this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
金木犀の招き
<< もどる
1
2
3
4
5
◆優しい場所◆
穏やかな午後、
何ということもない裏通りを、
朝鳥 さゆる
は歩いていた。
本当ならこんな時間に高校1年生が外を歩いているのはおかしい。学校で授業を受けているはずの時間帯なのだけれど、さゆるにとってはこちらのほうがいつもの日常だ。
留年してまた1年高校生活が延びるなんてのはごめんだから、日数不足にならない程度に通ってはいるが、それ以外の日は気ままに街中をぶらついている。
幸い、と言っていいのか、こんなところで何をしていると声を掛ける人はいない。実際よりもかなり大人びて見えることもあり、ごく普通の態度で歩いているさゆるは学校をさぼっている高校生には見えないのだろう。
(夜までには時間がある……)
1人で過ごすには広すぎる家に帰るにしても、また誰か適当な相手と一夜を過ごすにしても。
そう考えてさゆるは気怠く息を吐く。
秋とはいえ、午後の日差しはしらじらしいくらいに明るくて、嗜好まで鈍らされそうだ。
と。
ふと甘い香りを感じてさゆるは顔を上げた。
どこかで嗅いだことのある……ああ、金木犀の香りだ。
我知れず、さゆるは香りのしてくる方角へと足を向けた。
金木犀の木は見つけられなかったけれど、さゆるは特に香りの強い辺りで足を止めた。
甘い、けれど爽やかな自然の芳香を、目を閉じて味わう。
「ねえ、そこのお嬢さん、金木犀はお好きかしら?」
掛けられた声に目を開ければ、垣根の向こうから老婦人が微笑みかけている。
ポプリやシロップにはあなり興味を惹かれなかったが、良い時間つぶしになるかも知れないし、この香りの木を見てみたかったこともあり、さゆるは老婦人の招きに応じることにした。
家の裏手、生け垣からは覗き込まないと見えない位置にこんもりとした金木犀が1本ある。
あまり近くだと匂いに酔ってしまうかもしれないと言われたが、さゆるは木の間近まで行った。
すべてが金木犀に染め上げられて何も考えられなくなるほどの香り。
それに比して、ささやかに小さな花。
芳香の源をさゆるはただただ見上げた。
どのくらいそうしていただろう。
「良かったらお茶でもいかが?」
老婦人が控えめに声を掛けてきた。
「あ、いえ、どうぞお構いなく」
軽く頭を下げて辞すと、そう、と頷きながらも老婦人は気遣わしげにさゆるに視線を当てる。
「こんなこと聞いていいのか分からないけど……何かあったの?」
「え?」
一瞬何を聞かれたのか理解できず、さゆるは聞き返す。
「ずっとひとりで金木犀を見て、物思いに沈んでいるように見えたものだから……」
つい気になって、と言う老婦人にさゆるは困ったような微笑を浮かべた。
「少し、嫌なことがあったの。でも大丈夫。少しは心が軽くなったわ……ほんの少しだけど。ありがとう」
とさゆるは身を翻す。嘘をついているのは後ろめたいから、もうここからは立ち去ろう。
それを老婦人は少し待っててと留めると、家の中から小瓶を取ってきた。
「良かったらこれを持っていって」
両手で包むようにさゆるにモイストポプリの瓶を持たせる。
「金木犀の香りがちょっとでも助けになるといいのだけど」
優しく送りだしてくれる老婦人に嘘をついていることを内心で詫びながら、さゆるはその家を後にするのだった。
可愛い2匹の子ども、ゴールデン・レトリバーの桜と之彦を連れての散歩途中、
十六夜 霞
は風に乗って漂う香りに目を細めた。
「あら、良い匂いねぇ」
「わん!」
「……わふ」
2匹も賛同するように答える。
「このお家かしらね」
香りの強さであたりをつけてちょっと覗き込んでみると、霞に気付いた設楽がやってくる。
寄っていかないかと誘われて、
「クレープやジャム……美味しそうねぇ」
考えながら霞が2匹に視線をやると、どちらも尻尾をぱたぱたと振っている。どうやら桜も之彦も設楽との交流に乗り気のようだ。
