【体育祭】白黒つける、玉入れニャン！｜リアクション

【体育祭】白黒つける、玉入れニャン！

「迷子の迷子の武道ちゃんセンパイはどこなのだ～」
　走り回る真央に日本人離れした笑い声が聞こえてきた。見ると人混みの中を駆け抜ける武道がいた。速度を落として歩み寄る。
「俺は迷子になんかならないぜ☆　迷子の世話はしたけどネ！」
「市子ちゃんに頼まれてお弁当を持ってきたのだ。真央ちゃんの手作り肉団子も入っているのだ♪」
　重箱を掲げる真央に武道は目を見開いた。
「差し入れは大変にアリガタイヨ！　食べる時間がなくて困ってたんだ。それなのにオナカはグーとか言い出すし、本気のグーで殴りたくなったぜ！　痛いからしないけどネ、ＨＡＨＡＨＡ☆」
「喜んで貰えて嬉しいのだ」
「中を見てもいいかな」
「どうぞどうぞなのだ♪」
　喜び勇んで蓋を開ける。武道は少しむせた。心なしか周囲の人々が離れていく。
「辛い物は好きだけど、なかなかに凶悪な匂いがするネ」
「デスソースがたっぷりなのだ」
「命の危険を感じる素敵なソース名だね☆」
　通り掛かった結梨亜が鼻を上向きにして小刻みに動かす。武道の手の中にある重箱に気付くと声を上げた。
「ここから良い匂いがするのですね！」
「ソウナンダ」
　武道の笑顔が固まる。真央は陽気な声で言った。
「良かったら肉団子を、お一つどうぞなのだ」
「本当ですか。遠慮しないで貰っちゃいますネー」
　気楽に一個を摘まむと結梨亜は一口で食べた。んー、と笑顔で味わって大きな息を吐いた。
「とても辛くて爽やかで、口の中がカーニバルです！」
「嬉しい感想をありがとなのだ」
「あのー、もう一つ、いいですか？」
「どれでも好きなのを食べるのだ」
　やはり、選んだのはデスソースに塗れた肉団子であった。褒め言葉を連発して結梨亜は笑顔で立ち去った。
「真央ちゃんは皆のところに帰るのだ」
「市子さんにも俺のありがとうを伝えてくれよな」
「わかったのだー」
　走り去る真央に武道は手を振る。その場で重箱の中身と向き合って赤くコーティングされた肉団子を摘まみ上げた。
　数秒後、唇を腫らした武道が涙目で爆走した。

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