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満月の夜に
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会場に人のざわめきが満ちて行く。
秋の陽が沈み、月の光が空に溢れ、地上を蒼く月影の色に染め上げる。
境内に落ちる影が月と炎の色をしていることに気付く頃、舞台に一人、司会の女が立つ。
「待ってたわよ!」
華やかな声とタンバリンの賑やかな音が客席から投げかけられる。明るい声援のする方に
御剣 刀
と
橘 千歳
が視線をそっと向ければ、和やかにざわめく客席のひとつに、月の色に似た白い髪と鮮やかな紅色の瞳した男性。
「ほら、あなたも」
タンバリンを使って拍手代わりの音を鳴らしながら、
多岐川 玲栖
は米国からの帰国子女ならではの社交性を発揮する。足元に置いた鞄から適当にマラカスを取り出し、偶然隣に座った和装姿の黒髪の男性の手に握らせる。
「いや、僕は」
「なによ、マラカスは嫌い?」
参拝しようとしていた神社で音楽会が催されると知った時から、わくわくと昔使っていた楽器を大きめの鞄に詰めて用意していた。鞄の中にはまだまだ色んな楽器が詰まっている。
飛び入り参加もしてはみたいけれど、歌は得意ではない。人に聴いてもらえる技術があるとは思えない。
「一緒に盛り上げましょ」
人懐っこく笑みかけられ、
山野 無花果
は気難しい顔でマラカスを掌に乗せる。小説のネタを拾うために神社まで来てみたはいいが、恋人達が来るにはここは少し賑やか過ぎただろうか。
行きがけの屋台で買ったドライフルーツ詰め合わせカップのパイナップルを口に放り込み、辺りを見回す。ドライフルーツばりに甘酸っぱい、むしろ甘ったるい会話をしそうな雰囲気の良い男女の姿はないものか。
心のネタ帳は全開、会話を書き写す準備は万端。懸念すべきは人込みのざわめきに紛れて会話が聞き辛いかもしれないことだが、そこは恋愛小説家の面目躍如、想像力でカバーしてみせよう。
客席からの拍手と歓声受けて、舞台に立つ司会者の女はぺこりとひとつお辞儀をする。手短に時節の挨拶と、月と音楽を楽しむお月見音楽会の趣旨を説明し、まずは飛び入り参加の皆さんの演奏をお楽しみください、と締めくくる。
「――あ」
司会者に紹介されて舞台に出てきた男女の姿に、刀は思わず短い声を上げる。
大人しげな長い黒髪の少女と、少女を導く、灰色の髪に紅色の瞳が印象的な、どこか女性的な容姿の少年。
「知り合い?」
「ああ、学生支援部の部長と、……先輩」
千歳に問われて答えながら、刀は舞台上に向かい合って置かれた二台のピアノにそれぞれ腰掛ける
浅山 小淋
と
霧生 深雪
を眺める。
舞台の上、二人は目配せを交わして一曲めを弾き始める。
「……この曲は?」
静かに始まるピアノ楽曲に耳を澄ませながら、刀は隣の千歳に曲を知っているかと尋ねる。それに、折角一緒に居るのに会話がないのも寂しい。
「ドビュッシーの『月の光』ね」
刀の実直な問いに、千歳は囁いて応える。音楽は特にそれほど詳しくはないけれど、
(まぁ、嗜み程度なら、教えてあげられるかな)
それに、話が出来るのはやっぱり嬉しい。そう思って細めた黒い瞳を舞台へと向ける。
篝火の色纏うた月の光が揺れる。
舞台の央、
浅山 小淋
はピアノの鍵盤に指を触れさせながら、向かいのピアノに座す
霧生 深雪
を見遣る。
舞台への飛び入りを誘ったときに約束した通り、深雪の音は時に優しく時に少し強引に、けれど心強く、舞台での連弾に怖じる小淋の心を包みこんでくれる。音を導いてくれる。
ピアノ越しに深雪が視線を上げる。視線が絡んで離れるまでの僅かの間に深雪の微笑みを見て、小淋の胸はふわり、温かくなる。
唇に知らず笑みを滲ませ、小淋は深雪と音を重ねる。
きらきらと差し込む月の光の如く、優しく清冽な音が二人の奏でるピアノの鍵盤から生まれて跳ねる。
