に入れてゆくだけだ。
「お塩はこっちが粗塩で、こっちはオリストルート入りのミックスソルト。好みで使ってね」
「精油は入れねーの?」
市子はモイストポプリの作り方を大体は知っている。ミックスソルトに精油を混ぜないのかと、設楽に聞いてみる。
「私は精油は入れないけど、好みで入れてみるのもいいと思うわ。精油とは違うけど、バニラエッセンスが合うって聞いたこともあるわ」
「ふーん……」
市子はちょっと考えたあと、自前で持っている桜香油をミックスソルトに混ぜ込んだ。副香としてミントもほんの少しだけ加えてみる。
粗塩を敷き詰めた上に金木犀と粗塩、ミックスソルトを好きにいれてゆく。
ラッセルはきれいな均一の縞模様に。
市子はあえて均一にせず、可愛らしい金木犀を美しくも儚げにちりばめてゆく。
「あら素敵ね」
「んん?」
設楽の視線に市子は照れた。
「まー……その。ナニ……ヒトにあげるヤツだしちょっとキアイを……」
言葉の終わりのほうはかなりの小声になる。その気持ちも知らぬげに、まあプレゼントなのねと設楽は楽しそうに聞き返す。
「う……ん。ソイツにも知っといて欲しくてさ。この花のコト」
最後を粗塩で終えると、市子はぎゅっと蓋を閉めてモイストポプリを密封した。
出来上がったモイストポプリはこのまま1、2ヶ月熟成させる。
次に蓋を開けるときには金木犀の花は跡形もない季節だけれど、その香りは瓶の中、確かに残ることだろう。
「今日はありがとうございました! また来てもいいかな、いいですかー?」
言い直すラッセルに、設楽はもちろんと答え、それに、と付け加えた。
「今度来るときには、普通に喋ってくれて構わないのよ」
「じゃあ遠慮無く。硬い言葉苦手でさ」
これで安心して話せるとラッセルはほっとした。
市子はポプリの瓶をちょっと持ち上げて設楽に挨拶する。
「声かけてくれてあんがと設楽サン。また誘ってよ」
くす、と笑みを含ませると市子はポプリの瓶を……あるいはそれにこめた想いを抱くようにして、設楽の家を後にしたのだった。
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3人まで
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日常
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15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年03月15日
参加申し込みの期限
2015年03月22日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年03月22日 11時00分
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