【体育祭】白黒つける、玉入れニャン！｜リアクション

【体育祭】白黒つける、玉入れニャン！

　審判が手にしたストップウォッチにちらちらと目をやる。競技終了の七分を迎えようとしていた。両陣営は最後の踏ん張りで複数の玉を同時に投げ始めた。
　救護テントを往復していた時子が小走りで戻ってきた。急いで白猫組に加わると、カゴの真下に落ちている玉を幾つも拾って懸命に投げた。
　その中、開始と同じように高らかにホイッスルが鳴り響く。その場にいた全員が手を止めた。何人かは疲れた顔を隠さずにへたり込んだ。
　――運命の時が訪れた。両陣営のカゴの中身が数えられる。ハンドマイクの声と共に玉が宙に投げられた。
　玉は七十九個まで数えた。白猫組と黒猫組は数の上で未だに競り合っている。
　八十個の声で一方が途切れた。宙を舞った玉は一つであった。
「真央ちゃん達の勝利なのだ！」
　跳ねて喜ぶ真央を観客が割れんばかりの拍手で包み込んだ。
　こうして黒猫組の勝利が確定した。白猫組のカゴに玉は残っていたものの、黒猫のシールが貼られていた為に審判の判断で無効とされた。幽の超人的な神業は明里の純粋な頑張りに阻まれる形となった。
　ハンドマイクの声が改めて結果を告げる。
「白猫組の点数は七百九十点。黒猫組の点数は八百七十点。従って玉入れ競技の勝者は黒猫組に決定しました！」
　競技に参加した全員に等しく、盛大な拍手が沸き起こる。
　負けたことを苦にしていない様子で丸美が言った。
「すっごく賑やかで面白かったねー」
「負けましたが全力なので悔いはないです」
　優菜は丸美と目を合わせて表情を緩めた。
　時子は観客と一緒に拍手をしていた。黒猫組の方を向いて、おめでとうございます、と言葉を贈った。
　勝者の一員となった葉月は少し驚いたような表情を浮かべている。
「……意外と私、運動が出来るのかもね」
　口にして即座に否定するかのように首を傾けた。
「片付けは実行委員のうちに任せてよ！」
　名乗り出たトモエは玉入れの支柱を手早く縮める。散らばった玉は黒猫組が総出で手伝い、カゴの中に収めていった。
「皆、ありがとう！　あとは運ぶだけだね」
　トモエは腰を落とした。カゴの下側に両手を入れて持ち上げる。一歩も動けずに瞬く間に下ろした。
「お、重すぎて、あかん。だ、誰か応援に来てー！」
「トモエさん、私が手伝います！」
　走ってきた結梨亜がほんのりと赤い頬で言った。
「とても助かるよ、ありがとう」
「でも、力仕事はちょっと自信ないですが」
「二人でやれば、なんとかなるよ」
　二人は向かい合わせでカゴを持ち上げた。声を合わせて足を出す。横歩きの姿でグラウンドの外へと向かった。
「白猫組の方は俺がやるかー！」
　武道が肩を回して言った。黒猫組から修が歩いてきた。
「実行委員長、実行委員として俺にも手伝わせてください」
「デキた後輩を持って、俺は幸せもんダー！」
　武道は下顎を迫り出させて拳を空に突き上げた。修はあっさりと流すように、急ぎましょう、と行動を促す。それに対して武道は、ソウダネ、と生気を失った目で言った。