唇に笑み刻む小淋の様子を確かめ、深雪は深紅の瞳を柔らかく細める。己が奏でた音の行方を追うて空を仰げば、空には銀の月。
(寝子島の月は優しくて綺麗だ)
心底からそう思う。そうして、その気持ちが聴いている人に伝わるよう、伝えられるよう、深雪はピアノを弾く。
月の雫が落ちるような最後の一音を二人で重ね、一曲めを弾き終える。
音の余韻が消えて、その代わり、舞台を拍手が包む。
「すてきー!」
柔らかな声音の賞賛の言葉も受けて、小淋と深雪は照れ臭いような嬉しいような笑みを交わす。
拍手が静まるのを待って、次に奏でるは、小淋が地道に作り上げたオリジナルの曲、『Pegasus』。
天馬が静かに夜を駈ける情景をイメージしたその曲は、以前に譜面を渡しておいたこともあり、音を合わせることに苦労はない。
視線を合わせ、呼吸を合わせ、最初の音を合わせる。天馬が翼を広げ、空に駆け上がる。
深雪の腕に合わせるように、小淋は一つ一つ、丁寧に確実に音を繋げてゆく。
(むしろ)
小淋は深雪の音に耳を澄ませる。深い情感と確かな技術に支えられた、力強く空を駆ける音の連なり。
(私の方が合わせるのに大変かもしれません)
それでも、二人で音を重ねるのはとてもとても、楽しかった。
(先輩も、)
同じように感じてくれていれば嬉しいけれど。
ピアノ越し、深雪の灰色の髪に月の光の銀色が跳ねて揺れる。
音を合わせるため、深雪は視線を上げる。向かいの小淋を見つめる。
自分に合わせようと頑張ってくれる小淋の気持ちを大切にしながら、深雪が旋律に乗せようとするのは、この曲を初めて聴いたときの感動。
ピアニストとして、深雪はそれを観客にも伝えたいと願う。
(俺は浅山の曲が好きだ)
それを彼女に伝えたかった。伝える一助になればと想い籠めてピアノを弾いた。
月を仰ぐ。また月明かりの下で演奏する機会が得られるとは思っていなかった。
(前は、)
前は夜明け前の空の下、波の音に重ねてギターを一人弾いた。あの時と今では、心持ちが全く違う。
ピアニストとして、表現者としての炎は心に熱く燃えている。けれど、同時に不思議と穏かな凪も心にある。
高く、遥かに遠く、天馬が夜空に羽ばたく。星がさざめき、月が煌く。風が花を舞い上げる。ピアノの旋律にそれら全てを乗せて表す。現せて見せる。
(この高揚感……悪くない)
己の奏でる音に、小淋と重ね連ねる音に、聴き入ってくれる観客達に、深雪は確かな手応えを感じる。
(浅山のお陰だ)
間違いなく、いい演奏が出来ている。
(浅山も、)
楽しんでくれていたらいいんだけど、と深雪は気遣わしげな視線を小淋へと向けて、眼が合った。
音を重ね、想いを重ね、二人は笑み交わす。
奏でられる、静かで優しく、それでいてどこか勇壮な曲に、刀は夜空を見上げる。周囲を包み込む音にも似て、深い藍色の空にあるのは白銀の満月と散らばる数多の星々。
いつもよりも力強く眩しく輝く月に瞳奪われ、刀は月を見つめる。
空を見上げる刀の仕種につられ、千歳は首をもたげる。夜空を仰げば、刀が視線奪われた訳がよく分かった。輝く月も、瞬く星々も、
(本当に綺麗……)
手を伸ばせば星に手が届きそうな気がして、ちょっとだけ手を持ち上げる。うっかり本当に手を伸ばしてしまいそうになって、子供っぽいかしらと反対の手で押さえる。
(そういえば)
音楽を耳に入れながら、綺麗な月を見つめながら、ふと思い出す。
(昔の男の人はストレートに女性に愛していますと告げる代わりに、)
「月が綺麗だな」
(って言ったって聞いたことがあるわね、……)
「って、……か、刀君……今何を」
千歳の内心を知らないとは言え、あまりにあまりなタイミングでその台詞を口にされて、千歳はもうどうしようもなく狼狽える。
「……千歳? どうしたんだよ、顔赤いぞ」
その上間近に顔まで覗き込まれ、千歳は体を強張らせる。
分かっている。
(刀君に限って奥ゆかしさなんて望めないし、本当にただ夜空に浮かんでる月が綺麗だって言ったのよね?)
