＜急募＞一日でぶどう500キロさばいて！＜つまみ食い歓迎＞｜リアクション

＜急募＞一日でぶどう500キロさばいて！＜つまみ食い歓迎＞

　キッチンではケーキ＆タルト作りが急ピッチで進められていた。
「ケーキ用のジャムお待たせなのだー」
　後木真央が運んできたジャム入りボウルを花厳望春が受け取る。
「こっちの準備は万全だ」
　すでに基本となる生地は完成している。小麦粉、バター、砂糖、卵を適量ずつ合わせたシンプルなものだ。
「まずは生地だけを型に流し込みまして〜」
　その上にジャムだけを少し薄めに流す。さらに今度は生地とジャムを混ぜてから型へたっぷり注ぐ。3色模様の色合い豊かなパウンドケーキへと仕上げる。
「あとは焼くだけだ」
　トースターでじっくり焼き上げる。
「楽しみなのだー」
「絶対美味いって保証するぜ」
　自信満々の望春。ボウルに残ったジャムを指ですくって舐める。
「素材がこんなに美味いんだからな」

　タルト組は浅山小淋と常闇月。さらに、
（料理が楽しくてタルト作りまで参加しちゃったわ）
　無給で働く真境名アリサの姿も。
『そろそろいい感じです』
　製菓部の小淋がスケブを掲げる。
「じゃ、取り出すわよ」
　アリサがオーブンを開く。
「火傷に気をつけてください」
　月の忠告にうなずき返してから慎重に引き出す。
　大きな丸型のタルトがいい具合に焼き上がっている。まだぶどうはのせられていない仮焼きの状態だが、
「うーんいいにおい」
　キッチンをバターの芳醇な香りが満たし、全員の胃袋を刺激する。
『ジャムと実を盛りつけていきましょう』
　3人で贅沢にネコーゼを敷きつめ、さらにジャムをたんまりかけていく。
「そして再びオーブンに」
　美味しく焼き上がりますように、と願をかけながらアリサがオーブンを閉じた。
（大会までには間に合いそうですね）
　ホッと一安心の月。
　さらに、お客へのお土産用食べきりサイズの小さなタルトの作成にとりかかる。
　その一方で、
（うわめっちゃいいにおい）
　鼻をひくつかせながら御剣刀がキッチンへと誘われやって来た。
（タルトかあ）
　焼けていく様を凝視。
「御剣さん」
　背後から月に声をかけられビクッと肩をあげる。
「やあ、常闇じゃないか（目、目がこええ）」
「まさかでき上がったものをつまみ食いする気では？」
「そ、そんなまさか」
　ハハハハ、とごまかし笑いで貫き通し、キッチンを去って行く。

　農園内の広場では大会の準備が着々と進められている。チラシやポスターを見かけたぶどう狩り客も興味深そうに見守っている。
「ぶどうの量はこのくらいでいいだろう」
　梅戸有留が運んできたぶどうたちを見て、大会総指揮の八神修が言う。
「ぶどう、もうかなりさばけてきていたよ」
「そうか。じゃあスパートをかけよう」
「大会はどういう風にやるの？」
「まずは予選として、ぶどうの早食いをやってもらう」
　早く食べ終わった人上位数名によって、決勝戦を行う段取りだ。
「そろそろエントリーを開始して人を集めよう。参加者観戦者含め、できるだけたくさんだ」
「うん」
　また会場が慌ただしく動き始める。いよいよ大会のスタートだ。

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