怪人セブンの復讐｜リアクション

怪人セブンの復讐

《撲滅隊の福音》

　３Ｆの大部屋。
　撲滅隊のメンバーたちは、予定通り、この部屋に拠点を作った。
　だが、状況は予定通りに進んでいない。むしろ、最悪とも言えた。
　２Ｆから黒依と神野、そして突入Ｄ班のシグレ、楢木、笹森が協力して骨削をここまで搬送してきた。
　全身が真っ赤に染まった骨削の姿に、一同は息を呑む、顔を背けるなど、反応は様々だ。
「……銃創が４発。失血が酷いわね」
　黒依は下着姿の骨削の傷の具合を確認。
　彼女は迷わず支給されたナイフで掌を裂いた。
「三城さん、ろっこんでサポートを……！」
「わかりました！」
　三城は犬神から預かっていたタオルで骨削の体を拭いたあと、その体に添い寝をした。
　そして、骨削の体を優しく抱擁。
「傷ついた先輩も素敵ですが心が痛みます……！」
　しっかり相手への愛を囁くのも忘れない。
　これによって三城のろっこん『ありったけの愛情表現』が発動。
　骨削の体の傷が徐々に癒えていく……。
「血まみれの先輩よりも、元気な先輩の方が何倍も素敵です！　だから早く元気になってください！」
　本来、三城のろっこんはとても微力で、骨削のような重体者には焼け石に水の効果である。
　しかし、このビル全体を変異させるほどの強い神魂が、彼のろっこんを一時的に強化した。
　流石に銃創は完治出来ないが、それでも内部の血管を修復させて止血する程度の治癒力は発揮している。
「私のろっこんは、体の内部を治療するためには対象の人に私の血を飲んでもらわないといけないの。でも、骨削さんは今、意識がないから無理やり飲ませられないわ。三城さんがいてくれて本当に助かった……」
　三城のろっこんに感謝しつつ、黒依もろっこんの準備に取り掛かる。
　左手の手袋を外す。
　そこに掘られた“七芒星を囲むヤドリギ”の刺青に口づけをする。
　既に刃で裂いた掌は鮮血が溢れてきている。
　黒依は銃創に己の血液を塗布しながら、生還の願いを込めて歌いだす。

　私は赦す　あなたの罪を
　私は癒す　あなたの傷を
　たとえ離れたとしても
　ともに帰ると私は誓ったのだから

　私は願う　フツウの明日を
　私は歌う　セツナの今日を
　誰ひとり欠かずに夜を
　越えて帰ると私は誓ったのだから

　歌いながら滴る自身の血液を骨削へ塗りこむ黒依。
　すると……。
「すごいです……！　銃弾が、体の内側から押し出されてきています！」
　三城が興奮気味に目を見張った。
　逆再生映像を見ているかと錯覚するほど、血液を目に見えて傷が塞がっていく。
　そして内部に留まっていた銃弾が、再生する肉に押し戻されて、体の外へと排出されているのだ。
　この効果に、黒依自身も驚いていた。
　勿論、黒依のろっこんの成長も大きな要素でもある。
　彼女のろっこんは前回の“地獄の３ヶ月”を経験したのち、急激な成長を遂げていた。
（でも……、これはもはや“治癒”ではなく“再生”ね）
　押し出された銃弾を摘んで体から抜き取った。
　そして黒依は疑問を持った。
（どうしてこの建物にこんな強力な神魂が？）
　きっと、なにかカラクリがあるに違いない。
　そう考えながら、自然と最上階のある天井を見上げる黒依。
「すっげー！　黒依、俺の腕の骨折も治してくれ！」
　包帯で釣り上げた腕を見せ付けに楢木がやってきた。
　黒依は血まみれの掌を楢木に差し出した。
「楢木さんの骨折は“体の内部の怪我”ですから、私の血液を飲む必要があるのですが……」
　血を飲むという行為に若干気後れするものの、骨折を治すためだと言い聞かせて楢木は覚悟を決めた。