そう、それはよく分かっている。伊達に何度も刀と行動を共にしているわけではない。
(でも!)
でも、どうしてよりによってこのタイミングでそれを言ってしまうのだろう。
こちらの気も知らないで、きょとんと黒い眼を丸くする刀を千歳はきつく睨み据える。複雑な思いを咄嗟にどう言葉にすればいいか分からず、膝に重ねた手をぎゅっと拳にする。
「本当に信じられないんだから!」
「えっ、」
悪戯をした子猫が、何で叱られているのか分からないような顔で、刀は小さく首を捻る。
(何で怒られてるの?)
分からないけれど、今の今まで仲良く音楽鑑賞していた少女を怒らせてしまったのは確からしい。
「えっとゴメンなさい」
素直に頭を下げて、
「もう!」
やっぱりまた怒られた。そっぽを向かれてしまった。
頬が赤く見えるのは、きっと篝火のせいなのだろう。
「ちょっとあなた」
「うん? なんだ?」
マラカスを渡した黒髪の青年が、途方に暮れる黒髪の少年と、頬を赤く染めて可愛く俯く少女の様子を凝視に近く観察していることに気付き、玲栖は声を潜めて注意する。
「観るのなら舞台になさいな」
「僕はただ、ここで演奏を聴いているだけだが?」
そらっとぼけて見せつつ、無花果はオネエ口調の青年を見遣る。
「そんなに怪しまれるようなことはしていないだろう?」
少し向こうの少年少女の青春真っ只中な会話に集中していて気付かなかったが、傍らに座る青年もなかなかどうして妖艶な美青年だ。
(アルビノ体質の美青年)
しかもオネエ系とあれば、これはもう立派に小説の登場人物の参考ネタになりはすまいか。
観察対象を隣の青年にも広げて、無花果は生真面目な聴衆を装う。
「ほら、折角の演奏が聞こえないじゃないか勿体ない」
(恋人たちの会話に耳をそばだてていたのをごまかすにはどうすればいいんだ?)
美青年に不審者を見る眼で見られながら、無花果はどうやって注視を逸らすべきか頭をフル回転させる。
(ああ、とりあえず)
「月がきれいですね」
頭上に輝く月を示し唐突に言い出されて、図書館司書である玲栖は咄嗟に動揺する。まさか偶然隣に居合わせただけのちょっと不審者な青年に愛の告白をされるわけもないだろうが、意味を知っているだけにうっかりうろたえてしまう。
「そ、そうね」
言葉遣いがオネエなだけで実は女好きな玲栖は素っ気無く頷くだけ頷いておいて、隣の青年に構うのは止めようと決める。
玲栖の注意が離れたのをいいことに、無花果は再び高校生カップルに注目する。少女は未だ怒っているようだが、
(どうする、少年)
無花果の無言の声援を受けているとも知らず、刀は傍らの千歳の横顔をただ見つめる。音楽に耳を傾け、真直ぐに前を見据える横顔は月の光にも似て綺麗だと思う。
(終わったら家まで送ろう)
怒っているような拗ねているような千歳の様子に、どうすればいいのかまだ分からず、黙っているしか出来ないけれど。今日が楽しかったのは本当のこと。どんな反応が返ってくるかも知れないが、正直な気持ちを伝えるしか自分には出来ない。
(ありがとう、そう言おう)
心に決めて、刀は顔を上げる。千歳と同じ方へ、真摯な瞳を向ける。
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シルバーシナリオ★(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
冒険
定員
50人
参加キャラクター数
50人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年12月01日
参加申し込みの期限
2014年12月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年12月08日 11時00分
参加キャラクター一覧
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