「せっかくのご縁だし、少し寄せていただこうかしら」
「金木犀の他は何もない所だけど、この季節だけのものだからぜひどうぞ」
たくさんの人に見て貰えた方が金木犀も喜ぶだろうからと、設楽は霞を庭に案内した。
金木犀のよく見える縁側には、すでに先客がいた。
「お先にお邪魔しております」
袈裟姿の
齋藤 智照
は霞に軽く会釈で挨拶する。檀家回りの帰り、設楽に金木犀を見ながら一休みしていかないかと勧められたのだ。
「今、クレープとお茶を用意するわね」
あまり長く引き留めても悪いから、と設楽はいそいそと台所に向かう。
「私も手伝うわ。――いい子で待っててねぇ」
桜と之彦に声を掛けてから、霞は設楽の後を追っていった。
台所に置かれた小さな冷蔵庫から設楽はラップのかかったボールを取りだした。
「それがクレープの生地?」
「ええ。作ってすぐだとうまく伸びないから、寝かせてあるの」
「クレープでもそういうのがあるのねぇ。どら焼きや利休饅頭の皮を寝かせると美味しくなるようなものかしら」
霞は和菓子は作ったことがあるけれど、クレープを作るのは初めてだ。設楽にコツを聞きながら、フライパンに生地を広げて金木犀を散らし、慎重に焼き具合を見る。
最初の1枚はひっくり返すときに破れ、厚みも不均一なクレープになってしまったけれど、焼くごとにコツをつかみ、きれいなクレープが出来るようになってゆく。それが楽しい。
「十六夜さんは器用なのね。もうこんなに上手に焼けるようになって」
「器用というのではないけど、こういうことは嫌いじゃないから」
こんな風におしゃべりしながらお菓子を作るのはいつぶりだろう。楽しくなって霞は次々にクレープ生地をフライパンに広げた。
気付けばかなりの枚数が焼き上がっていたクレープと、それに添えるジャム、金木犀で香り付けしたお茶などを載せたお盆を設楽と手分けして持ち、霞は軽く首を傾げる。
「……ちょっと焼きすぎたかしらねぇ」
「余ってしまったらお土産に持って帰ってもらえば……」
返事をしかけた設楽は、ふと生け垣の向こうに目をやり。
「食べてくれる人が増えるのが一番かしら。ちょっとお誘いしてみるわね」
お盆を縁側に置くと、つっかけを引っかけて生け垣のほうへ歩いていった。
城山 水樹
は生け垣の前を行ったり来たり。
「たぶんこの辺りだと思うけど」
香りを頼りに金木犀を探すが、道の側からでは木は見えない。
けれどこんなに香るのだからきっと綺麗に咲き乱れているのだろう。
水樹が金木犀の花を想像していると、生け垣の向こうに小柄な老婦人がやってきた。さっき見た表札には設楽とあったから、たぶんこの人がこの家に住む設楽なのだろうと水樹は推測した。
「こんにちは、設楽さん。とてもいい香りがしたので、つい足を止めてしまいました。金木犀ですよね」
そう話しかけると、老婦人は曖昧な返事をしながらしげしげと水樹を眺めた。
何かおかしなことを言ってしまったのかと、水樹がいぶかっていると。
「もしかして、城山さんのところの娘さん?」
「え、あ、はいそうですけど……」
いきなり名前を言われて水樹は戸惑った。どうして設楽が自分のことを知っているのだろう。記憶を探るが出てこない。
設楽のほうは、ああやっぱりと手を打ち合わせる。
「憶えていないかしら。前、うちの主人が取り寄せた本を持ってきてくれたことがあったでしょう? まあまあ、ほんとに綺麗になって」
設楽は懐かしそうにしているけれど、水樹はまだ思い出せない。
(設楽……したら……したらの……)
記憶のどこかに引っかかっているのだけれど……と考えていて、水樹はあっと声を上げる。
「したらのおじさん? うちの店に来てくれてた」
水樹の実家は旧市街で古本屋を営んでいる。今でも店の看板娘として駆り出されることがあるし、子どもの頃はよく手伝いをしていた。設楽はそのときに見かけたことのある客だ。
