火の色して、空が赤い。
空見上げた瞳を下ろして、周囲の暗さにしばらく瞼を閉ざす。
伏せた瞼を持ち上げて、俯けた視線の先に見慣れぬ朱色の石橋を見た。
橋の先には、厳つい物見櫓と鉄鋲打たれた古木の扉の山門。門の先には、朱色の樹柵に囲われた、矢張り見慣れぬ奇妙な町。
朱色千本格子の石畳通り、灯る燈籠の色は青褪めた白。
緋色の光浴びる黒い屋根瓦の上、瓦と同じ色した肌の小鬼が町を睥睨していて、思わずぎくり、身を固める。
「またエライ時に迷てしもたなあ」
言葉の割りに暢気な響きの声を掛けられ、声の方見遣れば、石橋の欄干に背中預けて座り込む、天狗の面を掛けた和装の男。
「じきに陽が暮れる。此処は滅多と夜は来ィひんけど、夜が来たら鬼が来よる。記憶を奪う、おとろし鬼や」
男の言葉を聞きながら、いつまでも変わらぬのではないかと思える程の黄昏に染まる古びた町を見渡す。
石畳の大通りを歩く背に折れた矢を何本と生やした骸骨の落武者が落ちつかぬ様子で空を仰ぎ、開けてくれと手近な家屋の障子戸を叩く。
朱色の千本格子の内に座す黄金の狐尾持つ絢爛豪華な衣装の女達が不安げに視線を見交わし、行灯の火皿に油を足す。
小僧の顔持つ子犬が犬矢来の前に積まれた木桶の隙間に潜りこもうとして情けない声で鳴き喚く。
「いますぐここから飛び降りたら、――ああ、もうあかんな」
立ち上がり、欄干から橋の下を覗き込んだ天狗面の男が息を吐く。つられて覗いて、夜の色を映してただ黒々と流れる川を見た。
「空が元の黄昏に戻るまで、元の世界には帰られへん。そない長い時間やないけど、まあ、せいぜい気張って逃げ隠れせェ。殴る蹴るは、……自己責任、てやつやな」
こんにちは。
黄昏色に染まった古びた町で物の怪に混じって鬼ごっこ、してみませんか。
ただ、鬼に捕まってしまえば、記憶をひとつ、鬼に奪われてしまいます。
ちょっとホラー混じりつつもみんなでわあわあ賑やかにも、少人数や一人でしっとりと、……どんなお話になるかはアクション次第です。
ただ、アクションの内容があんまり過激な場合、直接的な表現を避けて極度にぼかしたり、最悪は描写できなかったりすることがあります。ご了承下さい。
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追い駆けて来る鬼は四匹居ます。それぞれ、かたちも性質も動きも、奪おうとする記憶も違います。
言葉は通じません。拳や刃でダメージを与える事は出来ますが、ある程度時間が経てば回復してしまいます。
■高鬼
ヒョロ長い手足の背丈二メートルほどの大人のかたちをしています。大きな口から牙が見え隠れ。足は遅いですが、大きな手の動きは早いです。
掌で叩かれると【ナニカを追いかけた記憶】を奪われます。
■走り鬼
立ち上がると大人の背丈くらいの黒くて大きな犬のかたちをしています。走ったり跳んだり吠えたりします。すばしっこいです。
噛まれると【ナニカから逃げた記憶】を奪われます。
■影鬼
影の色した小鬼のかたちをしています。地面を滑るように這ったり壁を伝ったりします。両のこめかみから角が生えています。
影を踏まれると【忘れていた記憶】をひとつ思い出して後、奪われます。
■隠れ鬼
おかっぱに和服姿の少女のかたちをしています。額に小さな角が生えています。
抱きつかれて捕まえられると【大好きな人との温かな記憶】をひとつ奪われます。
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●町のつくり
大きさとしては旧市街地程になります。南北に町を貫く大通りと、それに沿って縦横に広がる小路がたくさん。町の端には朱色の柵が設けられ、町の外に出ることは今回は出来ません。
町には人外の物の怪がたくさんたむろしていますが、普段は日々を面白おかしく暮らすばかり、今回は逃げ惑うばかり。
大通りには女郎の集まる人屋や無料の茶屋や記憶と引きかえに小箱を売る土産物屋があったりもしますが、皆逃げるのに必死であなたに構う暇はなさそうです。
大通り以外は木造の平屋建てが肩を寄せ合うように並んでいます。隠れた場所に小さなお茶屋や小物屋があったりもしますが、鬼の襲来に怯えているのか、こちらも声を掛けても出て来る人は居ないようです。
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アクションには、【どの鬼に追いかけられるか】、【どんな記憶を奪われるか、具体的に】、お書き下さい。どんな逃げ方をするか、も書いて頂けましたら。
逃げ方によっては、鬼に捕まらず、記憶を何も奪われずに逃げおおせることも可能です。
夜の時間が過ぎてしまえば、元の世界に戻ることは容易です。
ご参加、お待ちしております。