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金木犀の招き
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◆約束◆
秋の空は高く澄んでいて、その下を散歩するのは心地良い。
弘明寺 能美子
は休みの日には星ヶ丘で買い物することが多いけれど、今日は
桜庭 円
に誘われて、にゃーくんと一緒に旧市街の散歩。
たまにはこうしてぶらぶらと街を歩くのも良いものだ。
「もう秋も深いけど、花も所々に咲いてるのね……あら?」
秋風の運んできた花の香に、能美子はこの花は何だったかと考える。
「あっちからほんのり甘いいい香りがするね」
円が細い脇道を指した途端、能美子はそれが何の香りか思い出した。
「この匂いは金木犀かしら」
「あ、そうそう、金木犀の匂いだね、これ。この先に咲いてるのかな。行ってみない? 面白そう」
「そうね。行ってみましょう」
好奇心の赴くまま、2人は香りを辿っていった。
「したらさん、かな。たぶんこの家だと思うんだけどー」
「金木犀は……あれかしら」
「え、どこどこ?」
身長差のためか、生け垣から少し中を覗き込んだ能美子には金木犀が見えたが、円には分からない。円がもうちょっと、と身を乗り出したとき、設楽がこちらにやって来るのが見えた。
「こんにちはー」
円は肩に乗せたにゃーくんを揺らさないように手を添えながら頭を下げる。
「こんな素敵な場所があったんですねー。ボクは桜庭円と言います。春に旧市街のほうに引っ越してきたんです。金木犀……でしたっけ。とてもいい匂いがしますねー」
「ありがとう。もしお時間があるようなら、金木犀を見ていってちょうだいな。これから金木犀のクレープを焼こうと思っていた所なの。良かったら一緒にいかが?」
「クレープかぁ、食べてみたいかも! 能美子ちゃん、寄っていってもいい?」
円は能美子を振り返った。
その視線を辿った設楽と目が合い、能美子はちょっと恥ずかしそうに頭を下げる。
「えっと……お邪魔させていただきます」
「じゃあ決まり! あ……、この子が一緒ですけど大丈夫ですか?」
円がにゃーくんを指さすと、設楽は笑顔でもちろん構わないわと答える。
「先客ならぬ、先猫さんもいるし」
設楽が言った先猫は、縁側に敷かれた座布団の上で寝ていた。その横に寝ころんでいた真央がむくりと起きあがる。
「あれ、円ちゃんたちも来たのだ?」
「みんな来ていたのね」
能美子は縁側周辺にいる顔ぶれを見渡した。
縁側の真ん中にいるのは真央とマーブル、縁側の脇にある立水栓では修と美咲紀が洗った金木犀の水気を切っている。
これから修は桂花醤を、美咲紀はモイストポプリを、設楽はみんなが食べる分のクレープを作るのだと言う。
「へー、みんなでクレープか」
そういうのちょっと憧れだった、とほわっとなりかけて能美子は慌てて顔を引き締めた。
「能美子ちゃんどーかした?」
円に聞かれて能美子は平常心を装う。
「べ、別に何でもないわよ」
「そう?」
なんか微妙に表情が変化してたように見えたけど気のせいか、と円はあっさり追及をやめる。
「ボクはクレープを手伝おうかな。でも実は料理苦手なんだけど……」
教えてもらってもいいですかと円ははにかむ。
「ええ。最初は薄くのばすのが難しいと思うけど、コツを掴めば大丈夫よ」
「うんやってみる。にゃーくんはここで待っててね」
円は肩からにゃーくんを下ろした。
「お猫様の面倒は真央ちゃんに任せるのだ!」
真央はサシェに使った残りの紐でにゃーくんをじゃらし始めた。
「まずはモイストポプリの作り方を説明して、ポプリを作っている間に台所でクレープと桂花醤を作るのがいいかしらね」
設楽は縁側に、ガラスの小瓶と陶器のスプーン、粗塩、ハーブソルトを用意すると1つ作って見せる。
「ガラス瓶はいろいろあるから好きなのを選んでね。一番下と一番上に粗塩が来るようにするの。それ以外は自分の好きな配分で交互に入れていくだけよ」
「しましまにするんですね」
瓶を選びながら、美咲紀が確認する。
「ええそうよ。きちんと等間隔に入れていくのもいいし、わざと不規則な縞模様にしても楽しいと思うわ。あとは上まで詰めたら蓋をして、1、2ヶ月熟成させると出来上がり。簡単でしょう?」
「はい、作ってみます!」
丸みを帯びた瓶を選ぶと、美咲紀はさっそく粗塩を入れてゆく。
「じゃあ、台所に行きましょうか」
