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黄昏空のその向こう
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山門の扉の影から顔だけ出して、
岡野 丸美
は周囲を窺う。背高のっぽの鬼に触れられたおでこが冷たい気はするけれど、心臓はまだ怯えているけれど、体は動く。
(じっとしていたら危ないかも)
そうっと覗けば、人のかたちしていない者達が恐慌きたして無闇に逃げ惑っている。提灯や灯篭の淡い光に、自分と同じ寝子高の制服を着た子や人間の大人の姿を見つけ、ちょっと安心して扉の影から出た途端、夜の闇と同じ色した大きな犬と鉢合わせた。
「わ、わあっ?!」
通りのみんなを追い回していたものの正体に、丸美は悲鳴を上げる。みんなと一緒に逃げようとして、足がもつれた。よろけて山門近くの柳の木に顔をぶつけた途端、死んだふりをしてやり過ごそうと思いつく。
木の根元に倒れこんで、けれど大きな犬の前肢で背中を踏みつけられた。容赦なく二の腕を噛まれた。
噛まれたのにあんまり痛くないなぁと思う心を、ふわり過ぎる蝶の翅。蝶の幻は、丸美の記憶の中で手斧を振りかざして怒る男に変わる。怒れる男に追われ、みんなで逃げに逃げて、――
「……ん?」
ぎゅっと閉じていた瞼を上げて、丸美は起き上がる。背中にあった犬の前肢はいつの間にか無い。
「おや、大丈夫ですか」
犬の代わり、法衣纏った眼鏡の僧侶が傍らにしゃがみこんでいる。背中や肩の泥を払ってくれる掌や、覗き込んで来る表情の柔らかさに丸美は安心する。
「ここは地獄、……と言うわけでもなさそうですねぇ?」
丸美の手を引いて一緒に立ち上がり、
齋藤 智照
は提灯や灯篭の火よりも闇の色が濃く漂う町へ剃髪の頭を向ける。
(妙なところに来たと思ったら)
「鬼、ですか~」
橋で出会った天狗面の男から受けた言葉を脳裏になぞる。町に迷う人外の化生や己と同じ場所から迷い込んだらしい人々を見遣る。
(奥さんや可愛い娘との記憶は奪われたくはありませんし)
懐から数珠を取り出し、不思議の町に向けて手を合わせる。人のかたちをしておらずとも、難儀しているものがあれば助けの手を伸べるが寺の住職たる務め。
「さ、頑張って逃げましょうか~」
少女を先に逃し、智照住職は町の住人を吠え立て追い回す黒い大犬に向け、朗々と経を誦す。
ともすれば眼鏡に隠し切れない鋭い眼を上げ、大犬の姿した鬼を見据える。少しは動きが鈍るまいかと思ったが、鬼が経に縛られる様子はない。むしろ鬼は黒い鼻先を此方に向けている。興味を惹いたか、耳に障ったか。
「私もまだまだですねぇ」
法衣の裾を絡げ、住職は昔取った杵柄とばかり駆け出す。
今はお寺の温和な住職を務めては居るが、寺の坊主になどなるものかと荒れに荒れた時期がある。その節には学校の先生や警察に散々お世話になった。ついでに捕まるものかと目一杯逃げに逃げた。逃げ延びた実績も少なからずある。
坊主らしからぬ逃げ足で人外の町を駆ける智照を四足の犬がしつこく追い縋る。
「犬?」
山門の前、羽織ったスーツを脱いで筋肉に鎧われた肩に担ぎ、
志波 高久
は闇を走る影に茶色の瞳を凝らす。
(……いや違う)
人でない者も人も誰彼構わず追い回す、黒い犬のかたちした、
(得体が知れないナニカってやつか?)
