怪人セブンの復讐｜リアクション

怪人セブンの復讐

　およそ20分後、迷宮を抜けた先の階段を昇った撲滅隊は、通路の先にある飲食店のホールに辿り着いた。
　その飲食店こそ、メサイアのアジト。
　そして、仲間の待つ場所である。
「……来たか」
　首領ビリオンは椅子から立ち上がると、恭しく頭を垂れた。
「ようこそ、メサイアのアジトへ。俺の名はビリオン。勿論、これはメサイアの中での通称だ。本名は九重零次（ここのえれいじ）という」
　礼節を弁えたビリオン――九重の態度に、撲滅隊の面々は動揺を隠せない。
「『九』つ『重』ねた『零（ゼロ）』を超えた『次』に至る者……。そういう願いを込められて、俺の父方の祖父が名付けてくれたそうだ」
「なるほどですねー、９桁の零の次の位は“10億”、つまり英語で“Billion”ですかー」
　ちょっと感心しながら屋敷野は頷いた。
「みんな、もう戦う必要はないのだ！」
「しゃおりーちゃん！」
　李が小島とハグをして再会を喜んだ。
　拘束具もされておらず、そのまま最上階にいたようだ。
「……僕たちは、どうやら叢雲に、いや……加納泉月花にハメられたんだ」
　逆巻も部屋の奥から姿を現した。
　メサイアのヒーラーもれいびに治療され、包帯を巻いた姿の十文字と風雲児も一緒だ。
「私たちに、ちゃんと説明をしてくれるのよね？　逆巻くん？」
　神野の質問に、逆巻は無言で頷いた。
「説明はしゃおりーがやるのだ！」
　李は小さな体を弾ませながら手を挙げた。
「しゃおりーが油断してここに連れてこられてから、しゃおりーはメサイアのみんなにいっぱい話し掛けたのだ。だって、菜々緒や……『憤怒』事件の龍平みたいに事情があるかもしれないって思ったからなのだ」
　李曰く、最初こそ銃で脅されて生きた心地はしなかったという。
「でも、しゃおりーは諦めなかったのだ。相手の目を見て話せば、絶対に分かり合えるはずなのだ。だからしゃおりーは全部本当のことを言ったのだ。友達が叢雲の人質になっていることや、メサイアのみんなを生け捕りにして連れて来いと言われていること、全部全部、正直に話したのだ……！」
「私は初め、李君の言う事が信じられなかった。しかし、逆巻君の話を聞いて確信した。あの女狐――加納は我々を潰し合いをさせようとしたのだ」
「やっぱり共倒れを狙っていたのね……！」
　北原は自分の推理が当たって、複雑な心境だ。
（嬉しいけど、それじゃ、メサイアは本当に敵じゃないの？）
　この時、北原の心の中に黒い意思が芽吹き始めていた事に、自身も気が付いていない。