クレープと桂花醤を作りに、と言う設楽について行きかけながらも、円はちらっと振り返る。
「ボクもポプリ欲しいかも……」
クレープも作りたいけどポプリも欲しいが、両方作るには時間がちょっと厳しそうだ。迷う円に能美子が言う。
「よかったら桜庭さんの分もつくっておくわよ。ほ、ほら、ついでだから、ね」
「ほんと? ありがとー。お願いするね」
これで心おきなくクレープを作れると、円はぱたぱたと設楽を追い掛けていった。
昔風の台所はそれほど広くはないが、使い込まれた調理器具が使い勝手良く配置されている。
奥のコンロに蒸し器をかけておいてから、設楽はまずはと鍋を出した。
「さます時間がかかるから、桂花醤から始めましょうか」
「桂花醤は専門店でないと手に入らないですよね、貴重です」
それが自分の手で作れるというのは興味深いと、修はきれいに洗った金木犀の花に目をやる。
「作るのは難しくないのだけれど、花を摘んできれいにして、いろいろ手間がかかるのと、あとは使う人があまりいないから、かしら」
「使い道は多そうなのに、あまり普及していないのは残念ですね」
「そうね。じゃあ、作った桂花醤をいろいろ使ってみて、良い使い方があったらみんなに勧めてみるのはどうかしら」
「いいですね」
そのためにもまずは桂花醤をうまく作らないとと、修は設楽から鍋を受け取った。
「保存を考えるならお酒で煮るのがいいけれど、学生さんが使うならお水のほうが良さそうね」
そのほうが気軽に使えるでしょうからと設楽に言われ、修は水と砂糖を入れて火にかけた。
湯が沸いて砂糖が全て溶けたところに、洗っておいた金木犀の花を入れ、ふつふつと煮てゆく。きれいな仕上がりにするために、浮いてきたあくを修は丁寧にすくい取る。
ちゃんと火を入れないと保存が出来ないし香りも出ない。けれど煮すぎると色が悪くなり香りも無くなってしまうから、タイミングの見極めが大切だ。
修が鍋につきっきりになっている横では円がクレープに挑戦だ。
設楽が見本に焼いてくれたときは、おたまで簡単にくるくると生地を広げていたのに、実際にやってみるとこれが難しい。生地がおたまにくっついて破れ、ぼろぼろひらひらした塊になってしまったり、妙に分厚い場所が出来てしまったり。
かなり四苦八苦したものの、設楽に教えてもらいながら円はなんとかクレープを焼き上げた。
「ちょっと不格好になっちゃったかな」
「初めてにしては上出来だと思うわ。こうやってたたんじゃえば形もきれいに見えるでしょう」
設楽の言うように、きれいな箇所が上に来るようにたたむと、それなりに様になって見える。
出来上がった桂花醤は瓶に詰めて自然冷却を待ち、クレープはお盆に載せて運んだ。ジャムや生クリーム、お茶を縁側に並べてゆく。
運び終えると設楽はまた台所に戻り、蒸して冷ました鶏のささみをほぐして持ってきた。
「よかったらねこさんたちにどうぞ」
ささみの小皿を修と円に渡すと、人はクレープ、猫はささみのおやつタイム。
クレープやポプリの出来を見せ合いながら、おしゃべりに花が咲く。
「これ、桜庭さんの分。……うまく出来てるか分からないんだけど」
「能美子ちゃんありがとー。大事にするね。へー、縞模様が綺麗だね」
円はモイストポプリの瓶を目の高さにあげてしげしげと眺めた。
「修ちゃんにはこれをあげるのだ!」
真央は半ば強制的に修の手にサシェを持たせると、さっそくクレープに手を伸ばす。
「うまうまなのだ!」
「うん、おいしー」
美咲紀も笑顔でクレープを口に運ぶ。
能美子もつられて頬を緩めかけ、はっと急いで顔を引き締めた。嬉しさはぐっと胸の中に押し込めて、みんなとのクレープタイムを密やかに楽しむ。
冷め切っていない桂花醤をひと匙、修は試しに紅茶に入れて飲んでみる。作ったばかりだから味に深みはないが、瑞々しい金木犀の香が口中で咲く。
「それにしても立派な樹ですね。何年くらいの樹なんです?」
縁側に腰掛けたまま、修は金木犀の木を見上げた。
「さあ、どのくらいなのかしらね。私がこの家にお嫁に来たときにはもうあったから、かなりの年数だとは思うんだけど」
「こんなにきれいに咲いてるってことは、この木はとても大事にされているんですよね!」
木を見れば分かる、と美咲紀が言うと設楽は恥ずかしそうに笑う。
「でもね、私が剪定すると翌年は花が少ないって、よくお義母さんに言われたものよ」
懐かしむ設楽の表情は柔らかい。
「この樹と年月を過ごしてきたのなら、思い出も沢山あるんでしょうね」