僅かの間に暮れた空へ鋭い視線を投げる。きつく結んでいたネクタイを緩め、深く息をする。瞬きのうちに異変に巻き込まれる状況には、ここ暫くの間に随分慣れはした。
黄昏から藍に染め上がる空も町も、感傷を誘う風景ではあるが、
(そうと言ってられないか)
大通りを駆ける僧侶を追い、大犬が駆ける。同じに逃げる人面犬や落武者の格好した骸骨達を通り掛けの駄賃とばかり噛みつき、体当たりで蹴倒す。
己を取り囲む現状は、ひどく慌しい。
(観光できる様子じゃないか)
短く静かに笑む。笑みを掻き消し唇を引き結ぶなり、現役の競輪選手である高久はその鍛えた足で地を蹴る。全力疾走する。
大犬が鋭い牙剥き出して今しも噛み付こうとしていた二股の猫の脇に滑り込む。猫の首を掴んで犬から引き剥がし、真横で光を揺らす石灯篭へ向けて石畳を踏む。跳ぶ。
灯篭の先を片手で掴み、体を高く持ち上げる。もう片手に掴んだ猫を通りを挟む家の屋根に乗せて逃がし、自身は唸る大犬の前に着地する。
橋の上で出会った天狗面掛けた男は、記憶を奪う鬼が出るのだと言っていた。周囲の妖達の様子を見るに、目前で四肢を突っ張り牙剥き出して唸る黒い大犬が、『鬼』。
(忘れたほうがいい記憶も確かにあるが……)
「そう簡単にくれてやるほど俺の想い出は安くはないぞ」
息を吐き出すと共、高久は力強く笑って見せる。
蜘蛛の子を散らすが如く町の住人達が逃げ去る。通りに残るは、スーツ姿の高久と、もう一人。
「ふむ、……少しおいたが過ぎますねぇ」
眼鏡の硝子に灯篭の光を反射させ、智照がどこまでも温和に笑む。
「致し方ありませんねぇ」
おっとりと言い、流れる足取りで鬼に近づく。警戒して頭を低くする大犬に、まるで説法するかのように踏み込む。
「少し手荒になりますが、」
法衣の裾が揺れる。鬼が吠えると同時跳躍する。
「軽く転がしてさしあげましょうか~」
僧の肩にかぶりついたように見えた鬼は、けれど次の瞬間、己が跳躍の勢いを逆手に取られて宙に舞う。背中から石畳に叩き付けられ、まるきり犬の悲鳴を上げる。
「しつこいのはいけませんよ~」
「凄いな」
「いやぁ、お恥ずかしい」
昔取ったなんとやら、と智照は坊主らしく両手を合わせ、転がる鬼に向けて礼をする。けれど通常であれば暫くは身動き出来ぬほどには痛めつけたはずの大犬が、今しも身を起こそうとしているのを見る。
「おやおや」
「逃げるぞ」
泰然とした雰囲気の青年に促され、智照は再び夜道を走る。
「お互い災難ですねぇ」
「全くだ」
法衣の壮年とスーツの青年は疾走の合間に苦笑いを交わす。追われるままに大通りを外れて狭い小路に入り込み、
「おや」
「っと」
行く手を阻んで立つ高い塀に、二人は揃って声を上げる。脱出するべく振り返っても、小路の先には大犬が既に立ちはだかっている。
「……攻撃は最大の防御、だ」
「一理ありますねぇ」
高久は塀の前に打ち捨てられていた桶を、智照は足元に転がる石を拾い上げる。間を置かず投擲しようとして、
「うわわーっ?!」
小路を挟む家の屋根から滑り落ちてきた少女に動きを奪われた。寝子高のジャージにタンクトップな妙に涼しい格好をした茶髪の少女は、地面に打ち付けた尻を擦り、よろよろと立ち上がる。自身を挟んで対峙する男二人と大犬のかたちした鬼を、緑色の明るい眼で交互に見る。大犬に向かい、両足を踏ん張って立つも、
「やややっぱり真央ちゃんチキンですまぬのだ~!」
手にした手製の布袋を投げつけるなり、男二人の背後にある塀に向けて突進する。木製の高い塀に飛びつき、猫じみて爪立ててよじ登り逃走を図ろうとする。
「危ないですよ~?」
投げつけられた布袋を三角耳の額につけたまま、少女の背に飛び掛ろうと小路に踏み込む鬼の前、智照は法衣をひらり翻して仁王立つ。
咄嗟に前に立ったはいいが、少女を上手く助ける手立てがあるわけではない。ただただ、助けたかった。
例え身代わりとなろうとも。
(時間稼ぎにはなりますかねぇ)
