【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！｜リアクション

【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！

【閉会式】

　ジャージ姿の雨宮校長先生が、すべての競技の得点を集計結果を携えて朝礼台へ昇る。
　……ジャージの色が緑色なのは気にしてはいけない。
　決してご長寿戦隊のグリーンであるとか、一切関係ないのだ！（戒め）
「皆さん、今日は午前中から本当によく頑張りました。親御さん、ご親族、地域の方々に見守られ、切磋琢磨してぶつかりあった熱い名勝負の数々……。今日という日は、皆さんにとって忘れられない学校生活の彩となり……」
「校長……、先に得点の結果をお願いします」
　話が長くなると察した教頭の黒……ナントカさんが結果発表を促した。
　さすが出来る男、黒ナントカさん！
「……それでは、気になる総合得点の発表です！」
　屋上から響くドラムロール。
　……獅子島＝サンは手が込んでいた。
　校長先生が封書の中身を取り出して読み上げる……。

（白猫組勝って～！）
　恵御納理沙が両手を組んで祈る。

（白猫と黒猫、どっちが勝つのかねぇ？）
　観戦していた曖浜瑠樹がワクワクしながら結果を待ち侘びる。

（うぅ……、許してもらえて助かりました……）
　涙目の鬼崎つくしは、あのあと懸命に白猫組を応援していた。
（でも、やっぱり迫力負けしてしまいましたね……）
　黒猫組の終盤の躍進は、応援の力だとあやめは実感していた。
（私の応援は、届いたのかな……？）
　あやめはただひたすら祈るばかりだ。

　矢萩姉妹は黒猫組躍進の影の立役者だということに気が付いていない。
（咲が頑張ってた！　最後まで生き残った！　それだけでお姉ちゃんは充分幸せ！）
　白いティッシュを紅に染めながらも、妹のいる黒猫組の勝利を疑わない長女の秋。
（みんなで応援して楽しかったなぁ！　つくしちゃん、水臭いよ～。変に遠慮する必要なかったのに……）
　原因が自分の姉にあるとはこれっぽっちも思っていない三女の槇。
（一緒に……応援……楽しかった。お姉ちゃんたちが応援していた黒猫組……勝つといいなぁ……）
　夕霧真も、今や立派な黒猫組応援団の一員だ。
　おはぎで買収された子供たちも黒猫組勝利の瞬間を心待ちにしている。

（お兄ちゃん……久々に外出して、運動して、活躍……できたよね？）
　斉藤三奈は既に元の姿に戻って、姉と一緒に成績発表を今や遅しと待っている。
（大丈夫！　私が応援したんだもの！　白猫組は必ず勝つわ！）

　ドラムロールの音源スイッチを押した獅子島市子は、ふと雲ひとつない青空を見上げる。
（あたしは盛り上げることができたのか……？　頑張ってた両チーム、よくやったよ……）
　できれば白が勝ってほしいケド、と呟きながら、ドラムロール終了のボタンを押した。

　黒猫組：7075点

　白猫組：6675点

　よって、勝利チームは黒猫組！

　観客席から割れんばかりの歓声が湧き起る。
　勝利した黒猫組はもちろん、健闘した白猫組も讃えるのであった。
　競技中は競い合うライバル、でも終わってしまえば敵味方関係なく『仲間』である。
　両陣営は誰それと構わず握手で各自の奮戦を労い合う。
　それは、審判を務め上げた深縹露草も同じ気分であった。
「青春って……良いものですね」
　現在学費を貯めるためにアルバイトをしている彼にとって、学生の青春の１コマはとても眩しく見えた。
「……眩しすぎて、目が痛いデース……」
　溢れ出る涙が止まらなかった。
「さて、今日のアルバイトのお給料ですが……、頑張った皆さんへの差し入れ代に使いましょうか」
　本当ならば学費や生活費に充てるべきなのだが、この胸の高まりが抑えきれない。
「全員は無理ですが……、１人でも多くにジュースを差し入れできればいいでしょう」
　こうして、深縹の好意で、50本以上の缶ジュースの差し入れが体育祭実行委員のテントに届けられた。