自分が生きてきた時間よりもずっと長く、設楽はこの金木犀とともに生きてきたのだと、修はその年月を思う。
「もちろんたくさん……といってもそんなにたいした思い出はないけれど」
何を思いだしているのだろうか。設楽は軽く微笑んでいる。
「宜しければ、聞かせてもらえませんか?」
言ってしまってから、円は慌てたように付け加える。
「ぶしつけにごめんなさい。でもこの金木犀、設楽さんの想いが伝わってくるようで。だから金木犀にどの様な思い出があるのか、ボクも知りたいなって思ったの」
「ううん、それは構わないのだけれど、何か話せるようなことがあったかしら……」
金木犀の思い出はあまりに日常と結びついていて……と設楽は考え込む。
「それなら最初にこの金木犀を見たときはどう思いました?」
修に促されて、設楽はああと何かを思い出したように話し始めた。
「ここにお嫁に来たとき、正直、何にもない所に来ちゃったって思ったわ。今よりずっと何もない時代だったし、私が生まれ育った場所は一応都会だったから」
夫のことは好きだったし、ここから去りたいというほどの気持ちでもなく。ただ、それまで近くにあった便利なもの、楽しい場所が恋しくて。自分にとって居心地が良かった場所を懐かしんでばかりいた。
そんなある日のこと。
何の気無しに庭に掃除に出たら、金木犀が咲いていた。
「たくさん咲いている花は小さくて可愛くて、辺りにはいい匂いが漂っていて。しばらくみとれてたわ。私ね、それまでそこにあるのが金木犀の木だなんて知らなかったの。というより、庭にあるのが何の木なのかなんて考えたことがなかったのよ」
庭にある名前も知らない木の1本。
それが金木犀だと分かって、そして気付いた。
「ここには何も無いって思っていたけど、本当は私、なんにも見てなかったのよね。だから金木犀も、花が咲くまで気がつかなかった。見ようともせずに何もないって嘆いていたんだ、って。それから、金木犀のことを勉強したり、いろんなものに目を留めるようになったりするようになって、そうしたらどんどんこの場所が好きになっていったの」
ロマンチックでもドラマチックでもない思い出だけどと、設楽は恥ずかしそうに笑った。
「金木犀のことを勉強したから、ポプリとかにも詳しいんですね。金木犀の花言葉……えっと、『謙虚』『気高い人』だったかしら」
他にもあったかと能美子が考えていると、設楽が後を続ける。
「あとは、初恋、変わらぬ魅力、思い出の輝き。陶酔なんていうのもあったわね」
「どれも由来が想像できる花言葉ですね」
修の言葉に、能美子はそうねえと金木犀を見上げた。
「控えめな花に綺麗な匂い……って言うのは表現おかしいかしらね……?」
「ううん、イメージに合ってると思うよ。甘くってすっきりしてて、ほんとに綺麗な匂いがする」
円は目を閉じて、金木犀の香りを吸い込む。
「私、金木犀好きですよ。香りも花も」
能美子が言うと、設楽は嬉しそうに目を細めた。
「良かったわ。今年は私以外にも金木犀を楽しんでくれる人たちがいて」
「今年だけでなく、来年も是非寄せてもらいます」
修の言葉に、設楽はあらと微笑む。
「そんな素敵な約束をしてもらったら、今から来年が楽しみで仕方なくなってしまうわね」
「来年と言わず、明日もサシェを作りに来たいのだ。たくさん作って他の人にもあげたいのだ……いいかなぁなのだ?
真央は上目遣いに設楽を見る。
「ええどうぞ。それなら何か可愛い布がないか探しておくわね」
「ばんざーい、なのだ!」
そう言いながら真央はマーブルの手をばんざいさせた。
ずっと先の約束、すぐ先の約束。
金木犀の香が呼び寄せたのは、今の団らん、そして先に続く日々の彩り。
ほんのりと金木犀の香を……ポプリだけでなく身に移り香を纏わせて帰って行く皆を、設楽は手を振ってずっと見送ったのだった。
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ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年03月15日
参加申し込みの期限
2015年03月22日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年03月22日 11時00分
参加キャラクター一覧
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