怪人セブンの復讐｜リアクション

怪人セブンの復讐

【撲滅隊の懸念】

　時間は少し遡る。
　目隠しとヘッドフォンを外された撲滅隊の面々。
　彼らはバスの中にいた。
　どうやら表明した全員がここにいるわけではなく、黒服たちの説明によれば、２台のマイクロバスで現地へ向かうとのこと。
　ただし、現在地を特定されないように窓のカーテンは締め切ったまま、車内は携帯電話の通話並びに通信が出来ないように妨害電波発生装置が取り付けられているそうだ。
（……アテがハズレたねぇ）
　２号車に収容された骨削瓢は、アンテナの入らないスマホの液晶画面を忌々しげに眺めていた。
（まぁ、地図アプリで場所が特定できるようなズブズブな管理はしてないだろうとは思ってたさぁ。しかし、これで外部への連絡手段もなくなってしまったわけだが）
　骨削が撲滅隊へ志願したのは、真っ先に外部と連絡を取る機会を伺っていたからだ。
　だが、それは現地到着まで不可能となった。
（仕方がないよぃ、現地着いたら隙を見て行動する他なさそうだねぇ）
　１人、不穏な考えを抱いていることに、周囲はまだ気が付いていない。

　一方、一号車ではアダム・スメルディンが再び暴れ始めた。
　原因は彼が凶器を持っていると見られたからだ。
「その怪しい酒瓶はなんだ？　よこせ！」
　酒瓶を没収されたアダムは、黒服たちと車内で格闘しだした。
　それを慌てて止めに入る日暮ねむると刻人・F・ミセリアの２人。
　日暮は黒服とアダムの間に割って入る形で体をすべり込ませると、黒服に自身のろっこんで睡魔を呼び寄せる。
「おっと、ごめんね？」
　日暮も寝不足を装ってふらつくと、酒瓶へ手を忍ばせて奪還した。
　眠気に襲われた黒服は、酒瓶が引き抜かれたことに気が付いていない。
「ふぁあ……、なんだ？　急に眠気が……。ああ、その外国人を抑えていてくれ。私は少し仮眠を取る」
　そう言うと、黒服は仲間に撲滅隊メンバーの監視を依頼して寝てしまった。
『何があったかはわかりませんが、今は暴れないでください』
　刻人が英語でアダムへ説得すると、アダムは渋々これを了承したようで、座席へ戻っていった。
　その隣に、日暮が座って笑みを向けてきた。
「ハロー、ナイストゥーミーチュー」
　先程奪い取った酒瓶をアダムに返却しつつ、カタコトの英語で会話を図ろうと日暮は試みる。
「アイアム、モレイビ。イフ、ユー、スリープ。ユア　パワーアップ！　オーケー？」
　カタコト過ぎて全く意味が伝わらない。
　と、ここで刻人が日暮の通訳を買って出た。
「助かりました……。僕のろっこん、眠らせた人を強化できるんです。この人、すごく強そうだし、強化してあげたいなぁって」
「分かった、伝えてみるよ」
　刻人の通訳により、ようやくアダムの承諾を得ることができた。
「それじゃ失礼。リラーックス、リラーックス……」
　日暮はアダムの額に手を当ててろっこんを発動。
（眠らせるだけのいままでのろっこんがAct1なら、覚醒後の強化能力は、いわばAct2だね……）
　その名も『In to the Sleep　Act2』！
　アダムはほどなくして熟睡。
　それを確認した日暮も、自分の額に手を当てて自己強化を図る。
「僕も到着まで仮眠させてもらうよ。おやすみ……ふぁ、ぁぁ～……」
　数秒後、１号車内にて静かに日暮は寝息を立て始めた。