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黄昏空のその向こう
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色づき始めた紅葉に彩られた青空が、不穏な気配孕んだ藍色の夜空と入れ替わる。
(あれ)
左右色味の違う澄んだ青の瞳を見開き、
小山内 海
は不安に轟く胸を押さえる。柔らかな栗色の長い髪を揺らして周りを見回す。
(ここって一体……)
不意に迷い込んだ夜色に染まった世界に、さっきまで一緒に紅葉を眺めていた
御剣 刀
と
橘 千歳
の姿をまず見つけて、海は安堵の息を零す。変なところに来てしまったけれど、二人が一緒なら心細いことなんてない。
朱色の石橋の上、刀が黒い瞳を僅かに顰めて周りの様子を探り、すぐに表情を和らげる。
(……刀くんはここの事知ってる?)
「危険はない筈だけど」
いつか立ったことのある朱色石橋から山門へと視線を向け、刀は海と千歳に向け努めて穏かな声で告げる。橋の半ば、以前見かけたのとは仮面が違うものの、似たような佇まいした男を見つけ、
「すぐ戻る」
刀は短く二人に言って男の傍へと駆け寄る。二言三言話す間に、頼りになる同級生の少年の顔がどんどんと険しくなっていく様子に、海と千歳は心配気に顔を見合わせる。
『ここのこと、しってる?』
幼い頃に声を失った海が胸元に掲げたスケッチブックの文字に、千歳は結い上げた艶やかな黒髪を揺らし、首を横に振る。深い黒した瞳に鋭い光を宿し、刀の向こうに視線を投げる。見知らぬ古びた町を、人の姿成さぬ者達がけたたましい悲鳴上げてナニカから逃げ惑っている。
物の怪達の悲鳴を耳にした海が怯えているように見えて、正義感の強い千歳は私がしっかりしなくてはと唇を引き結ぶ。
「大丈夫よ」
静かに言い、小柄な海の華奢な肩を軽く叩く。
「刀君も私も居るもの」
千歳の言葉に、海は大きく頷く。スケッチブックの頁を繰り、よく使う言葉を書き留めた頁を消せない不安交じりの笑みと共に千歳に示す。
『ありがとう』
(……え、え、みんな逃げてる?)
空色の瞳に山門の向こうの夜の町を映したまま、海は閉じたスケッチブックを胸にきつく抱きしめる。
天狗面の男に手を振られ、刀が足早に二人の元に戻る。常は柔和な黒い瞳に厳しい色が宿っていて、海は刀の背後の男を見遣る。一体何を言われただろう。
「この場に留まるのは危険だ」
開口一番、刀は強い口調で言い放つ。移動しよう、と急いて言うなり踵を返し、山門向けて駆け出す。
(何か来るの?)
刀の背中を見つめ、海が瞳を細め、
「刀君?」
千歳が首を傾げる。普段なら、何か危険があればその危険の渦中に真っ先に真直ぐに突っ込んで行きそうな彼が、今日は妙に慎重だ。
「早く」
肩越しに振り返る刀の瞳に浮かぶ焦りに、少女二人は理由を訊ねることを忘れた。
先を行く刀の背を追い、山門を潜る。山門からまっすぐに続く大通りは、恐慌状態で逃げ惑うばかりの妖達に溢れている。妖達に混ざり、三人は石畳の道を駆ける。
町のどこかから聞こえる犬の喚き声や何者かの怒声に頬を引きつらせ、海は先を行く刀を必死に追う。いつの間にか前に立った千歳の背中を追う。息が切れる。足が重くなる。日頃から運動をしている二人とはどうしても体力的な差が出てしまう。
背後に聞こえる悲鳴が不意に大きくなって、海は思わず振り返る。転がりながら懸命に逃げる狂乱の妖達のその後ろ、和服纏い、額から小さな角生やした黒髪の少女。
あどけない笑み浮かべる少女にけれどどこか禍々しいものを感じ、海は慌てて前の二人の背中へと瞳を向ける。後を向いた僅かの間に、また二人と距離が出来てしまっている。
足手まといになるまいと海は唇を噛む。必死に石畳を蹴って走る。
「小山内さん」
周囲の妖達の悲鳴に混じり、幼い子供の楽しげな笑い声を聴き取り、千歳は背後を振り返る。そうして自分達より大分遅れている海に気付く。海を追いかける格好で迫る角持つ少女の姿に、少女を酷く恐れる風の妖達に気付く。
「手を」
足を緩め、海に手を伸ばす。海が伸ばした指先を掴もうとした瞬間、二人の足元を二股尻尾の猫が駆け抜けた。
「ッ?!」
混乱気味の猫又に足元を掬われ、海が転ぶ。その指先を半ば掴んでいた千歳がつられてたたらを踏む。
少女のかたちした鬼の笑い声が間近に迫る。
「千歳! 小山内!」
妖達の悲鳴の最中にあって逆に恐ろしく響く幼子の歓声に、刀は振り返る。地面から慌てて立ち上がろうとする海と、それを助けようとする千歳の背後、天狗面の男から聞き出した『鬼』の特徴のひとつと一致する容姿の鬼を見る。