飛び掛る鬼を今度は転ばせもせず、己が肩に噛み付く鬼の牙を静かなまなざしで見つめる。記憶を奪う鬼の頭を両腕で締める。
(今回は追いつかれてしまいましたねぇ)
ふと、思う。
見上げた家々の軒に囲まれた狭い夜空は、あの日見た夜空に少し似ていた。
若気の至りとも言うべきか、あの頃は今に比べて少しばかりやんちゃだった。他高生との喧嘩も日常茶飯事、あの日の夕暮れも寝子島漁港の防波堤で殴り合いの大喧嘩をしていて、見かねた漁師に通報された。やってきた近所の巡査さんと黄昏の大捕り物を繰り広げた。
捕まるのは御免とばかり、さっきまで殴り合っていた相手と並んで必死に逃げて走って、走って走った。いつにも増してしつこかった巡査も、最後にはへばって追いかけて来なくなった。
旧市街の路地に喧嘩相手と一緒に蹲り、すっかり暮れた空を見上げた。警察に追いかけられたのは、あの日の喧嘩以来無い。
(そうそう、あれが最後……)
心に呟きかけて、智照は眉を顰める。
(何が最後でしたっけ)
犬の足止めにかかる僧侶の背後、高久は壁に背を押しつける。
「踏んで行け」
「っ、でも」
「逃げる事は悪い事じゃない」
それに、と下心の一切無い、底抜けに明るい笑みを浮かべる。
「女の子を助けられるいい機会だ」
有無を言わせずジャージ姿の少女の靴底を白いシャツの肩に乗せさせる。
「届くか」
「ありがとなのだ」
肩に乗せた少女の重みが無くなる。少女が無事に塀の向こう側に逃げ去ったことを確かめて、高久は壁から背を離す。
僧侶に喰らいついていた鬼が高久を向く。蹲る僧侶から離れ、牙を剥き出して哂う。
鬼と相対したまま、高久は少女が逃げきることを願う。少女にはああ言ったが、己は逃げたくはなかった。
(只、逃げる事に納得出来ないだけだ)
忘れた方がいい記憶は確かにある。けれど、その記憶があるからこそ、悔しいからこそ強くなれる事もきっとある。
「俺の記憶は俺だけの物だ」
鬼に向け、高久は静かに宣言する。
(そう簡単に奪われる訳にもいかない)
逃げ切れないと分かっていても、只やられるだけなのは性に合わない。
手にしたままだったスーツを地面に捨てる。鬼が強靭な四肢で跳躍すると同時、地を蹴る。深く踏み込む。全体重を爪先に籠め、狙い済ました一蹴を犬の顎に叩き込む。
鬼の頭ががくりと傾ぎ、けれど意識を刈るには至らない。鬼は執念で地面に四肢を踏ん張る。高久の足に牙を立てる。
痛みは無い。それでも、高久は眉間に深い皺を寄せる。犬のかたちした鬼の頭を片手で掴み、
(蹴った代わりに奪われた記憶がある)
心に刻む。
心の奥、ちりちりと疼く記憶が引きずり出される。
あの時も、こんな路地だった。高校の頃、売られた喧嘩を買った挙句に負けて逃げ、殴られ蹴られして痛む頬や腹を押さえながら蹲った狭い路地。風邪の熱に潤む眼で、壁に挟まれた空を仰いだ。
とはいえ、少しばかり無茶はしたが面倒になる前に喧嘩相手とケリはつけた。それでも、一時的にも逃げた事は、あれから十年近く経た今でも、
(思い出す度、恥ずかしい)
心を満たす羞恥の理由を、けれど高久は思い出せない。『その事』が高校時代の先生に何故だか知られ、そのせいで今度はしばらく先生から逃げ回ることになったが、
(……だが、)
その理由が、記憶の中から刳り抜かれて消えている。奪われている。
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
ホラー
冒険
バトル
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年01月21日
参加申し込みの期限
2015年01月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年01月28日 11時00分
参加キャラクター一覧
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