＜急募＞一日でぶどう500キロさばいて！＜つまみ食い歓迎＞｜リアクション

＜急募＞一日でぶどう500キロさばいて！＜つまみ食い歓迎＞

「甘くて、すごく美味しいー♪」
　つまみ食いした呉井陽太の正直な感想が太陽へ昇っていく。
「うん、美味しい」
　檜扇舞華も静かに驚くと、ネコーゼを拾っては肩掛けの木籠へ放っていく。格好はメイド服だ。
「ちょっと傷ついていても、味はなんも問題ないねぃ」
　そう言って陽太、さらにもう一粒つまみ食い。
「こんな美味しいのをそのままにしておくなんて、もったいないもったいない」
　さらにもう一粒、もう一粒……、拾ってカゴに入れながら、つまみ食いもしながら……。
「ぶどう、ぶどう、ぶどう〜」

「アビャー！」

　ぶどうがしゃべった！？
「と思いきや武道君。ビックリした？」
　勢いづいて陽太、ぶどうはぶどうでもブドーこと志波武道の後頭部を鷲掴みにしていた。
「だぁれ俺を狩ろうとシチャッタの！」
　って陽太くんじゃなぁい。朝っぱらから武道のテンションはイケイケだ。
「ごめんごめんよん」
「メッ！」
「ごめんってばー。悪気は……あったけどー」
「あったのかよ！　ってそんな漫才やってる場合じゃないよっ時間は一刻を争うんだ！　開園の9時までにできるだけ拾おうぞ陽太くん」
「だねん」

　広大な農園にアルバイターが着々と集い、500キロの落ちたネコーゼは回収されていく。
「よかった……本当に」
　愛情込めて育てたぶどうたちをあきらめずに済みほっと一安心の園長。そんな彼の肩を叩きながら同調する者がいる。
「よかったのだ、ネコーゼを楽しみにしている人たちにたくさんふるまえるのだ園長もこれ以上の喜びはないのだ！」
　元気印の後木真央だ。
「ええ、ええ、本当に」
　しみじみの園長。
「来年からはもっと天候対策はしておくといいのだ。ところでここの農園に加工施設はあるのだ？」
　首を横に振る。そのまま食べて美味しいフルーツのそろった小さな農園、ないのは仕方がない。
「ではカフェのキッチンを借りてみんなで手作りするのだ」
（そして売りさばいて利益にするのだビッグマネーのチャンス到来なのだ！）
　見晴らしのいい小丘から駆け下り、バビューンと調理の準備にとりかかる。

「だいぶ集まりましたね……！」
　軽トラックと袋たちにネコーゼがどっさり詰められているのを見て、御巫時子が頬に流れる汗を拭く。
「そろそろ仕分けもしないといけませんね。そのまま売るのと加工するものと」
　舞華が袋から取り出し、綺麗な布で拭きながら分けていく。これに時子や塔ヶ崎璃亜も加わった。

「お疲れさま、梅戸君」
「佐藤君！」
　平凡属性の仲間がアルバイトに参加。早朝組にやや遅れて、佐藤英二の登場である。
「メール見たよ。僕も農園のアルバイトに参加するよ、よろしく！」
　さらに御剣刀。
「梅戸、今回もよろしくな」
　一緒にネコーゼ拾いに精を出す3人。
「拾い集めたら、梅戸君は何する？」
「僕は料理とか無理だから……売り子かお客さんの案内かな。佐藤君は？」
「ジャム作りに協力しようかなって。その後に試食販売とかして、役得でちょっと食べてみたりとかね」
「俺はジュース作りかな」
　と言いながらネコーゼをポイっと皮ごと頬張る刀。
「これは美味い……捨てるなんて選択肢はあり得ないな」
「ほんとだね」
　英二もつまみ食いする。自然の甘さが口の中に広がった。

このページにイラストを設定する