今しも二人に飛びつき抱き着こうとする鬼を瞳に捉えた瞬間、今の今まで不安にざわめいていた心が、何かが切り替わるように凪ぐ。心を占める不安に乱れていた頭の中が冷める。
(排除しないと)
ただ静かに思う。
その為に、頭の中で銃の撃鉄を落とす。己のろっこんを発現させる。
己が身と精神に疾風の速度が宿って、刹那、相対的に刀を取り巻く世界がほとんど動きを止める。
凍り付いた世界を疾走する。常に提げる竹刀袋を払い、木刀を抜き出す。立ち竦んで見える二人に寄る鬼に肉迫する。冷徹なまなざしのまま、全身の力で鬼の胴を木刀で打ち据える。鬼の軽い身が宙に跳ねる。刀のろっこんの力が解け、刀の眼に世界が速さを取り戻す。
少年の力で弾き飛ばされた鬼の身が石畳に転がる。拾い上げた竹刀袋に木刀を納め、刀は少女二人の手を取る。
「逃げるぞ」
短く言い、後も見ずに逃走を再開する。
ろっこんを使って助けてくれた刀に手を引かれながら、千歳はちらりと背後を振り向く。
小さな少女は、おそらくは刀の全力の一撃を食らった幼子の姿したナニカは、着物の裾を乱して石畳の地面に転がっていたかと思うと、何事もなかったかのようにひょこんと起き上がった。
撲たれた腹を小さな掌で軽く叩き、砂埃で汚れた袖や帯を払い、心底楽しげにキャア、と笑う。逃げる自分達をまっすぐに見て、跳ねるような足取りで追いかけて来る。鬼は小さな子供の姿をしていながら、子供とは思えぬ足の速さを見せる。それでも、逃げ回る小さな妖達を踏みつけ蹴飛ばし気紛れに抱きつき、その足は頻繁に鈍る。
「こっちだ」
刀に手を引かれるまま、二人は夜の色深い小路に駆け込む。
掴んだ二人の手が熱いのか己の手が熱いのか判らなくなるまで走り通して、海の手を掴んだ方の手が重く感じられるようになって、刀は漸く足を止めた。耳を澄ます。鬼の笑い声は今は聞こえない。大通りにあれだけ居た物の怪の姿も小路には少ない。
夜の闇深い小路の隅、小さな杜にも似て枝を地面近くに這わせる樹の陰に二人を引き込む。揺れる葉に結ぶ夜露が頬や髪に冷たく触れるも、構う余裕はない。木陰に隠すように設けられた、水龍の石像祀った小さな社の裏に隠れる。
傍らにうずくまる海の荒い息が外に洩れはしまいか。
反対側に膝をつく千歳が声を発したりはしまいか。
鬼がそれを聞きとがめはしまいか。
(俺一人なら何とでもなる)
けれど、今こうして手を繋いでいる二人は、そうはいかないかもしれない。あの少女の姿した鬼に、襲われないとも限らない。
ここまで来たのなら下手に動かず、
(ここで黄昏になるまで待とう)
天狗面の男は、夜の時間はそう長くはないと言っていた。
ここで鬼をやり過せなければ、大切なものを失う。そう考えた途端、ひどく嫌な気持ちに胸を塞がれた。逃走中でさえも心を埋めていた不安が再び顔をもたげる。両隣の少女の手を引く。二人の口を塞ぐべく、片腕ずつで二人の頭を抱き寄せる。
「静かに」
驚いて息を乱す海の耳元で鋭く囁く。
「気配を殺して息もできるだけするな」
小さな声をあげてもがく千歳の黒髪の頭を一層強く抱きしめ、熱持つその耳元にも同じように低く言う。
声の出せぬ海が頭を抱えられたまま小さく何度も頷く。拒む気持ちはないことを示したくて、片方の指先で刀の胸に縋りつく。頼りになる友人の緊迫した顔つきから、今が緊急事態であることは理解している。してはいるけれど、それでも、恋心を抱く刀に抱き寄せられ、ここまで近くに感じてしまうと流石にちょっと恥ずかしい。
熱持つ頬を隠したくて、海は刀の胸に頭を押し付ける。
「……もう少し穏当ないい方も有るんじゃないかしら?」
千歳は声を尖らせる。
剣道で鍛えている自分はともかく、小柄で華奢な体格の海をまず守ることを優先に考えるのは、もちろん間違っていないとは思う。でも、
「静かにしろ、とか、息もするなとか……」
己の頬と刀の胸の間に手を捩じ込む。髪に触れる刀の手をもう片方の手で掴んで払いのける。いつもの鈍感さからか心底驚いた表情をする刀の夜色の瞳をまっすぐに睨もうとして、できなかった。
急に抱き寄せられた動揺と羞恥を押さえ込めず、千歳は瞳を伏せる。
きつくなってしまった己の言葉を悔いて、肩を落とす。息を吐くように弱く続ける。
「それじゃ、むしろ不安になるじゃない……」
呟くように言いながら、いつもとどこか違う刀の行動に戸惑い反発を示しながら、千歳の胸には同時に甘やかな気持ちがある。