あまりしゃべるほうではなく、黙って本を選んで黙って買ってゆく。ごつい手で大切そうに本を扱うのが印象的な無骨なおじさんだ。
そういえばと思い出せば、したらのおじさんの家に本を届けたときにおばさんが出てきてお菓子をくれた。あれが今目の前に立っている『設楽さん』ということか。
「モデルさんになったとは聞いてたけど、こんなにいい娘さんになってただなんて、まあ」
あまり嬉しそうに言われるのでちょっと照れてしまう。
「今ね、金木犀のクレープを焼いたのよ。ちょっと作り過ぎちゃったから、時間が大丈夫なら食べていってくれると嬉しいんだけど」
どうかしら、と設楽は水樹を誘う。
今日は大学の授業も早めに終わったし、モデルの仕事は明日からなので特にこれといった用事もない。せっかくだからと水樹はその誘いを受けた。
縁側に並んで腰掛け、金木犀のクレープとお茶を楽しみながら話をする。
「桜も欲しいの? じゃあ少しだけねぇ」
話に混ざるように見上げている桜と之彦に霞は少しだけクレープを分けてやった。
話の内容はたわいもないことばかり。最近の寝子島の話、季節の話、金木犀の話。特に変わった話をするわけではないのに、そうしてとりとめもなく話をするのんびりとした時間は良いものだ。
「設楽のおじさんって本を読みそうなタイプに見えないのに、よくうちに顔を出してたから、印象に残ってたんですよね」
水樹は懐かしそうに、生前の「したらのおじさん」のことを話した。
「あの人が普通の小説とかを読んでるのは見たことないんだけど、古い時代のことを調べるのが好きだったから。目を悪くしてからも、根気よく本を開いていたわ。私にはさっぱりだったから、詳しく聞いたことはなかったけど、今になってからもう少し話を聞いておけば良かった、と思うの」
そのときは物好きとしか思えなかったんだけど、と設楽が言うと、そういうものよねぇと霞も呟く。
「いるときはいるのが当然すぎて、話しかけても返事かかえってこない日が来るだなんて、考えてもしないのよねぇ」
小さく息をつくと、霞は設楽に尋ねた。
「設楽さんはいつからここに住んでいるの?」
「この家に嫁いできてからずっと……」
霞の問いに答えて、設楽は金木犀を見上げた。
「あっという間のことみたいなのに、気付けば随分経ってしまっているものね。ここに来たときは金木犀ももう少し小振りだったのに」
金木犀の感覚だとこの年月はどのくらいなのかしらと、設楽は呟く。
「金木犀はかなり長生きな木ですからね。人ともかなり感覚は違うことでしょう」
智照は愛おしむように金木犀に目をやった。
「日本にある金木犀はすべて雄株ですから、実を結ぶことがありません。咲いている間の香りは格別ですが、その花の命も1週間ほど。はかない存在の花です」
秋の短いひととき、木いっぱいに花をつけ、胸苦しくなるような甘い芳香を放ち……けれどすぐにそれをすべて落としてひっそりと佇む。
その潔さを好ましく思うのと同時に、惜しくも思う。
「花の命は短いもの。だからこそ愛されるのでしょうか。こうして名残を惜しむ人の手によって香が留められるのも」
と智照は設楽が出してきていた金木犀のジャムやポプリに視線を移した。
去りゆくものは何故か寂しく心に迫る。いや、寂しいのは去られる側の感傷か。
「花はただひたむきに咲き、そして散っているだけなんでしょうけどもねぇ。この花のうつろいを『かなしい』と感じるのは、人が人である所以でしょうかねぇ」
愛しい、と書いて、いとしいと読み、かなしいと読み、おしいと読む。
いとおしいからこそ、失われるのが悲しく惜しく感じられる、大切なものに向けられる気持ち。
場にしんみりした雰囲気が漂う。
「つい説法のような語り口になってしまいましたねぇ。しんみりさせるつもりはなかったのですが」
これも職業病というものですかと、智照は穏やかに茶を啜る。と、設楽がしみじみと言った。
「ほんとに、すっかりお坊さんらしくなって。昔のやんちゃさんが嘘のようね」