本当は彼のことをどこまでも信用している。いつもとは違っても、それでもやっぱり刀は刀で、自分達を全身全霊をかけて守ろうとしていることは確かで。言葉に少し気遣いが欠けていたとしても、刀に対する信頼が揺らぐことはない。
「悪い、強引だった」
刀は素直に詫びる。払われた手を再び千歳に伸ばす。躊躇う千歳の頭をもう一度抱きしめる。
「俺の事を忘れられるかもしれない、そう思ったんだ」
潜めた声に押さえ切れぬ己が感情の揺らぎを感じて、刀は唇を引き結ぶ。両腕に抱えた温かな体温に力を貰って、小さく息を零す。
「それは嫌なんだ」
「どういうこと?」
千歳に訝しげに問われ、刀は物陰から外を窺う。夜闇に鬼の声も気配もしないことを確かめ、抑えた声で語るは、橋の上で天狗面の男から聞き出した『鬼』達の情報。
「さっきの鬼は、『隠鬼』だ」
相手に抱きつくことで『温かな記憶』を奪う鬼の名を刀は呟く。
天狗面の男からそれを聞き、実際に二人に抱きつこうとする少女のかたちした鬼を見た瞬間の恐怖を思い出す。
恐かった。
今は傍らにいてくれる二人との『温かな記憶』が胸を過ぎった。
あの月夜の演奏会でのひと時を、
死んだ筈の祖父に伝えた決意とその後の事を、
三人で過ごした思い出を、
――失いたくなど、ない。
刀の腕にこもる力に応じて、海は刀の胸に縋る指に力をこめる。
(それは嫌だな……)
積み上げてきた記憶を忘れたくはない。刀にも千歳にも、忘れてほしくない。
もしも、二人が自分との思い出を忘れてしまったら。
うっかりと思ってしまい、海は固く瞼を閉ざす。
(……そんなこと、考えたくない……)
胸の痛みに震えた途端、刀の手が励ますように頭を撫でてくれた。それが堪らなく嬉しくて、だからこそ余計に記憶を奪う鬼が怖くなる。
忘れられたくない。特に、
(刀くんには)
そう思いながら、己の中にある刀との温かな記憶を思う。一番初めに浮かぶ、茜色の穏やかな空。刀に対する恋心を自覚してから、刀と初めて二人で下校した時の、記憶。
茜差す廊下で偶然出会ったときの胸の高鳴りを覚えている。
二人で並んで歩いた道も、交わした言葉のひとつひとつの温かさも、今も胸に残っている。
「もういーかーい?」
闇の向こうから遠く聞こえた少女の声に、千歳は息を詰める。頭を抱く刀の腕に力がこもる。
(鬼に捕まったら記憶を奪われるのが事実かどうかわからないけど……)
町の住人達は確かにひどく怯えていた。おそらくは、あの時自分達に抱きついて捕らえようとしていたあの額に角持つ少女を。
(それから、刀君も)
刀の腕の強さに怯えに近いものを感じ取って、千歳は刀の手に手を重ねる。
(記憶を無くしたくはないわね)
どんな思い出でも、自分の記憶は自分だけのもの。それが大切に思っている人たちとの思い出ならば、
(なおさら奪われたくない)
鬼が軽やかな草履の音立ててこちらに近づいてくる。刀の腕の中、千歳は身を固くする。この手に守られていれば大丈夫、そういう思いの中、自分と海の手を引いて、鬼に立ち向かわずひたすらに逃げた刀の背中を思い出す。
(刀君、結構勘の鋭いところがあるから何か感じたのかしら)
だから鬼と戦わず逃げ出したのだと思い至って、千歳は淡く笑む。
(それならそうって最初から言ってくれればよかったのに……)
ふと、いつかの記憶を思い出す。寝子高入学よりも前、本土の電車内で高齢者に席を譲っている黒髪の少年を見た。凛とした優しさと、礼を言われた時に見せた、はにかんだ微笑みが印象的だった。
視線を上げる。その時の少年が、今は傍らに居る。
「もういーかーい?」
(この記憶は、奪わせたりしない)
誰にも言わず胸に秘めたままの大切な思い出を、千歳は今現在の刀ごとぎゅっと抱きしめる。
物陰に隠れて動かぬ三人の見つけられず、鬼の声が夜の向こうに遠去かる。現れたと同じく急に、鬼達が夜を連れ町の何処かへ消えて去る。
固く抱き合う三人の頭上高く、ゆらゆらと黄昏の光が降り注ぎ始める。
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3人まで
シナリオジャンル
ホラー
冒険
バトル
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年01月21日
参加申し込みの期限
2015年01月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年01月28日 11時00分
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