茶を噴き出しそうになったのを、智照は堪えて飲み下す。
「設楽さん、それは言わないお約束ですよー」
「え、意外。そんな過去が?」
水樹は驚いたが、霞はふふっと思い出すように笑う。
「そういえば、いつからか名前を聞かなくなっていたわねぇ」
いやはや、と智照はつるりとした頭に手をやった。
「こうして偉そうに説法する坊主が、耳を傾けて下さる方々に過去を知られている、というのはどうにも敵いませんねぇ……」
大きな蛇が出てこないうちに、と智照は縁側から立ち上がった。
「そろそろお暇いたしましょう。お邪魔いたしました」
僧侶らしい仕草で手を合わせ、皆に軽く頭を下げる。
「あ、あたしもそろそろ戻らないと。ごちそうさまでした」
「それなら私たちも失礼しようかしらね」
お散歩に戻る? と霞が声を掛けると、庭で待っていた桜と之彦が飛んできて尻尾を振った。
「よかったらお土産にどうぞ」
設楽が出してきた中から、水樹はジャムとポプリを、智照はポプリを選ぶ。霞は私はこれを、とクレープを包んでもらった。家に帰ったら、夫の仏壇に供えて秋を届けるのだと。
「また来ますね」
家からもそんなに遠くない場所だし、と水樹は再会を約束して帰途についた。
智照は立ち去りがたく金木犀を見上げたあと、設楽に視線を戻す。
「また来年の今頃にも、こうしてお花見させていただきにうかがってもよろしいでしょうか?」
「ええ。ぜひいらしてね。他にも来てくれそうな人がいるから、来年までに別の金木犀のお菓子を練習しておこうと思ってるの」
答える設楽はとても楽しそうだ。
「学びの張り合いに出来る約束があるというのは良いことです。では私も、今度は何かひとつご披露できるよう準備をしておきますからねぇ」
「まあ、何を披露してくれるのかしら?」
「それも来年のお楽しみ、ですねぇ。それでは」
去ってゆく後ろ姿を見送ってから、設楽は庭に戻った。
淡橙色の小花をいっぱいに咲かせた金木犀が、誰にも見てもらえないのがどこか不憫に思えて、道行く人に声を掛けていたのだけれど。
「人との触れあいが必要だったのは、私のほうだったのかも知れないわね……」
金木犀をきっかけに、新しい出会いがあって、久しぶりの再会があって、懐かしい顔の成長にもに会えて。
先の楽しみまでもらった。
「やっぱり私、この季節が大好きだわ」
設楽はそっと目を閉じる。
爽やかに甘い金木犀の香り漂う、優しい季節。優しい島の一角で。
<< もどる
1
2
3
4
5
このページにイラストを設定する
あとがき
担当マスター:
ねこの珠水
ファンレターはマスターページから!
大変に完成が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
仕事が忙しくなり、それに引きずられるように体調を崩し、
それでも忙しい時期だから頑張らないと……と思っているうちに、
がたがたっと動けなくなってしまいました。
こんなに遅くなってしまいましたが、参加者の方の素敵な
アクションのお陰で、設楽も思いがけなく楽しいひとときを
過ごせたことをお礼申し上げます。
申し訳ありませんでした、そしてありがとうございました。
↑ページトップに戻る
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
金木犀の招き
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
ねこの珠水
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年03月15日
参加申し込みの期限
2015年03月22日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年03月22日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!